(資料紹介)(計量)テンソルは「行列」に「基底ベクトル」を付加したもの ※一般相対論、リーマン幾何/非ユークリッド幾何、量子力学・ヒルベルト空間、情報幾何空間など

タイトルで書きました通り、一般相対論をはじめとする、
様々な(数学的な)空間においては、
(計量)テンソルというものがでてきますが、
非専門家の私たちにとっては

「行列matrixと、テンソルtensorは何が違うの?」

という印象があると思います。

それについて、簡単に解説している資料
(といっても抽象的概念なのでなかなか難しいですが)
について、オススメの記事をご紹介いたします( *ˊᵕˋ* )



・たぶんこの世で一番やさしいテンソルの話 基礎の基礎

ベクトルには数字のそれぞれ(成分)に「基底」がくっついています。

たとえばベクトル(2,3)を、基底をつかってあらわすと、
2 * e_x + 3* e_y
ってことです。

e_x や e_y を基底といいます。
座標軸のよって決まるベクトルの基本単位です。

ベクトルは、このように基底をつかった表現に書き換えることができます。

基底を、
e_x =(,0)
e_y =(0,
とおけば、2* e_x + 3* e_y=(2,3)ですよね。

このように「数字」プラス「基底」という考え方・・・を意識するのが
テンソルの勉強です。

4つの「数字」は、それぞれ「基底」の 【係数】 にすぎません。

4つの「数字」が「基底」と結びついているとき、それは

行列ではなく、テンソル

だ、と専門家は言いたいのです。

「基底」が変化したら
【係数はどう変化する】のだ?そういう勉強です。

ベクトルもテンソルも、結局は似たようなものにみえてきませんか?

基底」に対する「係数」
「箱(行列の括弧[])に「入ってる」だけ

です。

いくつかの専門書によるテンソルの解説
「成分」の変換法則に焦点をあてた解説が多く、
初学者にとってはそこも落とし穴になっているかもしれません。

しかし、大事なのは成分ではなく基底なんです。

成分」は「基底」にかかっている「係数」にすぎません。

しかし、大事なのは成分ではなく基底なんです。
(筆者注):大事なことなので2回コピペしました。

テンソルをテンソルたらしめているのは、
5,-1,3,4 などという成分ではなく
基底のほう
だからです。

基底」が 【いろいろと変化する(1に限定されない)】 から、
係数/成分」がそれに応じて変化するのです。

2とか3ってのは基底にかかる「係数/成分」にすぎません。

行列は単なる数字の組み合わせ。
しかしテンソルは基底にかかっている係数成分にしたもの
基底の変化に応じて、【成分が規則正しく変化】します。

高校までの数学で扱う空間では、
すべての座標】において

「基底」が常に「1」だけ ≒ ユークリッド計量

だけしか扱わないので、

「基底」の表示を省略

していました。
※0以外のどんな数に「×1」しても、値は変わらないので。

ですが、一般相対論などで、
「曲がった空間 ≒ 非ユークリッド計量」
を扱うような幾何学(リーマン幾何学など)
においては、

【各座標ごとに「基底(の値)」が異なる(1とは限らない)】
(非ユークリッド計量)

というような数学的な空間を扱うことになります。

東京からみた福岡の位置をあらわす方法は、
東京を原点とする地図で表したり、
東京と福岡を緯度経度であらわしたり、
いろいろな方法があるでしょう。

東京からみた福岡の位置は、東京の温度、とは違い、
場所の表し方によっていろいろと表現内容が変わってくるかもしれません。

しかし、東京からみた福岡の距離や方向【そのもの
変化するわけではありません
よね?

東京からみた福岡の方向や距離は
座標の取り方に影響をうけない
のです。

ベクトルも同じです。
基底の選び方によって、ベクトルの「成分」は変化してしまいます。

が、つまるところ、観察者の視点(基底)がかわったために、
【みための数字(成分)】が変化
しているだけの話です。

「ベクトル」そのものが変化したわけではありません。
ベクトルの「成分」=「みため」
です。テンソルだって同じなんです。

座標系が変化すると、それにともなって
数字/成分がクルクルと変化します。

注意すべき点は、数字が変化したからと言って
「空間のエネルギー」そのものが変化しているわけではない
ということ。

観察者の視点(基底)が変化しているために、
その変化に応じてテンソルの成分が変化しているだけです。

そうすることによって、「空間のエネルギー」を
座標系に依存せずにあらわし続ける
ことができているのです。

座標変換により、基底が、
ex や ey 、εx 、 εy の組み合わせから、
e'x や e'y 、 ε'x 、ε'y の組み合わせに変化しましたが、
そのパターンは同じです。

なので、基底の変換にあわせて成分を規則的に変化させることができました。

座標が+30度回ったので(基底が変化したので)、
テンソルの成分(数字)が変化してしまいましたが、
こうすることによって、物理学者があらわそうとしていた
"何か"(物理量)が、座標変換の影響をうけずに維持されたのです。

x軸が+20度(反時計回りに20度)、
y軸が-30度(時計回りに30度)に歪んだ座標上
では、
どう表されるでしょうか?
数字が変化してしまいましたが、やはり、同じテンソルです。

座標軸が変化したことによって、
テンソルの中身(数字、成分、みため)が変わってしまいましたが、
4つの数字であらわそうとしている ”何か” (物理量)
変化したわけではありません。

これを基底なしで書くと、ちょっと意味がわからなくなります。

座標の変化にともなってテンソルの成分が変化するのは、
実は、
「基底」が変化していることによる 
【二次的(副次的)なもの

です。
つまりテンソルの本質は「基底」の(変化の)ほうにあります。

座標軸の変化ではなく
「基底」の変化
を理解するのが本質
です。

基底はテンソルではなく、動いているという点です。
基底は座標の方についてまわります。
座標が動き、基底がうごく。

テンソルの成分(数字、みため)は
基底の変化カウンターをあてるように変わる。
その結果、テンソルがあらわそうとしている "何か" は変化しない
ですむ・・・という感じです。

作用素自体(テンソル)が座標系に依存しないんです。
座標系に依存しない「作用素」はめちゃくちゃ役に立ちます。

実は、計量テンソルこそが座標の性質のすべてを決める主役なのです。

座標上の2つのベクトルを比べるとき、
もし両者の【基底ベクトルが同じ】なら、
成分の違い】は【ベクトルの違い
を意味します。

座標ごとに基底ベクトルが異なる場合(非ユークリッド計量)には、
成分の違い必ずしもベクトルの違いをあらわしているとは限りません。

そのため、異なる基底ベクトルをもつ2つのベクトルを比較するときは、
基底の違いを補正する必要があります。
その係数が補正係数クリストッフェルです。
これによって【正味の成分変化を知ることができるようになります。

