DC映画のマルチバースについて語る(2022夏)
現状を理解するために、まずこの画像から。DCEUって結構ふわっとしてるよね、という意図でまとめたものになります。2018年以降は【本当に繋がっているのか怪しい】レベルの作品が続きました。
私が欲しいのは一番左のSnyderverseだけです。それ以外のDC映画は #BoycottWB として経営陣が交代(会社にNOを突きつける運動なので目標は経営方針の変更)するまではワーナーも含めて観なくても良いとさえ今年の1月には考えていました。(当時に書いた記事はこちらです)
そこから半年間の出来事を書き出すと…
良いニュースがほとんど無かった気がします。(笑)
▼合併:
AT&T社がTimeWarner社をDiscovery社に売って、晴れてWarner Bros. Discoveryが設立しました。
これでザックとレイ・フィッシャーを苦しめた経営者が全員ワーナーを去ることになりました。私にとってはグッドニュースです。
8月現在で残っているのはウォルター・ハマダだけで、彼も意思決定には参加しておらず事実上の退任状態と言えます。あとは10月の『ブラックアダム』の公開を待って退任する意向らしいです。今も役員報酬を受領してそうなのであまり良い気はしませんが、まあプロデュースに名前を連ねているし、財務処理とかの都合で残った方が会社にとっても好都合なのかもしれません。私にとっては悪の四天王ですが、これまで会社が彼を評価してきたのは事実なので呑むしかないでしょう。
▼Snyderverse:
私はそもそもザックが好きでDC映画を特別視するようになったので、正直Snyderverseにしか情熱を持ちません。
アカデミー賞の人気投票(Academy Award Fan Vote)には少し協力したのでZSJLの優勝は嬉しかったです。アカデミー委員会から告知があって、最初はノリノリだったMARVELが結局いつものSnyderファンダムの執拗なネット攻撃に勝てなくて、どんどん声が小さくなったのは可笑しかったです。
しかしながら授賞式でトロフィーが無かったのは、正直きな臭い気もしました。あれスパイダーマンが勝ってたらどうなってたんでしょうか。というのも、そもそもこの企画が正攻法で受賞できないMCUの、具体的にはスパイダーマンNWHに錦を飾るための、ディズニーの策略だったと思うのです。結果的にはAmazonの『シンデレラ』とNetflixの『AOTD』に全部トレンドを奪われましたからね。(笑)
あとは私はAyerCutの続報を待っていたのですが、残念ながらこちらの進展もありませんでした。
残念ながらウィル・スミス、エズラ・ミラー、アンバー・ハードのスキャンダルはSnyderverseへの強い逆風になっていますね。
▼AyerCutが出せなくなった理由:
アカデミー授賞式でのウィル・スミスのビンタ騒動と、その日の夜に起きたエズラ・ミラー逮捕は、間違いなくAyerCutのプロジェクトに影響を与えたと思います。
ぶっちゃけ今年のSDCCで発表する準備くらいはしていたんじゃないでしょうか。でも主役のスミスがあんな感じだと世間の反発が怖くて、とても公開できませんね。ミラーもカメオ出演してますし。
AyerCutはWBDが以前と異なるDCを届けることをファンにアピールする最も有効な手段の一つだったと思います。すでに撮影済みなのでVFXスタジオの工面さえできれば低予算で完成まで持っていけます。私がザスラフCEOの立場だったら真っ先に目をつけます。デヴィッド・エアー監督もInstagramのストーリーで匂わせを連発していただけに確証は高かったと思われます。
スミスの禊が終わって(たぶん早くて2年くらいは掛かるかな)、ミラーの法的措置が固まってからでしょうね、公開をアナウンスできるのは。
▼そのほかの世界線について:
便宜上、世界線を【Verse(バース)】と呼びます。
こちらが現在のDC映画の世界線を私がおそろしく簡潔にまとめた図です。贔屓にならないように公平な立場で描きました。わたしエライ!(笑)
