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マイベスト本2024
この記事は「積読チャンネル非公式 Advent Calendar 2024」の14日目の記事です。昨日は降水確率さんの「読書BGMとしてのアンビエントミュージック」、明日はくろしまさんの記事「昔は本が読めなかった話〜母は積読チェンネル〜」です。
時々は文章を書くことを習慣にしたいなぁ…と思いつつ、今年も全然書けなかったぜと反省していたところに、最近入ったコミュニティ「積読サロン」でアドベントカレンダーの書き手の募集があったので、えいやと参加してみました。
自分の記録がてら、年末ということで、2024年に読んで良かった本を5冊紹介したいと思います。
新書部門 「はじめてのスピノザ 自由へのエチカ」國分功一郎
國分功一郎先生と言えば「暇と退屈の倫理学」
……はちゃんと読み切ってないんですが、「哲学の先生と人生の話をしよう」が面白くて、なんか他に國分先生の本読みたいな〜と思って手に取ったのが「はじめてのスピノザ 自由へのエチカ」。
挫折するかもしれないがと軽い気持ちで読み始めたら、するっと最後まで読めてしまった。
たくさんの哲学者がいて、たくさんの哲学がある。それらをそれぞれ、スマホやパソコンのアプリとして考えることができる。
(略)
ところが、スピノザ哲学の場合はうまくそうならない。なぜかというと、スピノザの場合、OSが違うからだ。頭の中でスピノザ哲学を作動させるためには、思考のOS自体を入れ替えなければならない
「はじめに」で、スピノザが生きた十七世紀は歴史上の大きな転換点であり、スピノザの哲学は「ありえたかもしれない、もうひとつの近代」を示す哲学であるとも言っている。
それくらい、物事の考え方根本からの話をしていて、それが自分に合っていて面白く読めた。
自然界にはそれ自体が「善いもの」「悪いもの」はない。善悪は物事の組み合わせで決まる。
自分に与えられた条件のもとで、自分の力をうまく発揮できるとき、人は喜びに満たされる。そして、その状態こそが「自由である」ということ。喜びをもたらす組み合わせの中にいることが、うまく生きるコツ。
人は生まれながらにして自由、ではない。人は自由になる、あるいは自らを自由にする。
スピノザの倫理学は、実践することを求める。色々試してみて、うまく自分に合う組み合わせを見つけることが重要。
この「自由」観が、自分にとってはすごくしっくりきて。
神とか自由意志の捉え方も東洋哲学っぽいところだったり、精神と身体の関係性も池谷裕二先生の本っぽいところもあったなぁ。
行政の仕事に携わっていると、同じ地域に住んでいる人でも、生い立ち・状況・考え方、全部全然違う、ということを実感させられる場面が多々ある。
その中で一律の幸せの形というのはなくて、それぞれがスピノザ的自由に近づくことが大事なのかなとか思ったり。
哲学関係の本って「ふーん」って思ってそれで終わり、ってなりがちだけど、スピノザの考え方はすごく実践的で、行動するやる気や勇気が出てくる。まさに自由"への"エチカ。
アラン「幸福論」も好きなんですが、アランもスピノザを継承してるんですね。
國分先生の解説もわかりやすくて、この本は今後生きていく上での指針になるなと感じています。
エッセイ部門 「いのちの車窓から2」星野源
いきなりですがわたし、星野源の、大ファンで。
どこが好きなのかなどは語りだすと長くなるのでここでは割愛しますが、好きになったきっかけは、2016年に夏フェスでたまたまライブを見たこと。
そこからラジオで毎週星野源のオールナイトニッポンを聞きはじめ、彼の音楽・俳優・執筆活動を日々チェックし続けている。
で、「いのちの車窓から2」で綴られているのは、2016年の年末から2024年にかけてのエピソード。つまり、ちょうど自分が源さんのファンになって彼を追いはじめてからの期間。
1つ1つの文章を読んでいると、自然と自分の8年間も一緒に思い返される。
ラジオで聞いていた話、こんな想いがあったのか。
2017年のライブ、このとき仕事がめちゃくちゃ忙しいときでチケット当選したのに泣く泣く手放したんだった。
「うちで踊ろう」や源さんのラジオに、コロナ禍1人の家で心が助けられたこと。
2021年、自分が結婚を決めた時期に源さんも結婚を発表して、倍嬉しくなったな。
とか。
エピソードの中にはいくつか源さんと奥さんとの話も入っているのだけど、どれもめちゃくちゃ良くて。前から好きだった曲「喜劇」が、この本を読んでから、自分にとっても家族のテーマソングになった。
本というより星野源と自分の話になったけど…きっとこれから何度も読み返す大切な一冊。
源さんの文章、日常の切り取り方は、ファンじゃなくても面白く読めるはず。日々悩みながら足掻きながら生きている、同じ一人の人間なんだなと感じられます。
たった独り。やはり、周りに人がいようがいまいが、人間はずっと独りだという思いは変わらなかった。誰にも預けることができない、かけがえのない個をわたしは持っている。だからこそ、同じく孤独である誰かと手を繋ぎ、時を分かち合う。家族や仲間と過ごす。わたしたちは一つにはなれないし、分かりあうことはできない。それをわかっているからこそ、私たちは手を取り合うのだ。
ノンフィクション部門 「母という呪縛 娘という牢獄」
いずれ、私か母のどちらかが死ななければ終わらなかったと現在でも確信している
