スパイダーについて語ろう(アバター2:ウェイ・オブ・ウォーター)
先日の感想文にうっかり書くのを忘れていました。
でも、この映画の最大のポイントはこの少年ですよね。
彼についてはテーマが大きすぎて扱いづらかったという面は正直あるかも。
以下はネタバレになるので閲覧注意です。
▼出自:
15年前にジェイクがクーデターを起こした時点で、幼すぎたために冷凍睡眠カプセルに入れず地球帰還を断念した16歳の少年です。
ちなみに映画では小さく見えますが資料によると身長は6フィート(183センチ)あるそうです。
実は私は、予告編を見た段階ではジェイクの息子だと思ってました。スカイピープルとナヴィの混血児では、ナヴィの身体的特徴(ブルーの肌)で生まれてくる子と、地球人の身体的特徴で生まれてくる子の2パターンがあるのかな、と私は予想したのです。(結果的にこの予想は外れて、指の数と眉毛だけで違いが表れていました)
で、引用したヴィジュアル・ディクショナリーですら伏せられているのですが、映画の中で明かされることに、スパイダーの両親はまさかのクオリッチ大佐でした!
父親がクオリッチなら、あの優れた運動神経も、素早い判断力も、強靭なガッツも、仲間に対するロイヤリティ(忠誠心)も、すべて納得ができるというものです。ここらへん本当に上手いです。
映画初見時は「父親が誰かなんて知らなくて良いこともある」と語った後にカットが切り替わってクオリッチの顔が映ったときには震えましたね。ストーリーのドラマ性も高いですが、セリフで語らせずビジュアルだけで理解させる脚本が格好良すぎて。良いねぇ、キャメロン、シネマだねぇ、と。(これがマーベル映画とかインド映画なら直接セリフで言ってますからね;それ自体は悪いことじゃないんですけど子供向けぽくはなりますね)
海外サイトのAvatar Wikiではさらに複雑な家庭事情を知ることができます。私も映画を観たあとに読んで、大変だったんだろうなと同情しました。
アバター1の終盤にソウルツリー周辺で激しい攻防を繰り広げていた頃、実はヘルズ・ゲート(地球人の基地)でも同時にクーデターが起きていました。この場面はVFX未完成の削除シーンを視聴できます。この混乱の中で母親は命を失ったのだと考えられます。(死傷者ゼロで済むわけない)
「ジェイクの血縁じゃないなら、よく分からん地球人の子供だろ」くらいに思ったら、まさかのアバター1での宿敵の落とし子だったなんて、しかも戦争に巻き込まれて地球人に母親を殺された可能性も高いなんて、運命の悪戯が過ぎますよ。
▼人間関係:
彼と彼を取り巻く人々の態度が複雑かつ残酷でドラマチックです。
ジェイクは彼を自分の子供のように受け入れます。自身が地球人からナヴィに変わったので当然でしょう。スパイダーは長男ネテヤムより早く生まれていたので、事実上の一番上のお兄さんですね。
ネイティリは彼のことをエイリアンだと見做して心を開きません。ジェイクにもそれをはっきり伝えるし、ラストバトルではクオリッチとの交渉のために躊躇なく人質として利用します。ネイティリが怒り狂って地球人兵隊を虐殺してるときに、怯えたスパイダーが姿を隠し続ける描写も素晴らしかったです。映画前半でバトルスーツのドライブレコーダーで父親が弓矢で殺される瞬間を目撃してしまったのが効いてます。本当に、ジェームズ・キャメロン監督は伏線のマジシャンですか?
少し脱線しますけど、キャメロンは伏線の貼り方とか見せ方が本当に上手いです。先にあるシーンでちょっとだけ見せて「何だろうアレはもっと知りたいな」と観客に思わせてから、すぐ後のシーンでそれをもっとじっくり見せるという技を多用します。アバター2なら捕鯨船周りのメカに顕著でしたし、アバター1でも馬を筆頭にナヴィの文化の見せ方が非常に上手かったです。勿論このテクニックは人間関係でも使われており、驚くべき短い時間に莫大なドラマを詰め込んできます。前にも書きましたがアバター2の物語って普通のセンスの監督なら6時間はかかる分量ですよ。日本だと庵野秀明が120分に圧縮した『シン・ゴジラ』という事例がありますが、あれは俳優が鬼早口をネタにしてたくらいですが、アバター2ではそれを殆ど感じさせないので、本当に神業だと言えます。これは勝手な予想ですが、ジェームズ・キャメロン監督の旅行バッグは相当コンパクトでしょう。(笑)
閑話休題して、次はキリです。2人は両親が居ない者同士で強く心で繋がっているようですね。ラストバトルで人質に取られてナイフを首に当てられた時でさえも、お互いに「相手を殺すな」としか主張してなくて、もう究極の純愛を見せつけられます。
しかし2人が別人種であることから、将来2人が結ばれることは多分ない運命だということは既にメチャ雰囲気を漂わせているので、もうそれだけで胸が痛くなります。定められた悲劇。これアバター3以降で感情をぐちゃぐちゃにされる可能性が高いですよ。今から期待大です。
ジェイクがアバター1の最後でナヴィに入れ替わったことを踏まえると、今後の展開次第では地球人の施設を奪って、スパイダーが自身のアバターを作ってそこに魂を移すという可能性もあるかもしれませんね。もしくは逆にキリがグレース博士のクローンを作って地球人になるとか。あるいは2人して身体を捨ててエイワの中で一つになるのか、それとも種を超えた恋愛(子供を残さないスタイル)を貫くのか。ハッピーエンドだとしても選択肢の可能性は無限大ですね。
