2022年映画マイベスト10+
明けましておめでとうございます。
昨年と同様に1年分の新作映画にランキングを付けました。
▼トップ10発表:
いきなりですが発表します。
The NorthmanとEverything Everywhere All at Onceは2023年日本公開なので2本追加して12位までxx選びました。
これは偶然ですが、逆にFrench DispatchとWest Side Storyは本国公開が2021年だったので、そちらの分を補填したという見方もできます。
私は視聴した映画を6段階に格付けして記録しています。C評価以上なら「面白い」「チケット代の元は取れた」という感じです。ほとんどの映画がBとCに入ります。
▼総評:
1位の『NOPE(ノープ)』は語りたくなるテーマがてんこ盛りで、そのどれもハイレベルという化け物みたいな映画でした。主題である未確認飛行物体を巡るストーリーが面白いのは勿論、奇妙で最悪な奇跡、エンタメ業界における搾取、人種差別、映画撮影の歴史、といった複数のテーマを多層的に綴るのが、私に刺さりました。それでいて、ジョーダン・ピール監督が本当に撮りたかったのは昔ながらの西部劇だったんだろうなという情熱がピクチャーから溢れていて、これはもう無敵ですよ。私はgcss池袋で複数回フルサイズIMAXを観覧しました。文句なしの2022年ナンバーワンです。オールタイムベスト10にも入りそうです。
2位〜4位は非常に僅差です。半年後に再考すれば順位が入れ替わるかもしれません。(苦笑)
2位の『ノースマン 導かれし復讐者』も凄まじい映画でした。ハムレットの原作になったと言われる北欧の伝承を、鬼才ロバート・エガース監督が『ウィッチ』『ライトハウス』と同じノリでハードに仕上げてくれました。オシャレじゃない『ミッドサマー』という感じで最高です。北欧の宗教ってなぜあんなにグロいんですかね。しかも最後のバトルは「なぜそうなった」「いや、むしろあちらの超有名フランチャイズでこそ、このくらい無茶苦茶に戦ってほしかった」というツッコミ無しでは観られない究極のエンタメ作品となっていました。日本公開は2023年1月20日ですが私は一足先にUHD盤で観ました。4K画質だし字幕消せるし最高です。(なお日本語は非対応)
3位の『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』は何本か記事を書きました。映画を観ている悦びを実感しやすい作品でした。ウェス・アンダーソン監督の作り込まれた世界も良いですが、ビル・マーレイ演じる編集長のセリフから滲み出るクリエイターへの愛と優しさに、毎回視聴するたびに目頭が熱くなる大事な作品です。
4位は『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』です。世間一般には「映像だけはすごい」という評判が支配的ですが、個人的には物語も十分深くて面白いと思います。
日本人の多くが物語を薄っぺらいと感じる一番大きな理由は、日本国が何千年も他民族に滅ぼされず続いてきた国だからでしょう。映画で描かれる異民族間の緊張や危機感を日本人はどうしてもリアルに感じにくいです。もちろん言葉や知識で表面上は理解できますが、体験や文化が無いのでディティールを読み取ったり共感するのが難しくなります。先住民族を押し除けて広大な国土を手に入れたアメリカ人や、血みどろの戦いを繰り返してきたヨーロッパ諸国、そして現在進行形で紛争や対立を経験している世界各国の人達にとってパンドラの醜い争いは他人事ではありません。
次に本作は親目線の話であることが挙げられます。本作は子供を持たない人達には共感するためのハードルがやや高くなります。子供っていうのは何度でも馬鹿なことをするし、大人には考えられない行動を取ります。理由が何であれ、親は「そういう状況」になったら考えるより先に動くしかありません。この点については映画が詰め込みすぎである点も災いしていますね。本来は6時間以上はありそうな要素を神業レベルの編集で3時間まで削っているので、いかんせんダイジェスト版のように矢継ぎ早に語られて「時間の経過が分かりにくい編集」になっています。このため子供達が一向に反省していないように見えてしまいます。海ナヴィの女リーダーの妊娠から推察できますが、映画の中ではおそらく半年以上の時間が経過しています。(アバター1ではスパイ活動の期限は3ヶ月と文字情報で提示されていたり、地球人ジェイクの髪や髭が伸びたり、もう少し分かりやすかったんですけどね)
海外のヒットチャートではアバターWOWの快進撃が続いていますが、これは単純に「映像がすごいから」だけでは説明できないレベルです。何か物語面で響く深さを持っていなければ、ここまでの数字はついてきません。文化や人生経験がマッチしない人達でも、自分から歩み寄る態度で鑑賞すればアバターWOWの物語はとても面白く感じると思いますよ。
