秋の純情バイク旅 相棒鉄馬と心の自由を求めて
秋のバイク。
秋はバイクで走るのに一番気持ちがいい季節。
寒すぎず、暑さすぎず、その絶妙な気候は、日常の束縛から解きつ放たれる瞬間をもたらす。
心地よい気温に、何も考えずただ走りたくなる。
訳もなく、無料の高速(バイパス)に乗って、強風に耐えながら走ってもいい。
緑豊かな山道をのんびり流しながら、透き通った気持ちいい風を浴びたっていい。
川沿いの道を「あーっ」と叫びながら、冷たい風を受けて駆け抜けるのもいい。
あるいは、飛行場の周りを映画のワンシーンのように、飛行機を追いかけながら、ぬるい風に包まれて走るのもまた楽しい。
そこに心の自由がある。
でもね、私の鉄馬ちゃんにまたがって、高速で走っているとある現象が起きる。
それはね、
「股開き」笑
風がすごすぎて、このような乗り方のバイクだと、前から受ける風圧で股が開いてきちゃうんです笑
それを股力で封じ込める笑
それもまた、楽しいのですが😆
ここからは、心の自由を求めて埼玉の秩父に、相棒鉄馬と出かけたときの過去のお話。
私の住まいから、秩父までは100km以上はある。
しかも下道でドコドコ行くのが好きなので、その距離はもっと伸びるだろう。
鉄馬に跨る準備を済ませ、朝7時くらいに家を出る。
心躍らせながら、鉄馬のハートに火を灯し、青空の下で風を感じつつ、のんびりと楽しみながら走り出す。
頭の中は、bon joviの「Wanted Dead or Alive」が流れている。
下道をのらりくらりと走り続け、陽射しを浴びながら秩父に着いたのはちょうどお昼頃だった。
まずは風を受け続けて疲れた体と、空いたお腹を満たすためにお食事休憩。
腹ごしらえが終わると、また心地よい風を感じながら気ままに走り出す。
しばらく進むと、緑に囲まれ澄みきった川が目に飛び込んできた。
綺麗な川だ、少し降りてみよう。
ウェスタンブーツを脱ぎ、ひとときの水遊びに浸る。
周囲には誰もいない。
静寂の中で川の緩やかな流れを眺めながら
また、川の穏やかな音を聞きながら
爽やかな空気を深く大きく吸い込む。
贅沢な時間がゆっくりと流れ、嫌なことはすべて消え去る。
心の奥深くまでリフレッシュされる瞬間。
柔らかい陽射しに心が満たされたら
さあ、もう一度走りだすぞ、相棒。
しばらく走っていると、ダムが見えてきたが、何やら大渋滞。
車が全然動かない。
せっかく貯めた、晴れ渡る爽やかな心がまた徐々に曇り始める。
鉄馬のハートがリズムよく刻む音は、次第に乱れ、歯切れが悪くなっていく。
まるで不満を漏らすかのように、ご機嫌斜めな音が響き渡る。
いかん、熱ダレを起こしてしまう。
だめだ、抜けよう。
他のライダー達も同じような考えだったのか、一斉に車の間をすり抜け始めた。
車の脇をすり抜け、しばらく爆音を奏でながら道を抜けていくと、大きな駐車場と背後にそびえる大きな山が目に飛び込んできた。
その駐車場に鉄馬を停めると、辺りはたくさんの人で賑わっていた。
二瀬ダムからこの駐車場まで2時間もかかってしまったが、この賑わいに触れることで少し疲れが和らいだ。
だが、長時間鉄馬に乗っていたため、お尻に血が通っている感覚がない。
お尻がどっかに飛んでいってしまったような感覚だ。
しばらくお尻の感覚を戻すため屈伸運動。
看板には三峰神社と書いてある。
ほうー、ここが有名な三峰神社かー。
三峰神社は関東地方では最強のパワースポットとして大変な人気がある。
まずはこの広い駐車場を抜けねばと階段を登り、色々な建物を通り過ぎ、ちょっとした坂道を登ると鳥居が姿を現した。
おほほーい、立派な鳥居だ。
なんと珍しい、三ツ鳥居ではないか。
そしてこの鳥居を護っているのは狛犬ではなく立派なオオカミだ。
昔の秩父山は、今は絶滅してしまったニホンオオカミの一大生息地でもあったようだ。
今でもこの神社を護っているんだな。
ははー、ありがたや〜🙏
まずは、このニホンオオカミにご挨拶をすませて、鳥居を潜る。
三ツ鳥居の潜り方は難しいのだが、まず中央から潜り、そのまま抜けたら、左の鳥居を後ろから潜り、また中央を潜り、今度は右を潜り、そして、中央から抜けていくようだ。
8の字をイメージするとわかりやすい。
でも、たくさん人がいたのにそれを行っているのは、私と学生ぽい女子組だけだった笑
鳥居を抜けていくと、緩やかな山道が続いていくと思って進んだら
普通に山登りみたいになってきた。
こりゃあ、ウェスタンブーツきついぞー。
