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【ネタバレなし書評】自分ならどこまで生き残れる?

ネタバレなし書評第2弾。
好評につき…とかではなく、ただただ読んだ本が面白すぎて、勢いに乗って書いてしまった。

前回紹介した本はこちら。

上記の本もなかなかにホラーでグロテスクな内容だったのだが、今回の本もなかなかのもの。

簡単に言うと「デスゲーム」というジャンルで、人が次々に死んでいくような物語。
「人狼ゲーム」や「バトル・ロワイアル」「悪の経典」などのタイトルにビビッと来る人には、絶対に読んでもらいたい作品だった。
それが、こちら。

「このクラスには『いじめ』がありました。それは赦されるべきことではないし、いじめをした人間は死刑になるべきです」
とある女子高の卒業式直前、担任教師による【特別授業(ゲーム)】が始まった。突如開始されたデスゲームに27人全員が半信半疑だったが、余った生徒は左胸のコサージュの仕掛けにより無惨な死を遂げる。
自分が生き残るべき存在だと疑わない一軍、虚実の友情が入り混じる二軍、教室の最下層に生息し発言権のない三軍――。

本当の友情とは?
無自覚の罪によるいじめとは何か?
生き残って卒業できるのは果たして誰か?

《あらすじ》より引用

【ルール】
・二人一組になってください。

・誰とも組むことができなかった者は、失格になります。その回の失格者が確定したら、次の回へと続きます。

・一度組んだ相手と、再び組むことはできません。

・残り人数が偶数になった場合、一人が待機となります。

・特定の生徒が余った場合は、特定の生徒以外全員が失格になります。

・最後まで残った二人、及び一人の者が、卒業式に出席できます。

・授業時間は60分です。

作中より引用

小説のタイトル通り、ゲームに生き残るためには「二人一組になる」ことが必須条件となる。
私はこのルールが、心底憎いと思った。

学校生活において、「三軍と呼ばれる立ち位置であった人」、「スクールカーストという言葉に一度でも恐怖を覚えたことがある」。
そんな人達を絶望に陥れる言葉が「二人一組になってください」なのだから。

作者の木爾チレンさんは、同じ女性ということもあり、女子高生特有の世間知らずな面や、清々しいほどの自己愛、悪意のない他害を描くのが抜群に上手いと思った。
それはもう、あの楽しくなかった学生生活をもう一度追体験させてもらえるほどには。

たった30人ほどしかいない教室という狭い空間が全てだったあの頃。
そのたった一つしかない「全て」の中で、独りぼっちになるということは、絶望を意味する。

私はこのデスゲームに参加したところで、生き残れる自信は全くない。
スポットライトの当たらない下の上あたりのカーストで、最底辺の人間を見下しつつ、最上位の人間とは話すことすらできない、そんな位置付けにいる、何の面白みのない人間だったからだ。

そんな人間がどこまで生き延びることができるのか。私はこの物語を通して、自分の存在価値を認識させられたような気がした。

きっとこの本を手に取る人たちは、同じようなカーストだった生徒が多いのではないだろうか。
中学生の時、高校生の時。
いつもあぶれていた「あの子」の存在に気がつきながらも、見て見ぬふりを続けていた私たち。

1クラス分の人生を見届けた今でも、
「全員の手を取れる人になろう」
ではなく、
「このデスゲームに巻き込まれなくて良かった」
と思ってしまうのは、人間の性なのだろうか。


ちなみにこの本を読んでいる時、リアルタイムでこんなことを呟いていた。

こういう本に出会えると、本当に嬉しい。
これだから、読書やめらんない。

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栖山 依夜
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