(注:数学ではなく、物理学に限定して言えば、
 ネーターの定理のような不変量
 エネルギー保存則などの保存則
 が存在するため、
 「ベクトルそのもの」が変化するケース
 は非常に稀
です。
 基本的には、「基底」だけが変化した結果として
 「成分」(みため・可観測な物理量)が変化している、
  というケースがほとんどです。

 「成分」(みため・可観測な物理量)が変化しているので
 「”力”が働いた」「力場が存在する」「空間が曲がっている」
 などのような呼び方をします(”ゲージ場" 理論)。

  実際には、ある点Pの「基底」と、
  別の点Qの「基底」が異なるだけです。
 この各点毎の「基底(計量テンソル)」のことを
 「空間そのもの(の性質)」「距離の定義」
 などと言ったりします。
 なので「基底」が2つの点の間で異なるとき
 (この二点の間の空間は「曲がっている」と表現します)

テンソル積(計算式⊗)は、ベクトルや行列で使われる、
よくあるルールとは全く違った計算です。
直積と違うのは「基底」を伴っている点です。


・EMANの物理学

無限遠にいる人
俺のところ(座標・位置・点)では
 目盛り(「基底」のこと)は 1 m 間隔なんだが,
 そっちではどうなってる?」と聞いて,
地表の人がそれに対して
「いや,2 m 間隔になってますよ?」と答える.
「なんじゃそりゃ?
 お前の使ってる 1 m モノサシが縮んでんじゃねーの?」
いや,縮んでなんかいませんよ」
「そうなのか・・・?あ!そうか,そっちの空間自体が縮んでるから
お前にはそれが分からないんだよ」
無限遠から見た場合,星の表面にいる人の
空間は重力方向には縮んでいるように観察され,
その一方,円周方向には全く縮んでいない,ということになる.

あらゆる人にとって
自分のいる一点だけでは
時空は平らだと信じることが出来,
そうなるような座標を選ぶことができるというのが
一般相対論の結果であった.
(注:物理学というよりも、リーマン幾何学という数学的な性質です)

つまり,自分の視点に合わせた座標を採用する限りでは
自分の足元で (1) 式が成り立っているのである.

ここから分かることは,
どの人にとっても目の前を通過する光の速度は同じ値
であるということである.
それは重力場の中にいる人にとっても言えることで,同じ値である.

しかし自分のいる場所【以外】での光速について語る時には,
見る人によって、その値「基底」ではなく「成分」)が
(あくまでも、!見かけ上は! 
物理現象としては【当事者の座標】に依存する【局所性】ので、
上で書かれているように【常に光速不変】
異なるのである.

天体に近いほど,光速が小さくなっている事を表している.
シュバルツシルト半径の位置ではその速度はなんと 0 である.ま
た,上向きの光線だろうが下向きの光線だろうが差はなく,同じ値になっている.
ニュートン力学の常識からすれば,
重力に従って「落ちる」ほどに速度が小さくなって行く
なんてのはちょっと奇妙かも知れないが,
そういうことが起こっているのである.

しかし以前に説明したように,光が落ちて行くほどに
その振動数は高くなるので,光のエネルギーは増している.

円周方向に進む光の速度はどうなっているだろうか.
この場合も天体に近いほど光速が小さくなっていることを意味しているが,平方根がついている分だけ,重力方向に進む光ほど小さくなってはいない.
もちろん現場にいる限りでは,重力方向に進む光と
それに対して垂直な方向に進む光とで、「光速の差」はない.

しかし傍から見れば,光の進む方向によって速度差があるように見えるというわけだ.


〇(ここからは、少し専門的な資料です)

・(専門家によるpdf資料)微分形式と物理 ~古典力学・電磁気学から拘束系の量子論まで version3 琉球大学理学部 前野昌弘

http://irobutsu.a.la9.jp/kougi/DFC.pdf

1.2 ベクトルとは(いろいろな定義)
大学以上の物理と数学では、
「ベクトル」の定義が流儀と分野に応じてたくさん
現れて困ってしまう。

高校数学的†3な意味での「ベクトル」の定義
向き†4と大きさのある量」となる。
図形的表現としては「矢印」である。
これはある意味「もっとも範囲をせまく定義した『ベクトル』の定義」
言えるだろう。

おそらくはもっとも意味が広い「ベクトル」という言葉の定義は
「足し算と定数倍が定義されている量はなんでもベクトル」というものだ。線形代数での「ベクトル」はこれで、定義が広いものだから単なる実数もベクトルであるし、行列もベクトルであるし、関数もベクトルである。

1.2.1 基底
足し算と定数倍(この二つをあわせたものを「線形結合」と呼ぶ)
ができるものがベクトルだとすると、
逆に任意のベクトルは「基底」と呼ばれる
基本的なベクトルの線形結合で書ける。

同じベクトル
であっても、
どのような基底のセットを持ってきて表現するか
により【見かけ(成分・可観測量】は違う。
しかし【物理的内容(不変量・保存則・物理現象)
そのような表現(「基底」の違い・「成分」の違い)に
【関係ない
ものとして存在しているはずである。

†6 波動関数は足し算と定数倍ができるから、立派な「ベクトル」である。

共変ベクトルと反変ベクトル縮約を取った量 AµBµ
(それぞれの変換の行列が「転置すると逆行列」になっているおかげで)
不変量になる。
同様にして、反変ベクトルと "微分" 演算子内積 Aµ ∂∂xµ
および、共変ベクトルと "微小変位(≒微分)"内積 Aµdxµ
「座標変換の不変量」となることはすぐにわかる。

1.7.1 演算子 Aµ∂∂xµの幾何学的意味
1.7.1.1 流れに沿った微分(※「勾配流 gradient flow」?)としての定義
微分の定義に戻って、演算子 Aµ ∂∂xµ が何をする演算子なのかを書き下して見ると、~~~となり、要は
「{A·} で表現される ”流れFlow” に沿った変化量」
を計算している。

1.7.1.2 微小な座標変換による定義
別の見方をすることもできる。
まず座標 xµ からXµ = xµ − ϵAµで関係づけられた新しい座標 Xµ への
(微小な)座標変換と考える。
座標変換した結果、新しい座標の値が {x·} になった点にある場と、
座標変換前の古い座標の値が {x·} であった場所にある場
(これは違う場所にいるのだから違う場である)の【差を取る演算
を考えると、これも A' を掛ける演算になる。

