ザックおめでとうオスカー2冠!!(深読み)
ウィル・スミスのビンタ騒動が話題を掻っ攫っていった印象が強い第94回アカデミー賞ですが、私の中で最大の出来事はザック・スナイダーの2冠達成です。
2021年にスナイダーは2本の映画をリリースしました。ZSJLとAOTDです。圧倒的な完成度で批評家と映画ファンの絶賛を集めたZSJLでしたが、2017年に公開された作品のディレクターズカットの扱いになるためアカデミー賞の選考対象にはなりませんでした。
しかし、そこに光明が生まれました。
▼Army of the Dead:
今年は初めて一般人による投票が実施されました。
2021年で最高の作品を選ぶOscarsFanFavoriteで、スナイダー監督のAOTDが見事優勝しました。これは下馬評で有利とされていたスパイダーマンNWHを退けたことになりますし、同じくネットで支持する声が根強かったミュージカルの傑作『シンデレラ』にも競り勝ったことになります。
ぶっちゃけ、いつもアカデミー賞にそっぽを向かれているMCU(エンドゲームでさえ視覚効果賞ノミネートだけ;他はブラックパンサーが黒人起用のポリコレ要素で下駄を履かされたくらい)で、今年こそはとタイトルを獲らせようとしてディズニーが人気投票システムをねじ込んで来たからだと思われるのですが、それだけにNetflixのB級趣味全開のR指定ゾンビ映画が優勝してしまったのは痛快な結果です。(※ここだけの話、私はAOTDこそラジー賞に相応しい映画だったと思っています;ラジー賞って本来は「最低映画」みたいなシンプルなものじゃなくて、アカデミー賞が真面目に取り合わない映画の中からいろんな意味でぶっ飛んでる作品を選ぼうぜというノリなので)
OscarsFanFavoriteの投票期間は2月14日から3月3日まで。米国内のIPアドレスからはアカデミー賞公式サイトで一度だけ投票が可能で、あとはTwitterでハッシュタグをつけて1日につき20回まで投票可能というファンの忠誠心を試される鬼イベントでした。また抽選で1組2名を授賞式に招待するという特典もついていました。このように、もともと日本人を対象としたイベントでは無かったので、私も英語用アカウントではそれなりの件数の投稿をしました。
そういえば3月2日に「OscarsFanFavoriteはスパイダーマンNWHが優勝目前!」というトンデモな記事が出ていたのでここに貼っておきますね。
並んでいる映画タイトルをよく見ていただきたいのですが、Twitterで連日トレンド入りしていたAOTDもシンデレラも名前がありません。アンケートの選択肢に最初から入れてなかったのでしょうか。
この記事を発表したのはアメリカの某コンサル会社です。約2000名に対して調査を行った結果だということです。
注目すべきは調査した時期です。投票開始直後の2月19日です。これはアカデミー賞公式が発表した直後で、まだTwitterで本格的にバズり始める前でした。このあとスナイダー支持派がプッシュするAOTDと、もう一つウェストサイドストーリーの対抗馬としてシンデレラを猛プッシュする人達が大いに盛り上げて、スパイダーマンは空気になりました。
つまり最初からスパイダーマンをヨイショするための記事だったんですね。(笑)
どうやら、この記事はあくまでディズニーをヨイショ(印象操作)して、まだ公開中のスパイダーマンの販売促進するのが目的で、結論ありきだったのでしょう。さしずめ当該コンサル会社もそれなりに調査は継続していたと思うのですが、その後にAOTDとシンデレラが爆発的に伸びてしまったので、2月19日という最初期の調査結果を持ってきて記事を書かざるを得なくなったという所でしょう。
なお日本の業界関係者もマーベルをあげる記事を書いたりツイートをするとアクセスや高評価を稼げるのか、このヨイショ記事を真に受けてる人が日本にも居たので晒しておきます。「母集団は少ないので誤差あり」で予防線を張ったつもりかもしれませんが、そんなレベルではない間違いです。(笑)
▼Zack Snyder's Justice League:
さて。
せっかくスパイダーマンにオスカーを渡すためにファン投票を増設したのに、敗戦が濃厚になってきたディズニー・アカデミー賞連合軍は、2月25日に追加でもう一つのファン投票を設定します。それがOscarsCheerMomentです。
こちらはTwitterのみの投稿で、作品でタイトルではなく、アカデミー賞が用意した5つの名場面から1位を投票で決めるものでした。
こちらの複勝は抽選で5名に1年間無料で映画館で見放題などでした。
そして、ここでもザック・スナイダーの作品が勝利しました。
しかも今度はスパイダーマンNWHだけでなく、AVGエンドゲームの「アベンジャーズ・アッセンブル」を下しての優勝でした。
「マーベルは票が割れた」という擁護も聞こえてきそうですが、逆に「あんなにヒットしてるんだからそれでも勝つはずだよね、あれれ、映画館は同じ人が何回もリピートしてるだけだったのかな?」と聞き返して差し上げます。(笑)またワーナーは同じくスナイダーと同じくスローモーションで魅せるマトリックスの「バレットタイム」を出してきてるので、マーベルに票割れの件で文句を言われる筋合いはありません。
▼勝ちはしたもののモヤっとする点:
この称賛すべきダブル受賞ですが、ちょっと残念な点がありました。それは、優勝したのにオスカー像が進呈されないことと、アカデミー賞の公式サイトでリストアップされていないことです。
https://www.oscars.org/oscars/ceremonies/2022
なんでやねん。
ファン投票をすると決定したときにはずいぶんアカデミー賞公式がプッシュしていました。この動画を見れば、普通はオスカー像が貰えると思いませんか?