簡単に言えば、SnyderverseとHamadaverseのファンが激しく対立していて、どちらとも距離を置いているバース(Reeves、Phillips、Shazam)が平和に成功している印象です。
●Hamadaverse
事実上のDCEU本丸です。
私はSnyderverse支持派ですが、現状の本流はこっちだと認めざるを得ません。会社に続ける気があって、会社が一番お金を掛けているのがこちらだったからです。ただし上手く行ってるかどうかは別問題ですが。(笑)
2017年にザックを更迭して、取締役だったジョーンズとハマダが政権を奪取した世界線です。つまりザック支持者から見ると【泥棒猫】の世界線でもあります。このことが【スナイダー狂信者】からの強烈な反発を招いている理由でしょう。私もやや感情的になった時期がありました。
ジョーンズの介入は2016年に本格的になりました。直接的なトリガーはBVSの不振でしょう。
ジョーンズはMCUの明るい作風を意識して強引に方針転換を実施しました。このため『スーサイド・スクワッド』は編集段階でシリアス路線からポップ路線に変更になり、『ジャスティス・リーグ』ではジョス・ウェドン監督が追加撮影までしてお色直しさせて、『ワンダーウーマン』はポストクレジットが削除されました。
ザックが去ってからは更にジョーンズ色の強いポップ化が進行しました。
そもそもDC社への貢献という意味ではジョーンズの方が先で、彼のおかげで2000年代にDCコミックスが再生したという経緯があります。BVSで赤字を出したザックよりも、コミックスで数年に渡り黒字を出したジョーンズの方が会社の首脳陣には信頼されていたのでしょう。彼らは数字で判断しますから。
ただしザック色を排除した2017年のジャスティスリーグでも黒字は出せず、責任を取る形でジョーンズは2018年にWBを退社して、やがてジョス・ウェドンも『バットガール』の監督を辞退しました。つまり、 WBが会社としてやったことはずっと一貫していて、大規模作品で失敗した責任者のクビが飛んだだけですね。
以降は、WBに残ったハマダの名前を取ってHamadaverseと呼称されることが多くなりました。
なお退社したジョーンズですが、実は「マッド・ゴースト・プロダクション」という新会社を設立し、そこからDC映画(Hamadaverse)への関与を続けています。具体的には『アクアマン』、『ワンダーウーマン1984』そして『シャザム2』です。つまり、WBDになった今でも、ジョーンズの影響は残っているということです。
個人的には、Hamadaverseは【趣味が合わない】のでもう観ることはないと思いますが、作品の方向性が定まらない(子供向けで行くのかと思いきや『新スースク』のようなR指定作品を公開)のと、ザックが基礎を作ったSnyderverseを奪った形になっているので作品の品質に問わず一定数の因縁ファンから叩かれる状況になっているので、いっそのこと店仕舞いするのが得策だと思います。(*これは私が嫌いだからとかじゃなくて、冷静に考えてプロジェクトに障害が多すぎる)
●Burton-Verse
約30年前に奇才ティム・バートン監督が作った、マイケル・キートン主演のシリーズです。それまでの能天気でおバカなヒーロー映画のイメージを覆して、大人も楽しめるクールなものとして提供した最初の大作映画と言えるでしょう。まさにジャイアント・ステップです。
(本当の意味で【大人向け】を開拓したのは、1986年のコミック『The Dark Knight Returns』がダークヒーロー物の本当の先駆けで、バートンはそのシリアスさを採用しただけとも言えるのですが)
キートンバッツは誰もが認めるレジェンドであり、アラフォー以上には心の故郷でもあります。なんせ2014年にはキートン自身がセルフパロディで映画を撮ってアカデミー賞を獲ったくらいです。
詰まるところ、なかなか上手く行かないHamadaverseで、Snyderverse過激派を押さえつけるために、レジェンドを無理矢理召喚してみた。というのがハマダの本音じゃないかなと私は読んでいます。(笑)
