また閉店・・・。「VR体験施設」がteamLabになれないカルマ|今日の「ヤバい!VR」#18

今日のトピックは「JOYPOLIS VR SHIBUYA 閉店」について。

こんばんは。
ARの会社を設立した大学院生(@iwhododo)です。
VRは注目の高い領域だけに、日々大量のニュースを目にします。
そこで毎日1つだけVRに関連したトピックを取り上げてお届けしています。
※ちなみに選定基準は100%の独断と偏見に基づきます。

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この記事のまとめ

JOYPOLIS VR SHIBUYA 閉店
現存する体験施設は徐々に再開
コロナ禍でVR体験施設の閉店が相次ぐ

JOYPOLIS VR SHIBUYA 閉店

JOYPOLIS VR SHIBUYAは2020年6月30日(Thu.)で閉店すると発表しました。

同店は渋谷駅から直結のMAGNET6階で2018年10月から営業を続けていましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による緊急事態宣言のため、5月から6月中旬までの間、臨時休業。先日営業再開がアナウンスされたものの、正式に閉店が発表された次第です。

「VRの良さを実感してもらうには体験してもらうのが一番」
そう考えているVRユーザーや関係者は少なくありません。
それだけにこのような体験施設は欠かせない存在。
いま現在営業している施設には次のようなものがあります。ほとんどの施設で時間を限定したり予約制を導入したりすることで営業を再開しています。

東京・MAZARIA(マザリア)
同じくバンダイナムコアミューズメントの運営するテーマパークで、VRを中心としたアクティビティが楽しめます。場所は、東京・池袋のサンシャインシティです。後述の「VR ZONE SHINJUKU」で営業されていたアクティビティの大部分が移設されています。

大阪・VR ZONE OSAKA
「VR ZONE OSAKA」はバンダイナムコアミューズメントが運営する大阪・梅田にある「VR ZONE」の旗艦店舗となります。

◆名古屋・XR AMUSEMENT SASASHIMA
中京テレビ放送株式会社が2020年6月26日(Fri.)にオープンする「XR AMUSEMENT SASASHIMA」では、ウォークスルー型のVRアミューズメントに加えて、ARサイネージが楽しめます。

名古屋を拠点に活動するVTuber・キミノミヤや、男性アイドルグループ・BOYS AND MENなどがフィーチャーされたコンテンツが提供される予定。

相次ぐVR体験施設の閉店

他業種と同じくコロナ禍の影響も大きいものの、VR体験施設はこれまでも閉鎖が相次いでいました。

広島県を中心に店舗展開する「フタバ図書」が手掛けたVR体験と飲食の複合施設「VR Game&Cafe Bar VREX(ヴィレックス)」は渋谷、新宿と地場である広島で楽しまれていましたが、いずれも閉店しています。

バンダイナムコアミューズメントがクローズ時期を公開しないまま期間限定で東京・新宿歌舞伎町にオープンした「VR ZONE SHINJUKU」も21ヶ月の営業を終え、2019年3月末に終了しています。

ツクモパソコン本店に隣接するVR機器専門店「ツクモVR.」も2020年5月末に閉店し、ツクモパソコン本店にVR機器の専門コーナーが移設されました。

これらの施設が果たした役割は大きく、来場者の中には実際にVR機器を初めて体験する人も多かったはずです。実際、私自身も友人と「VR ZONE SHINJUKU」を訪れたり、「ツクモVR.」でHMDを触ったりしたことがVRの事業に取り組む礎となっています。

VRが初期市場と大衆の市場の間にあるキャズム(大きな溝)を超えたという声も少なくありません。コロナ禍で法人からの注目が高まっていることは言うまでもないでしょう。研修などを通じてVR機器に触れる機会も多くなることが予測されます。

しかしながら、エンターテインメントや大衆の利用という観点では普及にはまだまだ時間がかかりそうです。実験的な店舗として試験的に営業している企業も多いと思われますが、結局経営的な側面で営業が難しい・来場者が十分でないとすればどのような点を改めるべきなのか、私見ながら考えます。

