幸福であることが、苦しくてたまらない。誰かを愛し、愛されていることに、心が満ちていく感覚に、強い不安を覚えてしまう。それはきっと、喪失の予感。いつか失うと分かっているのなら、初めから手に入れない方がいい。生命に対する漠然とした不信、嫌悪、忌避、恐怖、畏怖……。生まれたくなかった。喜びが苦しみに変わると分かっているなら、満足が不満に変わると分かっているなら、生きることが死ぬことと同じであるのなら、生まれてきたくなかった。何も無くていい。幸福も、不幸も、人生も、宇宙も、何も無ければいいのに。まだ死なない。だから生きている。生きたいとは思わないのに、死なせてくれとも言えない。昆虫が生死に無頓着なのだとしたら、昆虫になりたい。まだ死ねない。だから生きるだろう。心臓を何かに掴まれたまま、苦しみの中で、生きるだろう。寒い。寒くて、寒くて、たまらない。
一つだけ知りたい。
死んだら、もう寒くないんだよな?