胸が張り裂ける思い

 こんばんは、出 雲太(いず うんた)です。

 最近、「東京卍リベンジャーズ」のような過去に戻ってやり直す話が多いような気がします。過去に戻ってやり直したいこと。誰もが一度は思うのかもしれませんね。

 僕は若い頃、「人生、反省はしても後悔はしない」と心に決めて生きてきたつもりでした。しかし、実は何もわかっていなかったなぁと今では思うのです。

 あれは、次男が保育園の頃の出来事。

 夕食に家族で食卓を囲んでいるとき、そこに熱々の中華スープが並べられていました。三男に手を取られていたので、次男の行動をよく把握していなかったのもよくなかったけれど、そのときあの出来事が起きたのです。

 次男が中華スープの入ったお椀をひっくり返してしまったのです。

 悪いことに、その中華スープは次男の太ももにこぼれてしまいました。大やけどでした。

 次男は「熱い、熱い、いたい、いたい」と泣き続けました。どうなだめようにもとまりません。救急で病院に向かう最中もずっと泣き続けました。あの時ばかりは、変われるものなら変わってやりたいと思いました。お椀をひっくり返すのも見えていたのに、どうして体を張ってでも止めてやれなかったのだろう。あの時、はじめて胸が張り裂ける思いとはこういうことなのだろうかと思いました。

 病院から帰るころには泣き疲れて、寝てしまいましたが、翌日も痛みは続きます。しばらくは痛々しい日々が続きました。病院の先生は、治っても治癒した部分はケロイド状になり、成長に伴って痛みが発生するかもしれないといわれました。歩行に支障を伴うかもしれないともいわれました。

 もし、過去に戻れるなら、僕はこの日の夜に戻りたいと、今でも思います。


 出雲神話には、兄弟神に嵌められて、大やけどを負って死んでしまう大国主命の物語が納められています。

 そのとき母神は泣き悲しんで、高天原の神産巣日神(かみむすび)のところに出向き、𧏛貝比売(きさかひひめ)と蛤貝比売(うむかひひめ)をお借りししてきて、治療薬を作ってもらい、大やけどした患部に薬を塗って、大国主命を甦らせます。

 ちなみに高天原で出雲に比較的協力的な神様・神産巣日神(かみむすび)。別名を神魂命といい、松江市大庭町に神魂神社として祀られています
。本殿は最古の大社建造物としても有名です。

 また、𧏛貝比売(きさかひひめ)と蛤貝比売(うむかひひめ)もそれぞれ、加賀神社(島根県松江市島根町)と法吉神社(島根県松江市法吉町)に祀られています。


 僕も次男が大やけどしたとき、

「𧏛貝比売(きさかひひめ)と蛤貝比売(うむかひひめ)を呼んで!!」 

 と叫べばよかったかもしれないけれど、きっと妻に殴られていたことでしょう。



(後日譚)

 次男は今では高校三年生になり、やけどの跡もありますが、歩行に不自由することなく、元気に学校に通っています。

 次男の名前は大国主命にあやかってつけたのですが、思えば大国主命のおかげでこの程度で済んだのかもしれません。

 ですが、やけどするとこまで似なくても、と父は思ったりするのでした。




こちらでは出雲神話から青銅器の使い方を考えています。

 よかったらご覧ください ↓ ↓ ↓


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集