ところが実際はこの仕打ちです。
LAタイムズの記事タイトル:
『オスカーファンお気に入り賞とは、本物のオスカーではありません』
ひでえ。(笑)
スパイダーマンが勝ってもこうしてたんですかね?( ・∇・)
結果も大々的に報道してくれよ。ザック・スナイダーの作品が強すぎて2冠とっちゃうと都合悪いことでもあるのでしょうか?(どんどん煽っていくスタイル:笑)
▼勝利の先にあるものは:
この受賞に関して傑作だったのは、DUNEがワーナー配給だから授賞式に出席していたワーナー・ブラザースの代表取締役トビー・エメリッヒです。
私はnoteで繰り返し書いていますが、エメリッヒはスナイダーカットを抹消しようとしたWB取締役の一人です。エメリッヒはスナイダー降板時にメディアに大嘘を吐きました。
しかし後日に公開された映画や撮影現場の関係者の発言から読み取れた真実は全く違うものでした。WB取締役によってスナイダーは事実上の更迭をされて、スナイダーの作品は封印されました。WB取締役はTwitterなどSNSで盛り上がるスナイダー支持者を有害であると言って斬り捨ててきました。そんな彼の目の前で世界規模のファン投票1位がスナイダーカットだと発表されました。彼はどう思ったのでしょうか。
あ、もうすぐ会社が買収されて彼は取締役から降りるから関係ないか。笑
私がスナイダー映画のファンだからとか関係なく、客観的に見ても、彼れらは金のなる木であるスナイダーカットやエアーカットをずっと冷遇・放置してきました。だから無能経営者だと見なされてクビにされても仕方ないですね。
一つ断っておきたいのですが、エメリッヒらの離職を決めたのは、ファン投票ではなくて、新会社のCEOであることは記載しておきます。
とにかく現ディスカバリー社のCEOであり新会社でもCEOを勤めるザスラフや、新会社の取締役に内定している人達にも、スナイダー作品の良いアピールになったのではないかと思います。Snyderverseの復興も大事なのですが、それ以上にエアーカットの公開に向けて大きな前進になったと言えるでしょう。
▼しかしDCEUに立ち込める暗雲は続く:
こんなことは言いたくないですが…
スナイダーカットの続編であるSnyderverseの肝であるエアーカットで最重要キャラクターになるデッドショットを演じているウィル・スミスは事もあろうに世界中継されている授賞式で暴行騒ぎを起こしました。
OscarsCheerMomentで優勝したスピードフォースのフラッシュを演じるエズラ・ミラーは翌日にハワイのカラオケ居酒屋で問題行動を起こして逮捕されました。
一番大事なときに何をやってるんだ!(怒)
なんというか、このように映画の中身でなくて、外周でスキャンダラスな話題を提供し続けるのは、DCEUの昔からの特徴で、一種の宿命なのかもしれません。そんな風にさえ思えてしまう破天荒ぶりなのでした。思い返せば、まるで美談のように語られる『ダークナイト』のヒース・レジャーだって急性薬物中毒による不審死ですからね。
とはいえウィルはその日のうちに冷静になって謝罪してるし、エズラはもう保釈されてるし元々クィアを表明していたりお騒がせ気質なところがある人なので、なんとか周りの大人達で物事を鎮めてほしいと願います。
そうだな、ちょうど今からウィル・スミスが謹慎とか活動自粛して、ほとぼりが覚める頃にエアーカットの追加編集やVFX処理や音楽録音が終わって公開できるのではないでしょうか。という願いも込めて、本文を締めたいと思います。
了。