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星と金属
冬の季節風がかき集めた
記憶の中から
端がまくれ上がった手記を
一冊見つけた
葉を落とした欅が
毛細血管のような枝を
空の曲面に張り巡らせていた
優しい言葉をかけてくれる人が
優しい人ではない
あなたにはもう何も言うことはない
そう言われた
取り返しがつかないことを数えあげてみる
忘れてしまった悲しみと
忘れられない悲しみの間を
君は風のように
吹きぬけてゆけるか
あしたの時刻が懸けられている
美術館の壁
順路の矢印が
生命線に刺さっていた
生涯をかけて夢に輪郭を与えなければ
生きる価値がない
地下一階の工房では
宝石職人が
熱と闇の工程を繰り返して
新しい星と金属の組み合わせを
こつこつ鍛えているというのに