【随想】葛西善蔵『遊動円木』
とりとめのない思考……、流れる、泳ぐ、僅かな息継ぎで、薄目を開けながら……。
「仲間。同じことをして、同じことを楽しんで、同じことで笑う人達を、仲間と言うのなら、おままごとも、スポーツも、演劇も、音楽も、政治も、農業も、この世界の全部が全部、同じことをして、同じことを楽しんで、同じことで笑い、怒り、泣く、仲間だ」
そんな世界で、孤独になりたければ、どうすればいい、どうすれば、仲間から逃げられるんだ、どうすれば、仲間を忘れられるんだ、仲間の居ない、仲間を見ることも、考えることもない、孤独になりたい、なりたくて、孤独を知りたい、知りたくて、何もかも、初めからやりたいのに、仲間が居るんだ、仲間が邪魔になるんだ、仲間を必要としてしまう自分が、もどかしいんだ、苦しいんだ、ゼロにしようとする度に、消去しようとする度に、何もかも新しくしようと決意するその度に、仲間が増えて、複雑で、つまらない生活が、始まって、留守を任せて、留守を任されて、この意識は、他者を認識せざるを得なくて、他者なくしては、何も思考出来なくて、どうすれば、どうすれば独りになれる、どうすれば自分を忘れられる、頭の中に何かいる、常に何かを喚き続ける何かがいる、仲間だ、中にいる魔だ、虜り憑いて離れない、何処から来て、何処へ行く、見ろ、見る者を見ろ、狂っていく、狂っている、正常とは何だ、正常たれ、諦めて、思考を病めて、正常たれ、仲間になれよ、一つになれよ、もうやめろよ、溶けろ、落ちろ、流れろ、生まれるな。
それは勿論演じています。何かを演じなければ、一体どうして思考することが出来ますか。何もかも模倣です。オリジナルな模倣です。
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