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社説:ゲームゼミ連載企画やります/新作『大神』について/TGA審査員の何が問題か
メセナプラン向けに、ゲームゼミの社説をはじめます
・はじめます。
・数千~数万字の記事にするほどの情報はないが、一方で時流を考えると定期的な共有に値する断片的なアウトプットが、自分の記憶には埋蔵されている。
・それをどうにかしてアウトプットできないか考えた結果、古(いにしえ)のインターネッツ……具体的には個人ホームページに倣って箇条書きならサクッとできるんじゃないかと思うた(最近だとgithubとかscrapboxでよくみる)。
・メセナプランの特典記事として、短期的な実験として連載形式でやってみようと思う。
・幸いなことに、実はメセナプランの会員が半年で急増している。それもスカラープランから「昇格」するような形で。恐らく試しに安いプランで入ってみたが、存外価値ある記事をやっているようだから、支援してやろうと考えたのだろう。
・まことありがたいことで、彼ら彼女らに報いるのと同時に、ゲームゼミとしてもメセナの方を積極的に増やしたいという腹積もり。
・あと、ぶっちゃけ独りで企画から執筆、編集までやって、それも数万字の記事をやるとなれば、2~3週間はまるっと吹っ飛んでしまう。
・あまりにも効率が悪いのは否定できず、それらと平行しながら同時に安価で量産可能な製造ラインも確保しなければな、という危機感。
・今回は期間限定かつ初回限定で全部公開します。ゲームゼミは購読者の支援によって成立する、独立ゲームメディアです。関心を抱いた方は、ぜひ購読のほどよろしくお願いします。
新作『大神』について思うこと
・The Game Awardsで『大神』の完全新作が発表された。
・電ファミの平氏いわく、電ファミで一番バズったTGA関連の発表がこれらしい。
・説明不要だと思うが『大神』は2006年にカプコンからリリースされた作品。
・日本神話の神々っぽいキャラが、抽象化された中世日本を冒険するゲーム。当時としては印象的な和風グラフィックが評価されていた。
・Jini個人の評価を言えば、実はあまり好みではないゲームだった。「3Dゼルダ」をカプコンなりに解釈したゲームなわけだが、キャラや世界観はよく見ると軽薄な部分があるのは否めず、同じ年に発売された『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』と比べると、ダンジョンの設計の甘さも際立つ。
・『大神』を評価する人の声を否定するつもりはないが、まぁ「好きな人は好きなゲームだよね」といったところ。
・とはいえ、実のところ完全新作『大神』には期待をしている。
・まず今のカプコンがかなり調子がよい。新しい若手ディレクターを次々出してるし、既存のシリーズに囚われずゲームデザインから考え直せる、日本では希少なスタジオの一つ。
・次に、まさに2006年の『大神』と対立した任天堂が、実質的に「3Dゼルダ」が廃業していること。今の「ゼルダ」は『BotW』以降、オープンエアーの構造を続けており、以前の「3Dゼルダ」のような狭い分作り込まれたアクション・アドベンチャーから大きく舵を切っている。しかも「ゼルダ」の青沼Pはしばらくオープンエアーでやると宣言してる。
・要するに、この『大神』は『大神』それ自体のポテンシャルに期待しているというより、「3Dゼルダ」という王者不在のマーケットを狙って差し向けた刺客的な企画じゃなかろうか。
・オープンエアーはすばらしいのだが、3Dゼルダは決してオープンエアーの下位互換でも、またその逆でもない。3Dゼルダにしかない面白さは確かにあった。ただ3Dゼルダはどうしても半端な予算規模になるので、任天堂としては3Dゼルダはしばらくいいや、ということなんだと思う。
・カプコンはこういう中規模企画に強いイメージなので、この棲み分けはすごく面白い。
・むしろ気になったのは監督の人事。『大神』といえば神谷さんであり、彼なら確実に良質なものを仕上げてくれる安心感のある一方、今のカプコンの勢いを考えると若手のディレクターに挑戦させても面白い企画だったと思う。
TGAのGOTYについて思うこと
・The Game Awardsについて書いた。多分これを読めばだいたいの疑問は解決すると思う(が、それが周知されずに過大評価されていくのは変わらないだろう)
・要するに、TGAはアワードとしてほとんど魅力がない。まぁアワード自体そういうもんだってツッコミはあるにしろ、アカデミー賞にしろエミー賞にしろ、一定アワードとして市場やユーザー評価では拾えない批評的達成をしているのは事実なので。
・記事に書いた通り、TGAの問題とは要するにゲームメディアの批評能力の限界でしかないんだが、この「限界」を一番端的に説明すると、「メディアならもうちょっとゲームやってよ」という話に尽きる。
・あるゲームメディアが投稿していた「自分たちで決めたGOTYを振り返る動画」の中で、ライター2人と編集者1人が誰も『黒神話:悟空』をちゃんとやっていないと話していた。さすがにそれで「『黒神話:悟空』は10位です」というのは(他の編集者の意見があるといえ)モヤッとしてしまう。
・これは当該メディアへの批判ではなく、むしろ正直に「やってない」と話す方が誠実だと思うし、そもそも彼ら彼女らはTGAの審査員ではない。問題は、TGAの審査員に選ばれてる世界中のメディアのいくつが、『黒神話:悟空』を遊んでいたのだろうか(いや遊んでないだろう)ということ。
・ましてインディーゲームもやっているわけもなく。『Balatro』が選ばれたことに不満はないが、どう考えても「めっちゃ売れて、話題になったインディーを2〜3本だけやりました」という人たちが「ベストインディー」と選んだところで、そもそもあなたたちには『Balatro』しか選択肢なかったでしょとなる。
・当然、私とて話題作なのに遊び損じているゲームはいくつかある(有名どころだと『Neva』は気になってたけど積んでる状況)。クリアまで到達したゲームはもっと少ない。この話は大いに自省でもある。
・ゲームをやればやるほど良い、というゲームオタク的なマウンティングは「悪い」し、批評する能力が低い人が何本やったところで別に変わらないんだけど、少なくともプロの批評をする人々(TGA審査員)がGOTYという包括的な批評をするなら、せめてノミネート作品を全部プレイしておくべきだろう。
・よく考えたら編集者4人でクロスレビューをしているファミ通は、世界的にみてかなりえらいメディアなのではないか。
・今回は初回限定として全文無料公開しました。今後とも、ゲームゼミの支援をよろしくお願いします。(以下、感謝のメッセージです)
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