以上、激戦の2位集団でした。
実は、この2位集団にはリマスターで観覧した『アバター1』が加わる勢いだったのですが、旧作なので対象外としておきました。私はあの極限まで無駄を削ぎ落とした、それでいて深い物語が大好物なんですよねー。アバターは(映像ではなく)物語だけでも十分に面白い作品です。王道の展開に、手堅い脚本と演出が光ります。
アバターは人種差別が中心テーマなので文化の違いから日本人には理解しにくい内容だろうとは思います。ただ海外では政治的または宗教的な理由から「中身がない」と半ば言いがかりのような批判(彼らの本音は「お前の言ってることは間違ってるから無意味なのだ」に近い)があるのも事実で、日本のメディアやインフルエンサーと一部のエンドユーザー(自分の審美眼だけで判断してない方々)は額面通りに「中身がない」と受け取って「とりあえず批判」しているようにも見えるので、そこは残念ですね。(苦笑)
アバターフランチャイズは超大物タイトルなので上手くディスが決まるとジャイアントキリングの悦に浸れる(+共感も集めやすい)のは分かりますが、そんな消費の仕方をするだけでは勿体無いと思います。ここまで世界的に売れている物を「映像がすごい」だけで済ませるのはたぶん損してますぜ。
さて。
若干アバターの話をしすぎたので閑話休題します。
5位の『バルド、偽りの記録と一握りの真実』は単館系によくある私小説のようなストーリーでありながら、ハリウッドA級クラスの莫大な予算を投じて作られた夢のような映画でした。夢というか、ずっと悪夢を見続けているような心地悪さが最高でした。そして作品テーマが私には刺さりました。年齢のせいかな。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督といえば『バードマン』『レヴェナント』で既にこの路線を確立しているとは思いますが、それを更に煮詰めた感じですね。しかもマイケル・キートンの伝説的なリアル半生(俳優としてのキャリア)に乗っかることも、レオナルド・ディカプリオの人気と知名度に頼ることもなく、成し遂げてしまったのだから驚きです。こういうかなりの映画好きにしか理解できないような映画を、クソ大金をかけて作り続けるNetflixには信頼しかありません。
6位の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はセンスオブワンダーの塊のような映画でした。監督コンビのダニエルズは『スイス・アーミー・マン』から知っていましたが、今回特典映像で拝見して一人はアジア系だと初めて知りました。セリフは中国語と英語が入り混じって、そのあたりも目新しくて楽しめました。こちらも日本公開は2023年3月3日ですが私は海外版のUHD盤を購入して視聴しました。
7位の『ウェストサイドストーリー』はさすがのスピルバーグでした。王道すぎて過小評価されがちですが、やはり圧倒的な実力がありますね。リメイク作品なので、オリジナル版との比較を通じて本作の価値や素晴らしさをより深く理解できると思います。リメイクでは「今の時代に再構築する意味」が感じられることが重要ですから。
8位は『愛なのに』で、ここに来て初めての日本映画です。モチーフこそ違いますが、日本版『レオン』と解釈できる映画だと思います。ニューヨークだから殺し屋の物語になっただけで、トーキョーなら古本屋の物語にもなるってもんでしょう。(笑)
今年の日本映画ではダントツに良いと思います。河合優実が可愛く見えてしまい「16才の女子高生相手にこの感情はマズイのでは」と不安になりましたが、上映後すぐにググって実年齢が21才だと知って安心しました。ハタチを超えてるならセーフかな、むしろ私のセンサーは成人女性のコスプレだったことを正しく見抜いていたということで。(笑)
さとうほなみの熱演が素晴らしいです。美人すぎないけどちゃんと可愛くて、セクシー過ぎないけど豊満なバディが、映画にリアリティを与えています。昨年のネトフリ映画『彼女』を観てオファーが掛かったのかなと思われます。演技も良いのでこういう作品ばかりになると少し気の毒に感じます。早く裸に頼らないヒット映画が欲しい所です。なんて思っていたら『彼女』の廣木隆一監督の2022年秋公開の新作『母性』でワンシーンながら印象的な配役(もちろん脱がない)で起用されていたので少し嬉しくなったりしました。
9位の『アムステルダム』は、私はお洒落な『イングロリアス・バスターズ』だと解釈しています。この映画はビジュアルが本当に好きです。撮影と衣装が好みでした。この撮影監督の作風が好みなのかもしれません。何と言っても映画は活動写真(カツドウシャシン)ですからね。本質的にはピクチャーが一番重要ですよ。