整理すると、 ✏ 「数が並んだもの」としてのベクトル
−→ 基底を意識したベクトル vx⃗ex + vy⃗ey
−→ 微分演算子としてのベクトルvx ∂ ∂x + vy ∂ ∂y
☆微分演算子 ≒ 微小な座標変換/微小変位/微小変化 ≒ 平行移動
※ある次元軸Aにおける微小変化に対する、他の次元軸の微小変化のことを「相関」と呼ぶ。後々の共分散行列・相関行列はこの意味で、微分(偏微分)の性質に近い。

|dxµ⟩ を「基底」
と表現したが、以下のような考え方をした方が、この後の話では役に立つ。
Aµ|dxµ⟩ と書いたとき、この |dxµ⟩ は特定の方向を向いているのではなく、任意の方向を示していて、後からここに
「特定の方向への微小変位 dxµ」が代入されるのを待っている
と考えよう。
本によってはこのように「代入されるのを待っている場所」を「スロット」と表現している。
このスロットに「特定の方向(たとえば x 軸方向だったり、ある曲線の伸びる向きだったり)」を代入することで計算を進めていくのである。

FAQ 基底 |dx⟩ の長さは 1 ですか?、無限小ですか?
いろんな立場があろうが、実は「そんなこと気にしなくてよろしい」というのが答えである。

さて、こうやって作った 1-form なるものの意味は何なのか。
1-form は、その「基底」部分を「微 小変位」と解釈して Aµdx µ と書いた場合、あたかも「今から線積分する量」のように見える。
実 際、これを線積分することにはちゃんと意味がある。
ここまででは 1-form に関して「座標変換で 不変になるようなもの」という観点しか話してなかったが、むしろ「1-form は線積分してこそ意味 がある」と言える。

「1-form の線積分」は、積分路に対応する微小な線の dx µ を
基底 |dx µ ⟩ に代入しながら足していく操作
(※各座標ごとに、基底の値がバラバラ{非ユークリッド幾何}なので)

この積分は一般には 「どのような経路をたどって積分するか」に依存する
(※【各座標ごとに基底の値がバラバラ{非ユークリッド幾何}なので。
   大事なことなので2回コピペしました

1-form の次の量として 2-form を考える。
シンプルに拡張すれば、|dx µ ⟩ ⊗ |dx ν ⟩ のように
「微小 変位が代入されるスロットが二つある、N × N 成分の量」
を考えるとそれが 2-form になるのか な?—と思われる。
ただし、ここに出てきた記号 ⊗ は「直積」(または「テンソル積」)で、
N 成分 の基底N 成分の基底から N ^ 2 成分の基底を作る演算である。
2 次元のベクトルの基底 |dx⟩, |dy⟩ に対して |dx⟩ ⊗ |dx⟩, |dx⟩ ⊗ |dy⟩, |dy⟩ ⊗ |dx⟩, |dy⟩ ⊗ |dy⟩ の四つの基底が作られる。
ところが世間で「2-form」と呼ばれるものは、単に「スロットが二つある」だけではなく、もう ひとつ条件がある。
というのは 2-form には、「微小な面積に付随する量」または「将来面積分され る微小量」という意味合いがあるからである。
以下でまず「平面上の面積」の表現を考えよう。
(注:ブラックホールの面積則ホログラフィック原理などと関係して、シンプレクティック構造での不変量や、クラメールラオの下限(情報不等式)、不確定性原理における「偏差の積」とも関係)

1-form が「線積分される量」だったのに対し 2-form は「面積分される量」である。
この「微小な面積」A· と B· の両方に比例することはすぐにわかる。そこで掛算同様 に· = A· ∧ B· のように書けるとしよう。
」はこのあとちゃんと定義する、ある種の掛算を表 す記号であり、この積を「くさび積(wedge product:ウェッジ積)」と呼ぶ。
(注:後のシンプレクティック構造の定義)

面積ではない 2-form ももちろんある。

たとえば後で説明するが、 →磁束密度 B⃗ は実は 2-form なの である。
我々は角運動量の z 成分を Lz = xPy − yPx とか書くのだが、2-form であったことを思え ば、 Lxy = xPy − yPx と書くべきだったのだ。
こっちの方が「角運動量の z 成分」が実際に表 しているものに近いと思う。
なお、ケプラーの惑星の運動の法則に現れる「面積速度」が角運動 量に比例することを思い出すと、「どっちも 2-form」ということに納得が行く。

1.17 Levi-Civita 記号と Hodge dual
3 次元で面積がベクトルとして考えることができた
ことを思い出すと、
3 次元では
1-form(ベク トル) ⇔ 2-form(面積)
の対応関係がある。

その操作は「|dx⟩ が与えられたら
「|dx⟩ 以外を並べたものを返 す」ような操作であろう。
(注:偏微分の操作)

面を考えてその【(2次元の)面を通り抜ける流れFlowを考えているのが |dx⟩ ∧ |dy⟩ を基底 とする書き方で、
【(1次元)どの方向】に流れているかを考えているのが
|dz⟩ を基底する書き方である。
このような操作(「Hodge dual」と呼ぶ)を N 次元で定義していこう。そのためには、 Levi-Civita の記号をまず定義する。
(注:ホッジ双対は、密度行列などの行列やテンソル
 対角関数と非対角成分(ホッジスターとしての擬ベクトル)に分解する
 あるいはその混合物であると解釈するときにも使う)

外微分やくさび積
「テンソルの足が違うものを掛けていく」
という操作になっているが
、ここ に ⋆ (ホッジスター)が一発かまされると
「テンソルの足が同じものを掛けていく(縮約)
操作に化けると思えば よい。

2.1.2 E は 1-form だが、D は 2-form
多くの電磁気学の教科書では、
電束密度 D⃗ を電場 E⃗ 同様にベクトルであると習う
しかし、電 束密度が「単位面積あたりを通過する電束」として
「微小面積に付随するもの」と定義されている ことを思うと、
電束密度 D⃗ は 2-form で表現される量であるべき だ。

電荷密度が 3-form なのも、「微小体積に付随するもの」と定義させていることを考えれ ば当然の結果である。
あれ、ρ はスカラーじゃないんですか?