2021年からは映画の続編をコミックで展開し、今年の7月に合わせて連載完結しました。完璧なメディアミックス戦略でした。バットガールとフラッシュのトラブルに巻き込まれて復活の危機に瀕しているのは、率直に言って気の毒だとは思います。
無事に公開まで辿り着けると良いですね。
●Reeves-Verse
Hamadaverseの喧騒をよそに、『クローバーフィールド』のマット・リーヴス監督が新たに立ち上げた『THE BATMAN』のブランドです。
ものすごくダークな作風を目指しますが、リーヴスはインタビューでR指定映画の制作はしないことを公言しており、主にティーン向けの健全なヒーロー映画として展開していくものだと思われます。
MCUにはないダークな世界観がMCUキッズにも好評だったようで、とても良いことだと思います。まずは映画がヒットしないと映画スタジオは成立しませんから。ちょうど30年前のキートンバッツが世間に与えた衝撃と、似たような部分があるのではないでしょうか。ダークヒーロー映画の雄として期待大です。
個人的には、シリアス味と頭の良さには欠ける作風なので、またしても【趣味が合わない】になってしまいますが、Snyderverseと食い潰す関係にはなっていないので、別にどうぞお好きにしてください、という感覚です。
この脚本ならもっとエグい映画にできたのに勿体無いなあ!とは正直思ってしまいますが。(笑)
●Phillips-Verse
THE BATMANに先んじること3年。やはりHamadaverseの喧騒から離れて、『ハングオーバー!』のトッド・フィリップス監督が作った『JOKER』の世界線です。
あれはね、ヒーロー映画じゃないんですよ。
ヒーロー素材を使ったアートです。
だから次回作がミュージカルになるんですよ。
個人的には、、、いいぞもっとやれ!(笑)
●Shazam-BlackAdam-Verse
子供のためのヒーロー映画を一番実践している世界線です。
一応DCEUと名乗りながら、問題の多いHamadaverseとは距離を置いている点がクレバーだと感じます。もともと2014年に公表されたDC映画のラインナップに『シャザム!』のタイトルがあったからDCEUに括られているだけで、しかも”DCEU”というのはワーナーではなくてファンが勝手に呼び始めたものなので、実際の作品は制作会社も別ですし、一線は引いておき、いつでも完全離脱できるようにしているように私には見えます。
シャザム/ブラックアダムはMCUにおけるSONYスパイダーバースみたいな位置付けなんじゃないかな〜?
『ブラックアダム』ではドウェイン・ジョンソンがプロデュースしてますし、これからもエンタメ作品として大きく道を踏み外すことはないでしょう。ザバやジョーカーに並んで一番安定しているバースだと思います。
例えば先日のブラックアダムの予告編が公開された時も、Twitterでは馬鹿にするような投稿がそれなりに多く見られたのですが、私にはそこまで可笑しい映像だとは思えませんでした。イチャモンをつけてくるSnyderverse信者には、ちゃんとSnyderverseを与えておけば何も言ってこなくなるでしょうし。この作品群で障害になりそうなのはその手のアンチくらいかと思います。
ワーナージャパンの「うっせぇわ」は流石にフォローできません。(笑)
▼まとめ:
私はSnyderverseに情熱を持っているからこそ、他のバースとの違いがはっきり認識できているつもりです。「ここが違うんだよなあ」というポイントがよく見えてくるからです。そしてだからこそ、「このバースにはこういう良さがあるよね」と見えているつもりです。
別バースが存在すること自体は悪ではありません。DC映画とCWが共存できたのと同じ原理です。ただし、俳優が重複しているから視聴者が混乱するとか、俳優のスケジュールがバッティングするとか、映画で出演するタイミングでドラマ版で退場するとか、そういうメタレベルでの衝突がこれまでは起きやすい事情はあったでしょう。
しかしMCUのお陰もあって、もうマルチバースは世間でも定着したと思うので、今後は柔軟に対応していただきたいものです。
了。