※キャズム理論についてはこちらの書籍でまとめられています。

身の回りでVR体験施設に行った際の感想は以下の2つが多い印象でした。
もちろん好意的な印象も多かったものの、満足とはいかないようです。

「VRより遊園地がいい」

やはりアミューズメントパークとして遊園地と比較されるVR体験施設。それぞれの特色について、簡単に比較した表は次の通りです。

スライド1

「VRよりteamLabがいい」

teamLabやNakedの体験型アートと比較する声も多い印象を受けました。

同様に比較表を簡単に用意しました。ただしVRとプロジェクションマッピングなどで享受する創造性や情緒の起伏はベクトルが異なるもので比較できないと考えて記載していません。
※もちろんteamLabも一部でVRコンテンツを提供しています。

スライド2

ここで新規性としたのは体験するコンテンツの一部について、teamLabの場合はInstagramやニュースで知っている反面、VR体験施設では「VRの何かということはわかっているものの具体的なコンテンツや映像の感じは知らない」場合が多かったことを表しています。

遊園地にせよ、teamLabにせよ、それらはVRで同じ内容を作るだけでは太刀打ちできないような強力な体験をもった場として確立しています。逆にいえばVR体験施設の利用者にとってはそれらの施設が競合であり、そこで得られる体験と同じ要素を来場者は求めているのだと予測することも可能です。

「体験すれば分かる」幻想

あくまで私見ですが、結論、解決策はひとつで、単純かつ困難な方法です。
「VRの良さを実感してもらうには体験してもらうのが一番」と言うことを辞めるほかありません。あるいはVRの良さを理解してもらえるような二番、三番の道を一層強固に築き上げていく必要があります。

この「体験すれば良さが分かる」言説は、経験価値(エクスペリエンシャル)マーケティングのひとつと解釈することができます。これはBernd H. Schmittらが提唱したマーケティング手法で、サービスを実際に経験できるイベントを通して、サービスやブランドへの認知度と好感度を高めることを目的としています。

この経験価値を構成する要素は次の通り。

1. SENSE(感覚的経験価値)
2. FEEL(情緒的経験価値)
3. THINK(知的経験価値)
4. ACT(行動的経験価値)
5. RELATE(関係的経験価値)

まず感覚に訴えるためにコンセプトにしっかりとマッチした外装や内装、BGMなどで世界観を作り上げることが大切です。

顧客の好奇心や満足度はまさしく情緒に直結するものですが、それにはこれまでになかったサービスや新しい切り口での体験が求められます。

さらに顧客がそのサービスを利用したときの高揚感や感動を掻き立てる創造的な作用も欠かせません。

「ジョギングを始めたら楽しかった」というような肉体的な価値も大切で、遊園地や旅行の疲れも実際には価値に繋がっているといえます。

SNSやメディアも含めて、コミュニティでの交流や仲間意識、参加意識は所属欲求やそれ以上の階層の欲求に訴えかける重要な要素です。teamLabのような体験型アートではこの効果が顕著に表れています。
VRと密接な関係があるゲームにもこの所属欲求の重要性は説かれています。以前その点に触れたnoteもあるので、合わせてご覧ください。

特にACTやRELATEは作り込むことが難しいと言われていますが、例えば長い待ち時間やアイドルタイムで来場者の感覚を刺激する装飾や、自らの体験を共有して強化していく交流の要素はVR体験施設でこそ軽視せずに活かすべきなのかもしれません。

さもなくばVRに魅力を感じた来場者もまた「体験すれば分かる」と異口同音に発するだけに留まってしまいます。

VRについては体験型アートとは異なり、その体験施設にあるコンテンツではなく、『ソードアート・オンライン(SAO)』や『Ready Player One』といったアニメ・映画などの視覚的コンテンツが来場者の念頭に置かれています。それゆえに期待値が高く、それを乗り越えた可能性を見せていくこと以外の価値も探索していくべきかもしれません。

そういった意味では体験全体を設計し直し、ブラッシュアップする伸びしろはまだまだ見つかりそうです。

いま私にできること

今回はVR体験施設単体としての成立と、大衆に向けたVRデバイスの普及を区別せずに書いてしまったため、実際の事情は更に複雑です。
例えば、施設の装飾ひとつとってもVR体験施設がもつメリットである装飾費などのコスト削減と全く相反するもので、実行するためにはひとつひとつ兼ね合いを考える必要があります。

これからのVR普及拡大に向けて、これまでVRを触ったことがない人々や過去によくない印象をもってしまった人々に対してどのようにリーチしていくべきか。私自身が考え抜かなければならないという自戒も込めて、ここで擱筆いたします。

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