腰にぶら下げた鉄馬の鍵がジャラジャラ音を立てている。
それほど揺れ幅が大きい坂道。
だが、ここまで来て後には引けねえ笑
一生懸命山道を登ると、やがて緩やかな道になり、気持ちの良い爽やかな風を感じると、ふと目の前に滝が姿を現した。
清浄の滝だ。
昔はここで身を清めてから、三峯神社へ向かう習わしがあったようだ。
涼しい風が心の中を優しく吹き抜け、疲れた身体を冷たい飛沫がそっと癒してくれる。
少しこの場に留まり、滝を見つめながらぼんやりと過ごす。
心に涼やかな気持ちが満ちていく。
さっ、もう少し歩くか。
清浄の滝を後に、ジグザグの山道をひたすら登りつづける。
傾斜がきつくなってきた。
かれこれもう1時間程歩いてるが、なにやら古びた建物が目に入った。
看板には薬師堂跡と書いてあるな。
薬師堂跡は、かつて三峰神社を参拝する人々のための休憩所として利用されていた。
また、薬師如来様の堂が併設されており、病人の看護も行われていたとされている。
この場所の歴史を知ることで、当時の情景を想像するのもまた1つの楽しみだ。
さらに歩みを進めようとしたが、ん?待てよ?
そう、順序よくルートをご紹介してはいるが、実は私は逆走していたことに気づいたのだ笑
なんて方向音痴なんだ。
どんどん拝殿から遠ざかっていた笑
少し暗くなってきたので急いで戻る。
奥宮遥拝殿からの一望は圧巻だった。
そこからまた檜の林道を小走りで抜け、今度は灯篭が並んだ美しい階段を下っていくと、随神門という大きく立派な門が現れた。
随神門は、なんと、高さが16メートルもあるそうだ。
荘厳で美しいその門は、まるで威厳を備えた武将のような存在感を放ち、その大きさに圧倒される。
その装飾の美しさにただ立ち尽くし、この門を眺めているだけでも心が満たされる。
この門もやはりニホンオオカミが護っている。
ニホンオオカミが好きになった。
そして門の両脇には弓矢を持った像が、この門を護っている。
お願いだから、ネバーエンディング・ストーリーのスフィンクス像みたいに、レーザー撃ってこないでね笑
かつてここには、屈強な仁王像が立ち、力強い姿でこの門を護っていたという。
この門を潜り、しばらく歩くと、ようやく拝殿前に到着した。
長い行列ができていて混雑しているが、見事な装飾を眺めていると、全く苦に感じなかった。
拝殿は、総漆塗りらしい。
色彩と彫刻が見事で、美しいという言葉しかでてこない。
もし私に芸術のセンスがあれば、ぜひ挑戦してみたいと思うほど綺麗だった。
残念ながらお祓いを受ける人でなければ中には入れないため、外から舐め回すように見回した笑
この装飾を眺めながら、待つこと30分。
ようやくお参り。
お賽銭にお金を納め、神に祈る。
「いつまでも%$#@$@%#ように」
拝殿でのお参りが終わると、御神木が目に映る。
ほぉ~すごい立派な御神木だ。
なんでもこの2本の御神木、樹齢が800年を越すという。
私よりも長生きだ笑
お参りした後、この御神木に向かい合って、三度呼吸をして手をあわせ祈ると良いというので、その通りに祈ってみると、この御神木からは大地のエネルギーと、とてつもないパワーを感じた。
不思議なもので、ここまでの道で疲れた体が、心身共に元気になり疲れも吹き飛んだ。
ふー、お参りもすんだし、なんだかスッキリした。
参拝の後は、駐車場まで道にも迷わず、すんなりと到着できた。
本当は長瀞の方まで流そうなんて思っていたが、もう日も傾いてきてしまった。
そろそろ帰ろう。
相棒の鉄馬に跨り、走り出すと、風が冷たく感じられた。
そして、しばらく走っていると、辺りはいつの間にか真っ暗になってしまった。
そして暗闇の中、ようやくある異変に気づいた。
ん?なんか見覚えないぞこの道。
そう、私はまた逆走して、結局長瀞の方まで来てしまったのだ笑
私は地図も持たないし、鉄馬にはナビもついてない。
勘で走り回る。
あちゃ~🥴
もう暗いし、景色も何も見えない。
またドコドコと走る。
道が混んでいた事もあって、もう夜の10時を回ってしまった。
腹の虫が鳴るが、道の駅もやってないし、さっと入れる店もない。
ひもじい笑
そして寒い💦
寒さに耐えながらしばらく走っていると、私の鼻と腹のセンサーが唸りを上げた。
いい匂いがするぞ。
あった、あの光は絶対そうだ。
飯屋だー‼️
砂利の敷地に1軒だけぽつんと立つ店。
駐車場には車もバイクも見当たらず、静けさが漂う。
まさか営業してないのか?