発売当初からずっと気になっていて、けっこう前に買っておいていたけど、気持ちに余裕があるときに読まないといけない本だろうなという予感はあって、仕事が落ち着いたつい先月読んだ。
実の母を殺し、遺体をバラバラに切断して遺棄した娘。
それだけ聞くと、なんて残酷な事件だと思う。
でもなぜ、娘は母を殺さなければならなかったのか。それを記者である著者が、娘本人との交流も通して丁寧に追った本。
娘は、医学部受験のために9浪していた。娘は、母に支配されていた。
何度も絶望して、何度も逃れようとして、逃してくれなくて、とった最後の手段。
途中途中で、母と娘のLINEのやり取りが載せられていて、これが読んでてもうほんとに辛くなる。
「あんたが諸悪の根源だ」
「そうですね。わたしが諸悪の根源です。申し訳ございません。」
娘のほうは自分と同年代。読んでいると感情移入して苦しくなってしまう。
でも、過去が紐解かれていく過程で、母親も、はじめからこんな異常な執着を見せる人ではなくて、長年のさまざまな積み重ねでこうなってしまったんだろうなと感じさせられる。
「どうかフィクションであってくれ」と願いながら、辛い、やりきれない思いで満たされながら、でも読むのをやめられなくて、数時間で一気に読んだ。
こんなの異常な状況、かもしれない。でも家族だからこそ、距離感をうまく取れないのは、わかる。
家族だから、家族なのに。家族ってなんだ?と考えながら読みました。
小説部門 「傲慢と善良」辻村深月
恋愛ミステリ、とのことですが婚活や結婚がテーマの小説。
主人公たちはマッチングアプリで出会い、結婚目前というところで女性の方が失踪する。彼女を探すため、過去を辿っていくことになり…というお話。
とにかく現代のアラサーの婚活周りの心の動きがめちゃくちゃリアル。
マッチングアプリで夫と出会って数年前に結婚した自分にとっては、わかりすぎて辛いというか、うっとなるところがめちゃくちゃあって。
「婚活につきまとう、『ピンとこない』って、あれ、何なんでしょうね」
「ピンとこない、の正体について、私なりのお答えはありますよ。」
「何ですか」
「ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です。値段、という言い方が悪ければ、点数と言い換えてもいいかもしれません。その人が無意識に自分はいくら、何点と付けた点数に見合う相手が来なければ、“ピンとこない”と言います。私の値段はこんなに低くない、もっと高い相手でなければ、私の値段とは釣り合わない」
「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、みなさん、ご自分につけていらっしゃる値段は相当お高いですよ。ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにしてみる、みなさんご自身の自己評価額なんです」
もう名言がめちゃくちゃ出てくる。タイトルとなるフレーズが出てきたときは、「う、うわぁ…」しか言えなかった。
文庫版の解説を朝井リョウが書いているけど、「何者」の婚活版という感じがした。就活も婚活も似ているもんな。(就活も苦労したしどんぴしゃ世代だったので何者もめちゃくちゃ刺さった。)
そういえば、「母という呪縛〜〜」に続きこの小説も娘に介入しがちな母親が出てくる。現代でけっこうある形なのかしら。
紆余曲折を経て、主人公の2人が辿り着くところが好きです。希望がある終わり方だなと思う。
なぜかこれまで辻村深月さんの本に手を出してこなかったんですが、「傲慢と善良」で凄さを思い知らされ、そこからいくつか読み、無事にハマりました。
あの小説で出てきたキャラがここにも…!という仕掛けが嬉しい。
漫画部門 「螺旋じかけの海」永田礼路
遺伝子操作が産業として発達した、近未来のお話。
この世界では、異種キャリアというヒト以外の動物の遺伝子を一部もつ人が存在して、差別を受けている。
遺伝子操作をする生体操作師である主人公のもとには、訳ありの者たちが次々訪れてきて…というようなSF漫画。
何を隠そう積読チャンネルの動画を見て読みました。
ヒトか、そうでないかのボーダーラインはどこにあるのか。
生命にどこまで手を入れることが許されるのか。
そんなことを考えさせられる。
SFなんだけど、絶妙なありそう感。人間は醜いね。
山羊のキャリア、キイラさんの話が好きです。
基本一話完結式で進むし、全5巻で読みやすい。電子でも紙でも一式買ってしまいました。
おわりに
子どもの頃から読書は好きですが、読書筋力が衰えてきたというか、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」に書いてあった通りで働いてから全然読めなくなっていました。
2022年あたりから「ゆる言語学ラジオ」にはまりそこで出てきた本を読みたくて、少しずつ読めるようになってきて、今年は「積読チャンネル」が始まり、また色んなジャンルの本に出会い読書の喜びを取り戻すことができました。
話し手のお二人も読んだ本の内容を忘れるとか途中で挫折してるとかよく話してるけど、全部読みきれなくても興味を持っていいんだ、読書って言っていいんだ、とハードルが下がって気が楽になる。
感謝を課金で示すためにもついオンラインコミュニティ「積読サロン」に入り、さらに面白い本をたくさん知り、順調に積読が増えていく今日この頃です。
ということで、来年も元気に読書・積読していこうと思います!
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。