もてない男
学生時代、N先輩の合コン要員だったということを記事にしたことがある。
N先輩はいつも合コンの人数合わせにぼくを呼んでくれた。もちろん、ぼくごときがお持ち帰りできることなぞ皆目なく、いつもいいところはN先輩がもっていった。
ぼくもたまにはいい目に遭ってもいいのではないかと思ったりするものの、そういったことはついぞ起こらなかった。かりにもしもである、もしもN先輩が「俺と付き合ってくれたら、もれなく出雲太もついてくるよ」といわれて、喜ぶ女性がいたであろうか。
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石見の伝説に乙子狭姫(おとごさひめ)伝説があるという話を以前にした。
そこでは大山祇(オオヤマツミ)が巨人であることが判明した。しかし、古事記で大山祇(オオヤマツミ)といえば、別なところで決定的な働きをする。
それは「国譲り」が終わり、いよいよ高天原から瓊瓊芸命(ににぎのみこと)が降臨してくる場面である。本来ならすでに「国譲り」は完結しており、出雲神話と天孫降臨は関係ないが、話のついでとして語ってみることにする。
瓊瓊芸命(ににぎのみこと)が筑紫の東方にある高千穂の峰に降臨してくる。いったいなぜ日向の高千穂に降り立ったのか(筑紫でよいのではなかろうか)判然としないが、そこは高天原の理なので深くは追及しない。
高千穂の笠紗の御崎にて「これはよい国だ」と仰ると、そこで美しい乙女に出会う。それが大山津見(オオヤマツミ)の娘・木花佐久夜比売(このはなさくさひめ)であった。
瓊瓊芸命(ににぎのみこと)は木花佐久夜比売(このはなさくさひめ)に「兄弟はいるか?」と問うと、姉の石長比売(いわながひめ)がいるという。そこで瓊瓊芸命(ににぎのみこと)は木花佐久夜比売(このはなさくさひめ)に求婚を申し出ると、大山津見(オオヤマツミ)に相談してみるという。
ここからが問題である。大山津見(オオヤマツミ)は(よせばいいのに)木花佐久夜比売(このはなさくさひめ)と一緒に石長比売(いわながひめ)ももらってくださいと申し出る。残念ながら姉の石長比売(いわながひめ)はたいへん醜かったという。瓊瓊芸命(ににぎのみこと)は木花佐久夜比売(このはなさくさひめ)だけを娶り、石長比売(いわながひめ)を大山津見(オオヤマツミ)のもとに帰してしまう。
これを嘆いて大山津見(オオヤマツミ)は「二人をセットでもらっていただけば、子孫繁栄しましたでしょうに」と訳の分からないことを語りだす。木花佐久夜比売(このはなさくさひめ)だけを瓊瓊芸命(ににぎのみこと)が娶ったために、今日に至るまで天皇の寿命は短くなったという。
どゆこと?
悪いけど、大山津見(オオヤマツミ)さん、あなたよくないですよ。石長比売(いわながひめ)の気持ちを考えたことありますか。どんな気持ちで石長比売(いわながひめ)が木花佐久夜比売(このはなさくさひめ)とともに瓊瓊芸命(ににぎのみこと)のもとへいったことでしょう。ぼくは石長比売(いわながひめ)に同情しちゃうなぁ。
石長比売だけを祀る神社は、
が挙げられる。
せめてぼくに力があれば、出雲にも石長比売の神社を建てて祀ってあげたいところである。その後、石長比売がどうなったのか「古事記」には書いていないが、どこか別の男性と一緒になり、ひっそりとつつましく暮らしてくれていたらとぼくは願う。
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N先輩は、当たり前のことであるが、けしてぼくのことを添え物にして彼女を狙うようなことはなかった。N先輩にとっては、ぼくのことなぞ魚のつまくらいにしか思っていなかったのかもしれないが、ぼくにもつまの矜持がある。
たまにはもてない男のつまらない話もいいではないですか。
こちらでは出雲神話から青銅器の使い方を考えています。
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