違うρ(正しくは ρ···)は 3-form である
(考えてみれば「単位体積あたりの」とつくあ たり、
 まさに 3-form ではないか!)。
3-form の成分(ρxyz や ρrθϕ)は座標変換によって変換する。
3 次元の場合、3-form の成分 は同時に「スカラー密度」でもある。

2.2.1 H は 1-form だが、B は 2-form
2.2.2 電流密度は 2-form

第 3 章 微分形式で語る一般相対論
3.1 共変微分と平行移動
「Aν を場所 x から場所 x + ∆x まで平行移動させたもの†1」と定義して、
共変微分は
「最初から x + ∆x にいる量」−
「x から場所 x + ∆x まで平行移動(経路依存)させてきた量」÷ ∆x
だと考える。

場所 x + ∆x場所 x ではベクトルのいる座標(「基底」)が違うから、
この「シンプルな微分(経路を無視した微分)」
意味のある計算にならない。

4.1 正準形式は何が嬉しい?
まず嬉しいことの一つは、
「運動方程式が時間に関して一階微分方程式になること」である。
こ の結果、問題は「初期状態を決めれば将来のすべてが決まる」形になる。 さらに位相空間(phase space)を考えると、
位相空間の中では系の時間発展
「互いに交わるこ とのない流線の集まり」で表現れる(ここは後述)。 ここまでは一階微分方程式になっていれば†1成り立つ話なのだが、
さらに正準形式にしたことで
「位相空間の体積が保存される量になる」おまけがつく。
このあたりは次で考える「シンプレク ティック形式」の理解が大事だ。

x˙ は(自由度 2 の系の三つめの物理量だから)もはや独立ではなく
x˙(x, p) のような「x, p の関数」なのだ。

4.2 シンプレクティック形式への準備
というわけで、Lagrange 形式からハミルトン形式への移行
実は「独立変数を ( ˙x, x) から (p, x) に変える」
ところに大きな意味がある。

時間に関して一階の微分方程式であるだけではなく、
その微分方程式が常に上のよ うな形で書けるのが正準形式の旨味である。

grad H は、H という「山の高さ」が登る方向へのベクトルである†3。
上で重要だったのは grad H を 90 度倒したベクトルである    − ∂H ∂x ∂H ∂p    であった。
これは「山の高 さが変わらない方向へのベクトル」になっている。
運動が起こるのはこちらの方向、つまり「エネ ルギーが保存する方向」
なのである。

4.3 シンプレクティック形式と Poisson 括弧
ω·· =
1 /2 ω_MN   |dz M⟩  ∧  |dz N ⟩ という
(ウェッジ積で定義される) 2-form
を作る。
これをシンプレクティック形式(symplectic form)†7と呼ぶ。

今の場合なら、 ω·· = |dpi⟩ ∧ |dxi⟩という簡単な量になる。
この symplectic form は、symplectic potentialと呼ばれる
1-form θ· = pi dx i (4.3-8) の外微分になっている。

symplectic potential の |dx⟩ を基底から微小変位 dx に置き 換えると、
その結果は正準形式での「作用」の第 1 項になっている。

「B に対するハミルトニアンベクトル場XB」とは、~~で表される
微分演算子である。
今定義した演算子 XB は†9、後で出てくる Poisson 括弧という記号を使うと「後ろから B と Poisson 括弧を取る( XB∗ = {∗, B}_PB )」を意味する。
※ポワソン括弧は、量子化における「正準交換関係」として用いられます。

XH は「時間をすすめる演算子」と考えることもできるし、
「H が "保存する方向" へ進む演算子」を考えることもできる。

つまりハミルトニ アンの不変性運動量保存則が関係している。

実は 【運動量】 に限らず

任意の 物理量に関して

XOH = −XHO (4.3-18) は成り立つから
ハミルトニアンがある変換に対して不変であるとき、
その変換の母関数は時間変 化しない」という定理
Noether の定理/ネーターの定理)が導かれる。

量子力学を習うとよく
古典力学では『数』だった物理量
 量子力学では『演算子』になる」と いう言葉を聞く。
しかし古典力学でも解析力学の正準形式まで踏み込めば、
 古典力学の物理量は立派な演算子であると言ってもいい
(言い過ぎだと思うなら「Poisson 括弧の意味で」を補足しても いい)。
(注:量子力学では確率分布/確率密度関数{ベクトル}、
   密度行列{テンソル}を扱うので、
  「成分」としての「確率量/確率測度」と
  「基底」としての「確率変数/確率事象」が存在する。)

(4.4-11) は電磁場のゲージ変換 A ′ · = A· + d·Λ と形は同じである。
要は、我々が大事だと思って いるのが
「2-form が closed であること」なら、
その 2-form に「1-form の外微分」を付け加えても 大丈夫なのだ。

symplectic potential が不変なら
symplectic form も不変で、これは
Poisson 括弧が不変であることも意味する。

正準変換の醍醐味は上のような
「座標と運動量の複雑な関数を新しい(座標 or 運動量)に選べ る」
ことにある。
上では |dp⟩ と |dq⟩ を基底に選んで話をしたが、
我々は【自由度 2 の位相空間の中
四つの 1-form|dp⟩, |dq⟩, |dE⟩, |dθ⟩ を持っているので、
基底の選び方は変えてよい。
外微分の結果の 2-form を見ると同じに見えるが、
 外微分する前1-form には< 0-form の外微分>で表現される
  違いがある」という状況(電磁場のゲージ理論と同じ)が
 ここに見 えている。

4.6 調和振動子のエネルギーを上げる演算子
2 次元
位相空間 (q, p) が
1 次元複素数 a になる。
(注:1次元下がる複素構造/ミンコフスキー計量を持つ

量子論に行くと、この a と a ∗ が「エ ネルギーを上げ下げする演算子」という意味を持つようになる。

上では
「こういう正準変換をする」→「そのとき G はこういう形
と求めていった。
だが実は G を先に決めて、それに対応する正準変換を行うことも可能である。
古い位相空間座標 p, q と新しい位相空間座標 P, Q の関係を決めていく。
4つ】 の位相空間座標のうちどの【二つを独立変数とするか
いろいろな計算方法がある。

†12 dG = dW + qdp + pdq として最後の項を左辺と相殺させている。
実は G → W の変換はルジャンドル変換であ る

†13 これは、 G = W − P Q = Pi f i ({q · }) − Qi と書くこともできる。
この項が作用に付け加わるところは、あたか も
Pi という Lagrange 未定乗数が、 f i − Qi = 0 という拘束を課す
かのように見える。
(注:ギブス測度や、拘束条件による複素構造/ミンコフスキー計量

4.8.2 熱力学的状態空間における 2-form
これは系が(2-form として表現される微小面積を周回するような)
「サイクル」 を回るときに、
T-S 空間、P-V 空間、µ-N 空間
それぞれが描く面積の間に関係があるという式で ある。

つまり我々が「熱」とか「仕事」とか呼ぶものは、
この「熱力学的 【状態空間】 のなかの
2-form の 積分量
電磁気での対応物は磁束や電束
なのである。
磁束が積分により「面積を通り抜ける」 量が計算されるのに対し、
熱は積分により「一周すると系が吸収する」量が計算される。