そして父親のクオリッチ。スパイダーは彼を憎んでいるけど、行動を共にしていると楽しい時もある。父親の人格を持っているけど、物理的には父親ではない。監禁部屋では父親のドッグタグを投げ捨てたけど、海底で見つけた時は命を救わずには居られなかった。この全てにおいて両極端に振れるスパイダーのパーソナリティが、最高レベルに人間臭くて面白くて感動します。
ネイティリがスパイダーを人質に取った時、「そんな子供は知らん」とブラフを言うクオリッチの苦悶の演技(ステファン・ラング)が素晴らしいです。この表情をモーションキャプチャーとCGで表現できるのだから凄いですよね。
▼映像技術:
本作はスパイダーとナヴィが同時にアクションするシーンが多かったです。これは地味に高度な技術を使っています。
例えばジェイクとスパイダーが沈みゆく捕鯨船に忍び込む場面では、敢えて引きの画角で、カメラを水平にパンしながら、海から甲板に上がって段差を乗り越えるところまでワンカットで映します。この時、段差を越えるためにジェイクがスパイダーを補助する動き(ジェイクがスパイダーをつかんで持ち上げる)をしますが、これ一つ取ってもどうやって撮影したのか考えると大変興味深いです。
アバター1ではここまで複雑なシーンが殆どありませんでした。両者には十分距離があって、体が触れることは稀でした。アバター2では技術力を見せつけるかの如くアクションで絡むシーン(文字通り体が絡む)が多いです。
私はPJ版『ロードオブザリング』のガンダルフとホビットが並んで歩くシーンを思い出しました。あちらは子役やCGや遠近法まで様々に駆使して面白い絵を見せてくれましたが、そこに新技術で新たなビジュアルを追加してくれた感じです。そういえばキャメロン監督がアバターを撮影しようと決心したきっかけはロードオブザリング三部作を観てインスパイアされたからなんですよね。だからナヴィと地球人が並ぶシーンが出てくるのは必然だし、こうやって天才同士が影響しあってるエピソードも面白いですね。
▼次回作への伏線:
アバター2でスパイダーは溺れていたクオリッチを救出しました。これは大変なことをしましたぜ。
「おいジェイク、お前は残るだろ。俺が生きてる限り、お前を追い続ける。次はお前の家族を全員殺してやる!」
沈みゆく捕鯨船の上でクオリッチがジェイクに掛けた言葉です。これを受けてジェイクは「ここで終わらせよう」と決めセリフを放って、怒涛のラストバトルに突入します。
スパイダーはそんな男を助けてしまったんですぜ。
助けたことを知ったらジェイクはどんな反応を取るのでしょうか。
ネイティリはどう思うでしょうか。
ネイティリの言葉は重いですぜ。
「息子には息子を」
大事な長男であり、スカイピープルとのハーフなのに4本指の完璧なナヴィだったネテヤム(5本指の次男ロアクが「お兄ちゃんは完璧で良いよな」と当たる場面もありました)は、クオリッチのせいで殺されたんですぜ。(すごく冷静に見ると、危ない場所に飛び込んだ子供達の自業自得という側面もあるので微妙だが、ネイティリがどう思うかは別の話)
どちらに転がっても面白くなりそうですね。勿論、復習に燃えるクオリッチも楽しみですが、まさかのナヴィに寝返るクオリッチという筋書きもありそうです。ドラゴンボールでのベジータみたいですね。子供ができてキャラが優しく変化する点もベジータっぽいと思います。(笑)
私が予想してるのは、クオリッチ大増殖です。だってリコンビナントのボディだけ大量生産して、そこに精神のコピーを注入すれば、いくらでも複製できるじゃないですか。見てなさい、マトリックス続編でスミスが増殖したのと同じことが起きますよ。(笑)
しかもマトリックスのスミスは単なるプログラムでしたが、クオリッチは正真正銘の地球人だったので、まさかのクローンやアンドロイドの倫理問題(1人の人格を複製しても良いのか)にまで発展させる余地まで浮かび上がってきましたね。これは楽しみです。
そんな感じで、続編が待ち遠しいアバター2です。
幸いなことにもう黒字化はできたらしいので、あとは売上を伸ばして5部作を完走させるための資金を稼ぐことに期待するばかりです。
私もまだ映画館にリピートすることがあるでしょうし、円盤が発売されたらなるべく豪華で映像が沢山入ってるパッケージを買います。映像美を堪能するためにも物理ディスクで買いたい(ストリーミングでは不満)ですね。先日4Kリマスターされたアバター1は勿論買い直しです。
まだまだ楽しみが尽きないアバターシリーズです。
感想文はこちらのマガジンに集約しております。
▼追伸:
そういえばスパイダーって誰かに似てるんですよね…
…と思ってたんですが、先日、分かりました。
東京ホテイソンのショーゴでした!(笑)
顔も似てるけど、体格もそっくりです。
もっと似ているショーゴの写真が見つかりませんでした。
情報お待ちしております。(笑)
了。
最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!