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ケラ版舞台『桜の園』は正統派。しかし斜陽感があまり感じられなかったのはなぜか?
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もともと2020年にシアターコクーンで上演予定だったものが「緊急事態宣言」で上演中止になり、2024年にキャスティングをほぼ変えてのリベンジ公演。コクーンが休館中のため、世田谷パブリックシアターで上演。
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19世紀末のロシア。桜の木々に囲まれた、もはや没落している貴族の屋敷に、長く外国に滞在していた女主人ラネーフスカヤ夫人(大竹しのぶ→天海祐希)が、迎えに行った娘のアーニャ(杉崎花→大原櫻子)と家庭教師シャルロッタ(宮澤りえ→緒川たまき)と共に数年ぶりに戻ってきた。兄のガーエフ(山崎一)、留守中の屋敷を切り盛りしていた養女のワーリャ(黒木華→峯村リエ)や老僕フィールス(浅野和之)は再会を喜ぶが、実は屋敷の財政は火の車…。
この家の元農奴の息子で、今は商人として頭角を現しているロパーヒン(生瀬勝久→荒川良々)は、かつての主家を救おうと救済策を提案するが、ラネーフスカヤ夫人やガーエフは現実に向き合えず、浪費を繰り返す。そんなことを知ってか知らずか、隣の地主ピーシチク(藤田秀世)は借金を申し込む。
屋敷の事務員エピホードフ(山中崇)は、小間使いのドゥニャーシャ(池谷のぶえ)に求婚しているが、当人は外国帰りの夫人の従僕ヤーシャ(鈴木浩介)に夢中だ。そして、夫人の亡き息子の家庭教師だった大学生トロフィーモフ(井上芳雄)は、来るべき時代の理想像を、アーニャに熱く語っている。
様々な人間ドラマが繰り広げられる中、ついに抵当に入れられていた領地が、競売にかけられる日がやってきた。
果たして、「桜の園」と呼ばれる屋敷の運命は…?
ラネーフスカヤ夫人とガーエフが美しすぎた
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”桜の園”の登場人物は全員どこか”変な人たち”です。
ラネーフスカヤとガーエフもサガンの「心の青あざ」のセバスチャンとエレオノールのような”貴族だけれどもうとっくに没落していて不安定に生きている兄妹”のイメージが私にはあって、昨年のPARCO 劇場版の原田美枝子さんと松尾貴史さんはもう本当にピッタリでした。
天海祐希さんの”ザ・センターの人!”は揺ぎ無く、客席をぐっと惹きつけるお芝居も素晴らしい。ドレス姿もため息が出ます。山崎一さんも同じく。
ところがどうも”本当ならとっくに没落してる貴族なのに本人たちはそこに向き合えていない”感が無い。キラキラ過ぎて。
原田美枝子さんと松尾貴史さんにはそれが、あった。
仕立ての良いドレスやスーツを着ていてもどこかそれがすり切れているようなそんな空気が漂っていたのがPARCO版でした。
本当は終わっているのに終わっていないようにふるまっている没落貴族の兄妹が、ただ咲いているだけの桜の園になった(その昔は桜の実からジャムを作ったりしていてそれで収益を得ていたのに)背景と見事にマッチしていたのです。
サイコーに”変な人”だった井上芳雄さん演じるペーチャ
ミュージカル界のプリンスがあんな扮装で・・・・
劇中ではハゲハゲといじられ・・・・・
サイコーでした㊗
なんというか”カラ元気”感がものすごくペーチャに合っている。
あんな外見!なのにまるでキラキラの美しいプリンスのように振る舞うちぐはぐ感。芳雄さんのストプレ、いいですねー♡
これぞ”桜の園”!
豪華なキャスト、美しい舞台美術と衣装・・・だが。
ストプレなのに最近では珍しい”チケット難”の公演です。
これはもう誰が何と言おうとやっぱり天海祐希さんが主演だからでしょう。
ひたすら天海祐希さんを生で観て楽しむ、なら、200%満足できます。
しかしながら個人の観ですが、私が観たい『桜の園』だったか?というと
やはりPARCO版の斜陽感が好きだったのでちょっと物足りない・・・・・という思いはぬぐえません。
浅野和之さんのフィールズももちろん素晴らしかったのですが、
PARCO版の村井國夫さん演じるフィールズの最期のシーンが
目と心に焼き付けられたまんまなので。
来週もう1度観劇するのでまた気持ちが変わるかもしれません。
それを期待して。
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作: #アントンチェーホフ
上演台本・演出: #ケラリーノサンドロヴィッチ
出演
#天海祐希 #井上芳雄 #大原櫻子 #荒川良々 #池谷のぶえ
#峯村リエ / #藤田秀世 / #山中崇 / #鈴木浩介 / #緒川たまき / #山崎一
#浅野和之