図 1-5 → p23 のあたりで、X という量の「地図」が書ける
その微小変化である dX を「坂道」の方向 のような形で
考えることができた。
熱力学の「状態空間」の中に
S という量「地図に書き込ん で」
そこに dS という方向を考えることができるのは、
熱力学第 2 法則が熱力学の状態空間の中に
「こっちには行けるがこっちには行けない」という
一方通行性の「方向」を定めてくれるからであ る。
つまり第 2 法則はこの節でした話ができるための
舞台設定を作るところに役立っているのだ。

自由度 1 しかないのに(x と X は連動しているのに)
二つの変数 x, X を使ったものだから、
不必要に複雑 な計算になってしまっている。
しかし、最初の(図を描き直す前の)状況から見れば、
このように 二つの変数が出てくることは自然ではある。
つまり、冗長に見える 2 変数 x, X での表現も、
役に 立つ部分がちゃんとある。
こういう「本来系が持っている自由度より、
力学変数として現れる物理量の自由度の方が多い
状況になっていう系がこれから扱っていく「拘束系」である。
(注:光速定数に従う物理空間速度と、固有時間速度も、
   自由度は光速定数cの1個分なので、
   見かけ上2個の速度があっても 
   「拘束系」として、自由度は1個しかない。
   複素構造/ミンコフスキー計量を持つ2変数
   (複素平面波や調和振動子として表現される)や、
   シンプレクティック構造を持つ2変数などによって
   数式としてモデリングされるような状況は全て「拘束系」である。
   「拘束系」であればそれが確率量を扱う場合や、状態数を扱う場合ラグランジュの未定乗数法が使えるので、ギブス測度としても扱える)

正準理論として考えたとき、
この系には x, X, T, Px, PX, PT の 6 自由度があった。
四つの条件 が付け加わったので、これで自由度が 4 落ちる。
つまり系の本来の力学的自由度である 2(座標 1+運動量 1 と数える)になった。
つまりこの系の「位相空間(phase space)」(座標と運動量を変数 として持つ空間)は、今の場合 (x, X, T, Px, PX, PT ) の自由度 6 があるように見えて、実は 2 しかな い。
このような系が拘束系
であり、拘束系のハミルトン形式を考えるときには、以下に述べる注意 が必要である。
ハミルトン形式での計算には
「運動量を定義する
 (というより、座標と運動量の【ペアを設定する)」
部分を注意深くやらないと間違える。

5.4 光円錐時間の場の理論と拘束系

少し非自明な「拘束のある理論」として
光円錐時間での Klein-Gordon 場」を考えてお こう

Klein-Gordon 場は通常の時間座標を使う場合は全く拘束系ではない
(シンプルに、調和振動子 の集団である)。
しかし、光円錐時間 x + = 1 √ 2 (x 0 + x 1 ) を使う†6と拘束系になる。
この座標で Minkowski 空間の 4 元ベクトルの長さの自乗
を考えると~~となる。
± 成分の計量が非対角になるところが面白い。

光円錐時間では、運動量 p +  , p⊥ を決めればエネルギーは一つに決まる。
光円錐時間を使うとこの点が非常に問題を簡単 にしてくれる。

「微分」はうざいので、「フーリエ変換」して考えよう。
(注:微分 ⇔ フーリエ変換 が同じ数学的操作なのは
   量子力学の波動関数/密度行列でも同じです。
   ハミルトニアン形式・シンプレクティック形式で定義される
   テンソルを扱うため。)

光円錐時間による Klein-Gordon 場は、
運動量に時間微分が含まれない
ことと
運動方程式が時間 微分の一階である点
フェルミオンに似ていて、結果も似ている。

これで 0-mode は消去された・・・のだが、よく見るとここに現れている 1 (p⊥) 2 + m2 は、0-mode に対するグリーン関数(プロパゲータ)である。つまり、2つの相互作用項の 0-mode 微分 ∂V ∂ϕ0 の 間を、0-mode が伝播している、ということを表現しているのが上の相互作用ハミルトニアン
こうして、拘束条件で消え去ったと思われた 0-mode はちゃんと内線として生きている(完全に 死んでしまうと Lorentz 不変性がやばい)

第 8 章 経路積分による量子化と拘束系
8.1 古典論と量子論の違い
量子論における q, p は(Poisson 括弧の意味で)という注釈なしで
「 マジ 本気で交換しない」
それゆえに位相空間 ({p·}, {q · }) や
位相空間内の関数 f({p·}, {q · }) は存在できないのである。
よって、|x⟩ や |p⟩ のような
座標か、運動量か、

【どっちかだけ】

指定した状態
基底に選ぶ†4。

量子力学的状態は、波動関数で表現されるとよく言うが、
いわゆる波動関数 ψ(x, t) は、状態ベ クトル |ψ(t)⟩ を~~のように
基底ベクトル |x⟩ を 「基底」 として分解した
「成分」 に過ぎない。
本講義のス ローガンを繰り返すと
「物理の世界では座標系によらない表現のほうがえらい」
ので、|ψ(t)⟩ の方 がえらい†5。

この「基底にどっちを選んでもいい」という状況の古典力学での対応物「座標と運動量を交換する正準変換」 (4.5.2 項 → p131 )である。

同じ状態ベクトル |ψ(t)⟩ を(座標ではなく)
運動量空間の基底」で分解
して示すこともできる。

調和振動子の場合、エネルギー E と角変数 θ を位相空間の座標として使うことも → p132 できた。
その ときは E は時間発展しない変数になり、
角変数 θ は(名前の通り)周期 2π の有限区間の変数と なった
(このあたり、量子論ではさらにいろいろややこしくなる)。
(注:ある変数/物理量の定義域が-∞~+∞の「非有界」のものを
   調和振動子を使って数学的にモデリングすれば
   定義域を0~2πと「有界」「周期化」することができる。
   ある意味、「繰り込み」「コンパクト化」と似たような性質。

量子力学の力学変数となるものは |ψ(t)⟩
(あるいはその成分としての ψ(x, t) な ど)であり、
x と p はその変数の成分を区別するためのラベルに過ぎないのである。
なお、量子力学において「ラベルとして採用できる座標」は、
symplectic form を 【dp_i ∧ dx_i】 と書いたときの【片方】である。「Poisson 括弧の意味で交換する
 (symplectic form を内積の計量とした場合に直交する)変数」の
 最大の組み合わせになる。