10位の『Ribbon』はのん(能年玲奈)が主演・監督・脚本・編集で大立ち回りをしている映画です。音楽アーティストらしい感性重視の映画なのかと思って映画館に行ったら、意外なほどに演出が劇映画としてクラシックに成立していて、2022年で一番驚いた映画になりました。映画ファン界隈では今年の彼女には『さかなのこ』『天間荘の三姉妹』をトップに挙げる方が多いと思いますが、私は映画監督のんへの期待も込めてRibbonを推薦したいと思います。
▼惜しくもランクインを逃した:
さて。
2022年は良作が多かったので、例年なら10位に入りそうだった映画も書いておきます。
ケイコ 目を澄ませて
生まれつき耳が聴こえない女性プロボクサーの話。心を少しだけ削る些細な出来事を毎日乗り越えながら、時間は静かに確実に流れていく。そして訪れる人生の転機。夢を追い続けることの美しさと厳しさ。ノンフィクションに基づいたリアルな脚本と演出が胸を打つ。16mmフィルム撮影。
トップガン・マーヴェリック
これは有名すぎて説明不要ですよね。(笑)
3回映画館で観ましたが、4DX吹替版が最高でした。
ロスバンド
すごく良い映画だったので映画ファン(特に自分で音楽をやる人達)にはぜひ観てほしい。ちょくちょくご都合主義というか青少年向けっぽい設定の適当さはあるけど、ゆるいテレビドラマのような感覚で観れば最高に楽しい気分になれる。日本公開は22年3月だったがノルウェー本国公開は2017年だったらしい。
トロール
ノルウェー制作の怪獣映画。何と比べるかにもよるけど、怪獣映画として必要なことは全て満たしてる優良作品だと思います。視聴してて、すごく楽しかった!ピクチャーもサウンドもすごく怪獣映画らしくて満足した。しかも、それなのに無駄がなくて103分で終わるのも大変に素晴らしい。
RRR
とても楽しかった。アクションとドラマとダンスのエクストリーム。本作の衝撃や快感は、古い例だが韓国映画『シュリ』と似ている。あれもハリウッドの名作映画の美味しい所を矢継ぎ早に詰め込んで、そこに自国の要素を盛り込んだ構成だった。このスタイルを「二番煎じで浅ましい」と批判するのは簡単だが、実際に成し遂げるのはとても大変で難しいことだと思う。
主人公2人のモデルになった人物のことを調べると結構面白い。映画のエンディングや物語に深みが増すし、実在する神話が史実からどうやって作られたのかを想起させて知的好奇心を刺激する。(薬草を塗ったら一瞬で傷が治るとか、無限に弓矢が補充されるとか、どう考えても非効率な肩車戦法とか、いかにも神話として語り継がれそうなエピソードの雨あられ)
▼個人的に刺さらなかった:
年間ベストに入れる人が多い作品でありながら、私にはあまり刺さらなかった映画についても少し語ります。
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
ファンサービスが多すぎて乗り切れませんでした。良い映画だと思いますが、ノイズが多すぎて評価が下がってしまった感じです。これはエンドゲームにも共通して言えることですね。あとは、ピーターのとてもMITに合格するレベルの高校生ではない頭の悪さも気になってしまいました。(苦笑)
ザ・バットマン
ファンサービスが多すぎて乗り切れませんでした。良い映画だと思いますが、ノイズが多すぎて評価が下がってしまった感じです。いっそ「アルフレッドが嘘をついてるかもしれない」レベルで観客の猜疑心を揺さぶる『羅生門』や『最後の決闘裁判』のようなサスペンスに注力して2時間に収めてくれたら、私の評価は大きく変わっていたと思います。ただそれをやるとティーンが観て楽しい映画ではなくなってしまうので、DC/ワーナーが取れる選択肢ではなかったでしょう。
THE FIRST SLAM DUNK
原作を知ってないと十分に楽しめない点は引っかかりました。
グラス・オニオン
私は嫌いな映画です。配役も衣装も脚本も演出も全て良かったが、最後のオチだけが極めて不快。たった一人のアイデンティティをへし折るためだけに●●●●を燃やすのは、ジョークだとしても許しがたい。いかにも左翼にウケそうなオチだし、トマトも超高得点でウンザリです。
全人類がこの映画を大絶賛しても、私は最後までNOを言い続けるぞ。いくらフィクションでもアレを燃やすのだけは絶対にやっちゃいかん。その瞬間のBGMのチョイスも究極に胸糞悪かった。残りの99%は楽しめたけど、この1%で私の感情を180度入れ替えたスーパーどんでん返しでした。ある意味ではすごくハートに響いた映画でしたね。(苦笑)
▼総括:
以上が、2022年に視聴できた新作映画に対する感想です。
映画ファンの皆さんのツイートで2022年ベスト映画リストを見てると、コーダとリコリスピザとエルヴィスは観ておきたかったなあと思ひました。
2023年も素晴らしい映画に出会えることを願って、本稿は閉めたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
了。
最後まで読んでいただきありがとうございます。ぜひ「読んだよ」の一言がわりにでもスキを押していってくださると嬉しいです!