12 テストも成績もない学校って、大丈夫?
自分にとって本当の学校。
小学校3年生から、毎年夏休みに2週間通うようになった、特殊なバイリンガル教育の学校でのサマースクール。
5年生まで3回通い、さらに5年生の秋からは、月に1〜2回行われる土曜スクールという半日のプログラムにも参加するようになりました。
そのうち、娘は自分の本当の学校はこちらだと思うように。
テストも教科書もなく、人種や学年の垣根もなく、自由に深い学びができる学校。厳しいルールに従わせたり、怒鳴ったりすることもない、優しくておもしろい、日本人や外国人の先生たち。
個性豊かで、人と違うからといっていじめたりすることもない、のびのびした子どもたち。
「この学校に入りたい。
でも今すぐじゃなくて、中学校からにしたい。
みんなみたいに、英語がペラペラになりたいから。
それまでにもっと英語が話せるように、ラジオで頑張る。」
娘はそう言って、熱心にNHKの「ラジオ英会話」で勉強をし続けていました。
本人の決意は固まっていますが、あとは親がどうするかです。
問題はこの2つ。
1 年間180万円の学費をどうするか。
2 文科省に認められていない特殊な学校に進学して、大丈夫なのか。
一人っ子なので、180万円× 6年間、頑張れば何とかできるかもしれない。
ただ家計が相当厳しくなり、物を買ったり遊んだりはすべて我慢しなきゃいけなくなる。
でも、その先のアメリカの大学は、もっとかかるのでは?
というか、そもそも大学に進学できるの?
創立からまだ10年ほどで、高校もできたばかりの学校。
グラウンドもプールもないこの小さな学校で、本当にいいのか。
そんな不安や疑問を抱えながら、とりあえずその学校で行われている学校説明会やセミナーに、本人と一緒に通い続けました。
なぜテストや成績がないか。
テーマごとのセミナーでは、その学校のバイリンガル教育や特殊な教育法について、アメリカ人の校長先生や日本人の先生から、毎回詳しい説明がありました。
カナダのバイリンガル教育や、スコットランドの教育、のちに姉妹校になるアメリカのある学校の教育、マルチエイジ教育(3学年で1クラスの複式学級)など、世界のさまざまな教育法を取り入れ、日本ならではのやり方で行っていること。
学校としては文科省認可ではないけれども、日本の大学に進むことはできること。
日本や海外の大学進学など、それぞれの子の希望に合わせた進路指導を行っていること。
話を聞けば聞くほど興味深く、これこそ自分が求めていた教育じゃないかという気がしてきました。
私は自分が受けてきた教育に、高校生ぐらいの頃からすごく疑問を持っていたんです。
ただ暗記して知識を詰め込み、テストでいい点を取るための勉強。
大変な受験勉強をして入った大学でも、少人数のゼミ以外は、それまでと同じように先生の話を聞いてノートを取るだけの授業。
これがほんとの教育ってものなの?って。
それがこの学校では、先生が教えるより生徒自身が学んでいく、いわゆるアクティブラーニング方式で、しかも体験学習が中心。
同じクラスで、年齢の違う生徒同士が教え合うことで、教える方も教えられる方も学ぶ。
一人ひとりの子どもたちが自分の能力を伸ばし、コミュニケーション力や思考力、創造力など、グローバルな社会を生き抜いていくための力をつける教育をしている、というのです。
テストや成績がないのも、まだ発展途上の子どもたちをいちいちペーパーテストで評価して何になるのか、という考え方。
(ただ、他校の高校受験をする際や、大学受験の際に受験先から成績が要求されるので、中学3年からは一応成績がつけられるそう)
日ごろから、何をどこまで理解しているか本人と確認しながら一人一人を見ていれば、テストで測る必要はない。
だからこそ、1クラスは20人以下。
しかも、担任の先生は日本人の先生と英語のネイティブの先生の2人。
そのため、十分な施設がないわりに、授業料が高くなってしまう。
こんな丁寧な教育なら、たとえ大学に進学できなかったとしても、中学・高校の6年間で社会を生きていくための大事な力を身につけられるんじゃないか、と思えます。
ぜひこの教育を受けさせてみたい、でも、でも・・・。
その迷いを断ち切る日が、娘が5年生の終わり頃に突然やってきました。