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柚木麻子作品に出てくるヒロインがかっこいい

ここ1ヶ月、柚木麻子氏の作品にハマっている。

あまからカルテット、マジカルグランマ、本屋さんのダイアナ、伊藤くん A to E、踊る彼女のシルエット、その手をにぎりたい、ランチのアッコちゃん、わたしにふさわしいホテル・・・(らんたんと3時のアッコちゃん、マリは素敵じゃない魔女も購入済みだ。読むのが楽しみ。)

彼女の作品に出てくるヒロインたちにすごく惹かれる。理想と現実を行き来する感じがすごくリアルで共感する。

柚木麻子氏の作品は大学生の時に数冊読んでいたけれど、29歳になった今読むと感じ方がまた一味違ってくる。リアルに突き刺さる感じ。作品に出てくるヒロインたちは30代前後のアラサーが多い。そして、彼女たちが経験する失敗は私にも身に覚えがあるものであったり、彼女たちの価値観は私の中にもあるもだったり、とにかく胸に突き刺さってくる。

最終的には小説にふさわしいドラマチックな展開があるのだけれど、根本的な考え方だったり今まで経験してきたものだったりは、そんなに自分と変わらなかったりする。ということはいわゆる「普通の女性」に通ずるものが作品のキャラクターの根本に流れてるんだと思う。小説的な非日常感はありつつも、彼女たちの考えることや周りからの反応、価値観には現実を生きる私のような「普通の女」に共通することがたくさんあって、そこがすごくリアルだから柚木氏の作品はこんなにも人気なのかなぁ、なんて思う。

あと、女性軽視や性加害に立ち向かうヒロインに爽快感を覚えるというのもある。私自身、20代後半になってからそうしたことを考え自覚するようになったけれど、学生の時〜20代前半の時には気づいていなかったことが多い。でもこれは「気づいていなかった=不快ではなかった・そうした体験がなかった」というわけではなくて、「そういうものなのかなと社会に受け入れさせられていた」というのが近い。

痴漢、盗撮、セクハラ、性差別的な発言、同意のない性行為。今になってそれらはおかしいことで糾弾されるべきことだと分かるけれど、学生の時の私は「そういうもの」として不快感に蓋をすることが少なからずあったし、それは私だけではないと思う。

学生時代に盗撮や痴漢被害に遭った友達は何人もいる。ずるい男性に騙されて性行為に至った友達だっている。そうした話って実はかなり多い。でも、「自分が我慢すればいい」「不注意だった自分が悪い」といった不快なことに蓋をしている若い女性は多い。私もそうだったし、周りもそうだった。

でも、今30歳に近づいて少し大人になった私は思う。「そういうもの」で片付けてはいけない。心のざらつきや不快感はたしかにそこにあるし、無視するべきものではない。「たいしたことじゃない」と自分に言い聞かせるものでもない。

柚木麻子氏の物語を読んでいると、私が過去に感じて言語化できなかった感情が代弁されているような気持ちになる。あれはおかしいことだった、あれは腹を立てるべきことだったと感じることが多々思い浮かぶ。

彼女の物語はフィクションだけど、彼女たちに向けられる言葉や態度はノンフィクションだ。だからこそ、ヒロインが最後に自分なりのハッピーエンドを迎えるのが嬉しいし爽快だし、なんだか誇らしくなる。


また数年経って、きっとまた彼女の作品を貪るように読み返すと思う。10年前に読んだ時はわからなかったことが、今わかるようになった。だから次読んだ時は、また今とは違った読み方ができるのかもしれない。

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