【オススメ!】ホログラフィック宇宙 時空と重力の起源に迫る - 日経サイエンス
・ホログラフィック原理 と AdS/CFT
・量子力学と一般相対性理論(量子重力)と超弦理論
・時空の起源と計量
・ブラックホールのエントロピーと量子情報
・量子情報からの時空の創発
・「実在」とは何か
などなど
【最先端科学に基づいた宇宙論】
について、当事者の科学者の記事や、その監修による記事が盛りだくさんの
とても素晴らしい特集記事の雑誌です( *ˊᵕˋ* )
ご参考までに、どのような内容が書いてあるのかについて
一部記事を抜粋いたしますので、ご興味を持たれましたら
是非お買い求めの上、ご一読ください(ง'̀-'́)ง
(AdS/CFTについての、たとえ話 についての抜粋です)
水分子からなる非常に希薄な気体を考えよう。
この系を流体力学の方程式を使って記述することはできない。
「希薄な気体」は、液体のようには振る舞わないからだ。
しかし、水分子が凝結して「水たまり」になったとする。
そうなると、まったく同じ水分子が、流体力学の法則に従うようになる。
「その流体力学は、どこにあったのかと疑問に思うだろう。
(水分子の気体では)流体力学の法則が、
”実質的な意味” を持たなかっただけだ」
とファン・ラームスドンクは言う。
*
AdS/CFT対応でもおなじことが起こる。
CFT側を様々な部分系、つまり記述している系全体を、小さな部分系の集合と考える。
まず最も単純な場合として、
部分系の粒子が 「まったく量子もつれを持たない」 状況を考えよう。
「等価なAdSの記述」では、「時空がまったく存在しない系」に対応する。
時空がなければ、アインシュタインの一般相対論は
実質的に意味を持たない。
「流体力学の法則」を水分子の「気体」に適用できないのと同じだ。
*
しかし、CFT側の部分系内の粒子同士の量子もつれが大きくなると、
それぞれの部分系に対応するAdS中の領域に、「時空の断片」が出現し始める。
「個々の断片」自体は、一般相対論で記述できるが、
この状況ではそれぞれの断片はまだ互いに切り離されており、
時空の幾何学的つながりはない。
ここで、CFT側の部分系どうしの量子もつれをおおきくすると、
AdSにおいて興味深いことが起こる。
時空の断片どうしが繋がり始め、
最終的に「連続したなめらかな時空」が現れるのだ。
「量子もつれの仕方が適切であれば、AdS側に ”時空ができ始める” 」
とファン・ラームスドンクは言う。
「時空があたかも、 ”量子もつれ の 幾何学的表現” であるかのようだ。
すべての量子もつれを取り除くと ”時空は消える” 。」
エンゲルハートも同意する。
「部分系の間の量子もつれは、時空の存在と出現にとって重要だ」。
AdS/CFT対応は、我々の 「宇宙の時空」 が、自然界の根底にある
「量子もつれから創発する特性」
であることを、示唆しているのだ。
*
ファン・ラームスドンクは、AdS/CFT対応のおかげで、
物理学者は 「時空の本質」 について考えるようになったと考えている。
もし時空が低次元の量子系の量子もつれから生じるとしたら、
私たちの住む時空ではなく、その量子系のほうが「実在」していることになる。
ホログラム加工された絵葉書で、3次元の立体像ではなく、
それを生み出している ”2次元のカードのほうが実在” しているのと同じだ。
「空間そのものや、空間の幾何が、量子力学と何らかの関係があるというのは、
本当に衝撃的なことだ」と彼は言う。