†8 A(q) が出てくること自体を無視している本も多い。
この A(q) の入 り方が位相変換に対する共変微分と同じ
というのは興味深いところ。

これで2つの基底の間に~~という関係が生まれたわけだが、
なんのこっちゃない、これは普通の Fourier 変換である。
後で出す経路積分の話からすると、この
「フーリエ変換」は作用に pq を加えるという計算
であり、これはつまり
運動量座標取り替える正準変換
なのだ。

量子力学の「演算子 形式」での時間発展
古典力学との違い
 {∗, H}_PB
i [∗, H]
に変わるだけ
である。

初期状態 |qi , ti⟩
時刻 ti において粒子が qi という点に局在している」状態である。
これが、 ハミルトニアン H にしたがって時間発展し、
時刻 tf においては e^−iH(tf −ti) |qi , ti⟩ という状態にな る。

結局、exp の肩に i × (作用) をのせて積分すれば
確率振幅が得られることがわかる。†1
(注:確率量(指数写像) ⇔ 情報量(対数写像)
   つまり「作用」が情報量を表しているなら、
   指数写像{expをつける}と確率分布になる。
   「作用」は位置×運動量だが、
   位置×波数{位置の逆数の物理次元}にすれば
  「無次元量(情報量と同じ)」)
   が得られるので、あくまで波数が先にあって、
   波数をドブロイ方程式によって運動量へ変換
している、
   と解釈してもいい。
    その結果の物理次元が、「作用」と同じ次元。
   「肩に乗せる」部分は、指数型分布族として、
    モーメントでの定義の形式にすれば、
    情報量についてのN次のモーメント
    がそのまま確率分布を定義することになる)


・その他のメモ書き

テンソルの非対角成分 ≒ 斜交座標系 ≒ 加速系 = 力/力場の存在

行列の非対角成分 ≒ 共分散行列(相関行列) 
≒ (確率統計用語での)二次モーメント非線形項)

密度行列の非対角成分 ≒ エンタングルメント・量子相関・相互情報量

密度行列の非対角成分 ≒ 条件付き確率周辺分布
            {順過程の確率遷移と、逆過程の確率遷移

密度行列のテンソル積 ≒ 同時確率分布の拡張・確率事象の(確率用語の)組み合わせ(コンビネーション) 
≒ 確率密度関数に対する、確率過程における「汎関数積分(経路積分)」

フィッシャー計量(テンソル) ≒ 共分散行列(相関行列) 
≒ フィッシャー情報量

フィッシャー情報量の逆数 ≒ クラメールラオの(情報)不等式 
→ 不確定性原理の下限・(物理量などの統計的パラメータに対する)推定限界(数学的な性質)

〇その他のQuoraの関連資料群

量子力学で使われる無限次元の複素ヒルベルト空間は、アインシュタインやミンコフスキーの時空とどのように関係しているのでしょうか?

テンソルネットワークとは、基本的には、
量子状態をヒルベルト空間上で表現する方法で、
明示的に別々の因子(factor)に分割されています。

最近の研究では、前述のエンタングルメントの重要性の観点から、
テンソルネットワークが量子状態のエンタングルメント構造を表現するのに非常に適しているので、この方法がAdS/CFTを考える上で非常に有用であることが示唆されています。

最近では、Sean Carrollらの論文(https://arxiv.org/pdf/1712.02803.pdf)で、ヒルベルト空間と時空の明示的な対応付けがなされています。
この場合、時空の距離関数[1] は、
ヒルベルト空間の因子[2] のペア間のいわゆる
「相互情報量[3] 」に関連付け
ることができます。
この情報量は、ヒルベルト空間の因子のペア間に
どれだけのエンタングルメントが存在するのか
を診断する量です。

この定式化の驚くべき結果は、
(時空を生み出す)量子状態のエンタングルメントを適宜変化させると、
時空の幾何学そのものが変化し、
アインシュタインの一般相対性理論の方程式を強く想起させるような働きをするというものです。
つまり、重力相互作用もこの枠組みの中から現れるように見えるのです。

AdS/CFTというもっとよく知られている場合の
エンタングルメントからのアインシュタイン方程式の出現を示す方法と密接に関係しています。

短いまとめ:重力の量子論(注:量子重力理論)においては、
時空の幾何学の出現と量子状態のもつれとの間に深い関係があることを
我々は期待しています。
言い換えれば、量子重力のヒルベルト空間が与えられれば、
この空間における状態のエンタングルメントから、
出現する時空の幾何学を再構成する方法が存在するはずです。


量子物理学の理解におけるテンソルの役割は?

しかし、量子多体系の物理を上手く記述するため
テンソルを使うという、かなり抽象的な話もあるのです。
これは、量子多体系の状態を抽象的なテンソルネットワークで表現する話です。
量子力学のヒルベルト空間は、
多体系を構成するサイトごと局所的な因子に分解されるので、
積空間の 「基底」 に付随する複数の要素を持つオブジェクト
(すなわち、テンソルによる記述が、
対応する量子状態を符号化するための方法を与えるというものです。

量子多体系の物理学には、テンソルネットワーク法を用いて数値的に解くことができる多くの難問が存在します。
その一つが、量子多体系の基底状態を決定することであり、
これは一般に解析的に解くのが難しい問題です。

しかし、ある種のテンソルネットワークは、基底状態とは何なのかについての、非常に良い推測を与えてくれることがわかりました。
この推測をもとにして、数値的な近似を行うことにより、
実際の基底状態が何であるのかを効率的に求めることができるという考え方です。

これが上手くいく理由は、量子系の基底状態は一般に非常に特殊な状態であり、特に非常に特殊なエンタングルメント構造を持つという事実と関係があります。
ある種のテンソルネットワークは(簡単に構築して動作させることができ)正しいエンタングルメント構造がすでに組み込まれているので、基底状態を数値的に探索するための非常に効率的な推測が可能になります。

有名なテンソルネットワークとして、いわゆるMultiscale Entanglement Renormalization Ansatz (MERA)がありますが、これは下図のようなものです。:)

これらのノードの形状はそれぞれテンソルであり、
テンソルの添字の数がノードの足の数に対応しています。
また、テンソル間の繋がった足は、通常のテンソルの縮約を表しています。
(注: = 確率分布/確率密度関数に含まれる、「確率事象の数
   繋がった足・テンソルの縮約 = 同時確率分布)

このネットワークは、上に進んでも自己相似でスケール不変な構造を持っていますが(スケール不変性がずっと保たれます!)、
下の足には局所的なサイトがラベル付け(例えば、スピン鎖のスピンの位置に対応)されています。
このスケール不変構造により、MERAは共形場理論の基底状態に対する効率的なansatz(仮設、試行波動関数)になっています。
(注:上下層の移動によって、「粗視化」のスケールが変動するので
   ある種「(基本的な物理量などの)ミクロパラメータ 
            ⇅ 
      (統計的・示強変数的な)マクロパラメータ」
   の変換における
    「温度 ”のようなもの” ≒ エントロピー ”のようなもの”」
   という概念が存在しうる。)

テンソルは量子力学そのものについては何も教えてくれませんが、上記のようにある種の量子力学系の物理の記述を試みる際に効率的な役割を果たすことができるのは確かです。:)


テンソルネットワークとは?