えぇい、匂いはするんだ、なんとかなる笑
すぐに鉄馬から降りると、腹のセンサーがこれ以上ないくらい唸りを上げた。
ぎゅるるるるる〜
まて、もうすぐだ。
もうちょい待て。
店に入ると、もう夜も遅いからか、他のお客さん姿はなかった。
冷えた空気を浴び続け、乾いた喉から発せられた言葉に自身も驚いた。
「やってまずが〜?」
店主は目をまん丸くして「やってるよ〜、さあ座って」と言って私を誘導してくれた。
私のひもじそうな顔を見て察しがついたのだろうか。
店主はにこりと笑い、限りなく優しかった。
「ご、ごれ、おねがいぢます」
ガタガタ震えながらメニューに指を差す。
「はいよ、すぐ作るからね〜」
その言葉に、思わず涙があふれそうになる。
満腹にはならないけれど、胸は一杯になった。
心が温かくなる瞬間だった。
そして本当にすぐ出てきた。
「はあぁ〜、待っていたよ、あなたを笑」
そのそそる香りと魅力的な色。
もう私はあなたの虜です✨
なにも言葉はいらない。
夢中でかきこむ。
これが、秩父名物わらじカツかー🤸
なんて美味いんだ。
五臓六腑に染み渡る。
夢中で平らげた。
そして私の一言。
「もう一回同じの頼んでいいですかぁ〜」
いつの間にか声も戻っていた笑
神のような店主は嫌な顔一つせず
「あいよー」と、一言優しく言ってくれた。
なんて素晴らしい、神のような店主だ‼️
そしてまたすぐに出てきた。
神のような店主は、私の食べっぷりをにこにこと笑いながら見守っている。
食いっぷりが良かったのだろうか、見られながら食べるのもなんだか照れくさい。
ふー、満腹と、お腹をさすりながらそば湯を愉しんでいると、神のような店主が話しかけてきてくれた。
「あのバイク大きいけど、排気量どのくらいあるの?」
「えーと、確か1450CCでしたね」
「ひぇ~、そんなにあるの?俺の軽自動車の倍以上だ」
と驚きながら、大きなお腹をさすっていた。
私も満腹で腫れたお腹をさすりながら、神のような店主との会話を楽しみつつ、またそば湯を愉しんだ。
時計を見ると夜の12時を回っていた。
「あっ、ごめんなさい、遅くまで居座ってしまって。
とても美味しかったです」
「いいんですよ。また来てね」
神のような店主はにこりと笑って、そう言ってくれた。
会計を済ませ、すぐに鉄馬に跨りハートに火を灯す。
長い間お店にいたから、鉄馬のハートは少し冷えていたが、再び暖かい火を灯してくれた。
私と店主の会話を聞いていたのか、相棒も機嫌が良いようだ。
よし、明日は仕事だから早く帰らねば。
そうして、またゆっくり下道で家路に向かった。
寒さに堪えながら、信号待ちでは鉄馬のハートの熱で手を温めながら、静かな夜の道を轟音とともにひたすら駆け抜ける。
家路につくと、時計はすでに夜中の3時を回っていた。
ん?
よく考えたら、カツ丼と蕎麦しか食べてないじゃないか笑
真夜中に1人、思わず笑いがこみあげた。
相棒の鉄馬がいたからこそ、この旅はさらに楽しいものになった。
私の人生は失敗の連続だが、この鉄馬が一緒だと何事も笑い飛ばせるし、何でも挑戦することができる。
彼はどんな失敗や挑戦も楽しむことを私に教えてくれた。
おしまい。