ディア・エヴァン・ハンセン【Jシネマレビュー#11🎬】
SNS時代をテーマにしたブロードウェイミュージカルの待望の映画版🕺
現代チックな青春ミュージカルに感動と感心です!
↑あくまで個人の感想です
・内容 15
・演技演出 17
・視覚効果 16
・音楽 18
・エモーション 18
本作の監督は、「ワンダー・君は太陽」のスティーブン・チョボスキー、音楽は、「グレイテスト・ショーマン」のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールと観る前から期待していましたが、その期待に見事に応えてくれた作品であったなと感じました😌
特に、チョボスキー監督ならではの、誰も悪者にならない見せ方というのは巧いなと思います。
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"ついて良い嘘とダメな嘘"
ネタバレがあるのでご注意ください⚠️
本作を鑑賞したうえで、誰もが考えるのが、このテーマではないでしょうか?
エヴァンのついた嘘は、どちらかというと展開的には、つかざるを得なかった嘘とも言えるでしょうが、物事をうまく進めたり、人を喜ばせるための嘘というのは一定数あります。
彼のついた嘘も、はじめは全てが良い方向に進んでいきました。
ストーリー的に、その嘘がバレてということは既定路線ではあるのでしょうが、その嘘がバレずに終わることというのも世の中にはあります。
やはり、アメリカ的というか、嘘はノーというキリスト教的な考えが結果的に顕著にはなるのですが、こうした一見、嘘もOKと思わせるテーマの作品がアメリカで作られたというところには少し驚きも持ちました🇺🇸
"SNS時代の明と暗"
世界中のどんな人とでもつながる現代のSNS時代📱
その光と闇が、本作を通して強く見られました。
最も印象に残ったのは、コナーの追悼スピーチをしたエヴァンのシーン。
緊張のあまり、ステージ上で倒れてしまったエヴァンを前に、生徒たちはスマホを掲げ、その醜態を映そうとしました。
おそらく、あのままであれば、エヴァンの失態がSNSで拡散されて、より社会での生き方に苦労することとなっていたでしょう。
しかし、エヴァンは、思いを歌に乗せて、見事にスピーチを成し遂げます。
これが、場内を感動の渦へと巻き込み、SNSで拡散されて、世界中の多くの人の共感を得たのです👏
校内でも、誰かとすれ違えば、振り向かれるほどの人気者となったエヴァン。
冒頭での体育館で誰にも相手にされなかった彼の姿は、もうどこにもありませんでした。
SNSの発信力の強さは、まさにエヴァンの立ち位置を変えた光となっていました😊
一方で、後半のエヴァン自身が書いた手紙の流出と拡散や、マーフィー一家へ向けられた誹謗中傷の嵐は、SNSの闇を露呈させたかたちとなりました。
実際、本作はハッピーエンドで終わりますが、SNSでの叩きは非常に強かったでしょうし、エヴァンが再び孤立していく様子も柔らかくしか描かれていませんでした。
社交不安を抱えるエヴァンは、以前よりもさらに追い込まれていた可能性もありますし、立ち直っていく姿も細かくは描かれていなかったので、ここが内容面のマイナス要素とも言えるでしょう。
物語で描かれていた以上に、SNSの闇は深い気がします😥
このように、明とも暗とも働くSNSは、時には人を輝かせ、時には人を傷つけるのだということを、私たちは強く認識しておく必要があるはずです。
"誰も悪者にならない見せ方"
チョボスキー監督の作品の特徴とも言えるのでしょうか。
誰も悪者にならない作品の構成が、温もりを感じられて、私は好きです😊
主人公エヴァンの周りの人物の描かれ方について、考えてみましょう。
まずは、コナー。
彼が自殺してしまったことで、救いようがないようにも見えますが、彼もまた幼き頃に実の父親を失っており、同情の余地を残しています。
また、更生施設でギターを弾きながらリハビリに励んでいたという事実は、彼自身も必死に立ち直ろうとしていたんだという裏付けになっていました。
続いてゾーイ。
彼女は、兄や両親との溝や、遺族としての立ち位置など、かなり苦しみを抱えながら生きていました。
エヴァンとの出会いは、彼女自身を変えるきっかけになり、楽しいときも辛いときもありましたが、今後の人生に生きていくような、描かれ方でした。
生徒会長ばりに学校を引っ張るアラナ。
彼女自身も鬱を抱えているというのには、正直驚きました。
隠すのが上手いと彼女自身も歌っていましたよね。
匿名への羨望は、常に前に出て行動してきたからこその、想いでもあったかと思います。
エヴァンを理解しようと近づく姿に、グッときました。
エヴァンの母ハイジ。
愛する息子を想い、苦しみながらも母の手ひとつで大切にエヴァンを育ててきました。
エヴァンの心の傷は、元夫の家出が発端となっていたこともあり、母親としても責任を感じていたことが伺えます。
コナーの両親のシンシアとラリー。
シンシアの勘違いのエスカレートが、物語の展開を大きく揺さぶっていくのですが、息子を失った母親として、辛い想いを持っていたのは間違いありません。
エヴァンを第二の息子のように、愛おしく接していたのが印象的でした。
ラリーについても、気分屋な一面は見受けられましたが、キャッチボールの話など、印象に残るシーンもありました。
このように、登場人物の背景がきっちり描かれることで、誰にでも同情できる構成となっていました。
チョボスキー監督の「ワンダー・君は太陽」でも、主人公の周りの何人かの子供たちについて、家庭の事情や人間関係というものを映し出し、どんな子がいれど、彼らは決して悪者ではないということを表現していました。
カフェで1人お昼を食べるエヴァンを見た時に、「ワンダー・君は太陽」のオギーを思い浮かべた人もいたのではないでしょうか?
ディア・エヴァン・ハンセンでは、エヴァンの母親役をジュリアン・ムーア、コナーの母親役をエイミー・アダムスが演じていましたが、2人とも自然な演技で非常に良かったです🤱
幼少期のトラウマというのは跡を引くものなのでしょう。
さらに、SNSによって物事があらぬ方向に拡大してしまう怖さが、発信力の裏にはあるとわかりました。
ディア・エヴァン・ハンセンは、新時代のミュージカル映画の良作の1つに入ってくるはずです🕺