テンソルネットワークとは、テンソル「ネットワーク」です。
もう少し生意気でない言い方をすると、テンソルネットワークとは、
頂点がテンソルを表し、辺がテンソルの添字を表すグラフです。

テンソル積空間(より小さな空間のテンソル積をとって作られたベクトル空間)は、あっという間に大きくなることがわかります。

例のkk個の2×2行列では、必要なメモリ量は基本的にOO(kk)ですが、これらすべての行列のテンソル積では、OO(2k2k)となり、必要なメモリ量が指数関数的に増加します。

ほとんどの物理的な相互作用が局所的
なものであることに起因して、
ヒルベルト空間内でランダムに選ばれた2つの部分系間の
エンタングルメントに制約がある
からです。
(注:光速不変の原理と、リーブ・ロビンソン限界量子速度限界など)

実際、低エネルギーのダイナミクスでは、低エネルギー状態は
指数関数的に大きなヒルベルト空間の特定の部分多様体内に存在するように制約されることが証明できます。
平たく言えば
巨大な空間の可能性があるのに、
物理的には、その一部を除いて【すべてを無視できる
ことがわかっているのです。
あなたが機械学習に取り組んでいるのであれば、
2つの異なる変数間の相関を無視することができる場合を
考えるとよいでしょう。
実際、これはPCA(Principal Component Analysis、主成分分析)などの
ほとんどの次元削減スキームと同じ精神ですが、
テンソルネットワークでは、固有値や特異値だけではなく、
任意の分解を表現することができます。


エンタングルメント(量子もつれ)や相互情報量を中心にした場の量子論は、ホログラフィー原理やAdS/CFT、MERAになるのでしょうか?

※コピペ不可なので、当該記事をご参照ください( ᵕᴗᵕ )


エンタングルメント・エントロピーから生じる相互情報量と、創発/発現と呼ばれる現象について素人向けに書かれた書籍やウェブサイト、動画はありますか

※こちらも同上で、コピペ不可なので、当該記事をご参照ください( ᵕᴗᵕ )


時間と空間、どちらの方が謎ですか?

ヒルベルト空間の「空間」は、私たちが毎日歩いている3次元の空間でも、相対性理論の4次元時空でもありません。
数学用語で「ものの集まり」を意味し、ここでは
「宇宙で可能な量子状態」を指します。
(注:ヒルベルト空間 ≒ 確率(測度)空間。
   「基底」としての各確率事象/確率変数(可観測な物理量)と
   「成分」としての確率量{確率測度}が存在する空間。
   「成分」は【確率変数そのもの
】”ではなく”【確率量であって、
   「基底」へ射影される ≒ 確率事象が【選択
される
   ことによって、はじめて物理時空内部で観測可能になる。

   古典物理では「1つの物理量」を、1つの次元軸「基底」
   で表すのに対して、
   量子物理では「1つの物理量」を、
   「確率分布」として表すために、
    無限個の次元軸「基底」 ≒ 「確率事象」の無限個の束
    を必要とする。※もちろん有界なら有限次元。
    ※※確率分布において、各確率事象は排反事象として
    排他的・直交したベクトルなので。


現実の世界は、最初から量子力学的であり、
古典的な系の量子化ではありません。
宇宙はヒルベルト空間の要素で記述されています。
古典的な概念はすべてそこから導かれる
はずで、
その逆ではありません。
空間そのものもそう
です。
私たちが移動する空間は、現実世界の
最も基本的で還元できない構成要素の1つである
と考えられています
が、それは
大きな距離と低エネルギーの場合に現れる近似的な概念
と考えた方がよいでしょう。

量子情報(特に、相互情報量 によって測定される、
状態の異なる部分間のもつれの量)を使って、
それらの間の「距離」を定義します。
(注:距離の定義 = 計量テンソル
   {テンソルが非対称なら発散またはダイバージェンス

もつれの強い部分は近くに存在し、
もつれのない部分は遠くに存在すると考えます。
(注:ある2つの物理量の(量子状態・確率分布の)間
  「量子もつれ・エンタングルメント・量子相関・相互情報量」が強い   = 2つの物理量は非常に「似ている」 = 「近い」

このグラフは、頂点がヒルベルト空間の異なる部分を表し、
辺はそれらの間の創発距離によって重み付けされています。

ここで、2つの問いを立てることができる。
1. グラフを遠ざけると、固定次元の滑らかで平坦な空間の幾何学が現れるようになるのだろうか?
(答え:なります。最初に正しい種類の状態にすると、そうなります。)

2. この状態に少し摂動を加えると、創発する幾何学はどのように変化するのでしょうか?
(答え:一般相対性理論のアインシュタイン方程式を彷彿とさせるように、創発した質量/エネルギーに応じて空間が曲がります。)

量子力学から重力(エネルギー/運動量に起因した時空のゆがみ)を得るのは難しいことではなく、自動的に得られる、というドラマチックな主張です。
少なくとも、最も自然なことのように思えます。
もし幾何学がエンタングルメント(注:量子相関)と
量子情報(注:相互情報量、カルバックライブラー情報量、相対エントロピー、シャノンエントロピー、フォンノイマンエントロピーなど)によって定義されている
とすると、
エネルギーを加えるなどして状態に摂動を加えると、
幾何学は自然に変化します。
また、遠距離で創発する場の理論にそのモデルが一致する場合は、
エネルギーと曲率の最も自然な関係は、
アインシュタイン方程式によって与えられます。
楽観的な見方
をすれば、適切な量子系の古典的な極限において、
重力は簡単に出現するということになります。

相互情報量を用いてグラフ上の距離測度を定義し、
古典的な多次元スケーリングを用いて、
創発する幾何学の最適な空間次元を抽出します。
そして、このような創発幾何学上のエンタングルメント摂動が、
アインシュタイン方程式の(空間的な)類似物に従う空間曲率の局所的な修正を自然に与えることを示します。
平坦な空間の領域に対応するヒルベルト空間は有限次元であり、
体積としてスケーリングされますが、
エントロピー(とその最大変化量)は境界の面積のようにスケーリングされます。
ER=EPR予想の一つの解釈が明らかになります。
創発した幾何学の離れた部分をエンタングルさせる摂動が、
量子的なワームホールと見なせるような構造を生成するということです。

時空間の幾何学がエンタングルメントに関係しているという考え方は、
ますます一般的になってきていますが、そのほとんどは、
AdS/CFT対応のホログラフィック文脈で研究されています。

私たちが行ったことの中で、最も興味深く、かつ挑発的な特徴は、
空間の任意の特定の領域に対応する自由度が
有限次元のヒルベルト空間によって記述されるという仮定から出発していることです。
これはある意味では自然なことで、
ベッケンシュタイン境界(ある領域に収まる全エントロピーの)や
ホログラフィック原理(自由度がその領域の境界の面積で制限される)
から導かれる
ことです。

もし、(1)空間の領域が有限の自由度を持ち、
(2)世界はヒルベルト空間の波動関数によって記述される、
と考えるならば、
量子情報から、古典極限のある種のアインシュタイン方程式に従う
幾何学が創発するという描像は、ほぼ真実
でしょう。
これらはそれ自体、筋の通った仮定です。


・(確率過程量子化について) 量子力学において「量子化」とはどのような意味で使われていますか?2つの何かしらの間に交換関係を課すことですか?離散化する、という意味では使われてないですよね?

通常の時間変数に解析接続を行ったものと
仮想時間の関数として表される力学変数qの時間発展として、
ガウス型自色雑音(量子力学的揺動)を伴う
ランジュバン方程式(古典的な運動方程式)で記述される確率過程
を考えます。
プランク定数は拡散定数に対応し、
この確率過程はマルコフ過程[6] になっています。
これが、確率過程量子化の出発点です。
この手法は、ハミルトニアンもラグランジアンも必要なく、
運動方程式のみを基礎にして量子化を行っています


(注:確率過程を積分しても、経路積分と同じになるはず
   {確率密度関数に対する「汎」関数積分なので、
    経路依存する/条件付き確率の連続であり、
    有方向の遷移確率に依存する。)
(注:解析接続を行った時点で、ハミルトニアン
   複素構造も、シンプレティック構造
   自動的に発生するので、あんまり変わらない?)

※ランジュヴァン方程式については、量子マスター方程式の一種
 リンドブラッド方程式☆などとも関係しています。
 ☆GKLSマスター方程式(量子開放系時間発展を表す方程式)
 
(Gorini − Kossakowski − Lindblad − Sudarshan)


・(おまけ)量子推定理論について

・量子推定理論について
量子力学系で観測を行ったときに得られる
測定値については,確率的にしか予言できない
ことは良く知られている.
この測定結果 ω に関する確率分布 P( d ω) は,
行った測定 M と測定対象である物理系の (測定直前の)状態 ρ に依存して
P(d ω)= P(d ω | ρ, M) のように定まる.
このように,量子力学が統計的側面を持っている以上,
量子力学の本質的理解のためには,
数理統計学と量子力学を融合させた理論体系の構築が不可欠である.
また同時に,光通信システムを始めとする 量子力学に従うシステムから得られる情報の限界を追究するにも このような理論体系は必須である.

このような問題を扱う分野は量子推定理論と呼ばれ,
対象とする物理系が量子力学に従うとき,
我々が知りうる情報の限界を統計学の立場から論ずる分野である.

未知パラメータ θ の値を観測データから 推定する問題を扱う.

・ランダム性条件を課した量子推定理論

従来の数理統計学における確率分布族に対するパラメータ推定問題では, Crame'r-Rao の定理(クラメールラオの下限、クラメールラオの情報不等式)により,局所不偏推定量の【共分散行列の達成可能な下界】が
Fisher 情報行列の逆行列】で与えられていた.

しかしながら量子論 では,推定量の非可換性のため,
対応する共分散行列の達成可能な下界は 一般には存在せず,
同様の議論は破綻している.
そのため,共分散行列 (に任意の重み行列をかけたもの)の対角和を最小化する推定量を捜すという 問題設定がしばしば採用される.
この最小値は達成可能な量子 CR bound と呼ばれ
一般には重み行列の取り方に様って下限を実現する推定量は異り,
その推定量を見つけることは非常に困難である.
このため,一般的な問題解決の見通しは現在のところ全く立っていない
応募者は,局所不偏性条件に加え,
推定量が単純測定(単位の直交分解)の凸結合で与えられるという
ランダム性条件を課した上で,上記の値を最小化する
という問題設定を採用し,その最小値を実現する推定量を構成すると共に, この最小値が,局所不偏性条件のみを課した場合の最小値と一致するための 必要十分条件を導いた.
さらにこの結果を適用することにより,スピン 1/2 系の任意の状態族に対し, ランダム性条件を満たすことを確かめ, 局所不偏性条件のみを課した場合の共分散行列の存在範囲を完全に決定した.

・純粋状態に対する量子推定理論

有限次元 Hilbert 空間上の純粋状態全体からなる状態族に対する推定問題を 漸近論的枠組みで論じた.
未知状態の独立かつ同一なサンプルが n 個準備されたとの仮定の下で, サンプル間の量子相関を利用した測定も含めて測定に関して最適化を行い, 最適解に対して平均2乗誤差及び大偏差型双方の意味で漸近的な誤差評価を行った.
続いて,サンプルの量子相関を利用しない量子測定に制限して最適化を行った.
具体的には,各サンプルに対して最適測定を行った上で, 各サンプルから得られた測定結果からデータ処理を行って 未知状態を推定する手法と先の最適解を比較した.
その結果,平均2乗誤差については,一次の漸近論では 両者が一致することが判明した.

・相対エントロピーの操作的特徴づけ

ヒルベルト空間上の2つの量子状態間が互いに非可換な場合,
観測により得られる確率分布間の Kullback-Leibler ダイバージェンスは,
常に2つの量子状態間に定義される梅垣相対エントロピーより小さいことが知られている.
近年,日合-Petz は量子状態の独立・同一分布を考えることにより, 拡大ヒルベルト空間上の2つの量子状態間に対して, それら2つの状態に応じて定まるある測定を考えることにより, 観測により得られる確率分布間の Kullback-Leibler ダイバージェンスが 漸近的に2つの状態の梅垣相対エントロピーを達成することを示した.
これを受けて筆者は,相対エントロピーの2つの引き数の一方の量子状態 のみに依存する測定により,同様の結果が成り立つことを示した.
この結果は,日合-Petz の定理の適用範囲を大幅に広げるものであり, 量子仮説検定等の問題を取り扱う上での基本的武器となることが期待できる.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?