見出し画像

HBR6月号 「お客様」から社員を守る

2023年6月号の『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された「お客様」から社員を守るという特集を読みました。
普段はR&D職でお客様と直接接する機会は少ない私ですが、妻はお客様からの暴言に晒されることもある職場で働いています。そのため、彼女の気持ちに寄り添い、少しでも助けになればと思ってまとめました。


1. 顧客の無礼な振る舞いから最前線で働く従業員を守る方法

現代社会は、ストレスが洪水のように溢れ、それが暴言となって降り注いでいます。コミュニティの希薄化やテクノロジーの進化により、SNSやネットニュースでネガティブな情報に触れる機会が増え、非言語コミュニケーションの減少も相まって、齟齬が生まれやすくなっています。

この章で印象に残ったポイントは以下です:

  • リーダー自身のセルフケアが鍵
    リーダーが自身のケアに取り組む姿勢は、部下にポジティブな影響を伝播します。

  • 無礼も礼儀も伝播する。

  • 具体的な対策
    リクルート段階で無礼への耐性を見極める、アンガーマネジメント訓練、業績評価の整備、対応のテンプレ化など、現場で役立つ実践的なアイデアが示されています。

2. 常に笑顔で振る舞うことの代償 感情労働の負担をどうすれば軽減できるのか

無礼な顧客に対して笑顔を貫くのか、それとも冷静に振る舞うのか。その選択肢を従業員に与えるべきだと述べられています。さらに「エモーショナルトレーニング」の概念が登場します。

  • 思いやりのある無関心
    共感しつつも、ネガティブな感情に引きずられない。

  • 深層演技
    表面上の作り笑いではなく、感情を期待される振る舞いに一致させ、心からの行動に見せる方法です。

ただし、感情労働の負担がある人に、さらにトレーニングの負荷をかけるのは良い考えではない。

ただし、感情労働の負担が大きい中でトレーニングを重ねることのリスクも指摘されており、重要なのは従業員に選択の自由を与えること。そして、価値に見合った報酬で敬意を示すことです。

3. まず自分自身の感情に目を向ける 職場での物言いに傷ついた時の対処法

無礼な発言に直面した際、最初にすべきはセルフコンパッション(自己への思いやり)です。

次に、無礼な発言に対して対応する場合、しない場合のリスクを考えます。

  • 対応する場合のポイント
    「私」や「物事」を主語にし、相手を責めるのではなく、状況を整理する質問を投げかける。「どういう意味でしょうか?」というフレーズをあらかじめ準備しておくのも有効です。

「相手の行動はコントロールできなくても、自分の反応はコントロールできる」という考え方が、この章の根幹にあります。フィジカルな怪我を診断し対処するのと同じように、メンタルの負傷にも冷静な判断が求められるのです。

4. 顧客も従業員のように管理できる

「お客様は神様」というが、お客様が常に正しいとは限りません。「お客様は神様」という概念に疑問を投げかけつつ、顧客管理の具体策が提示されています。

  • 顧客の選別
    偏見ではなく、明確な期待基準に基づいて判断。

  • 顧客のトレーニング
    家族の声を録音して聞かせるなど、テクノロジーを活用。

  • 顧客の評価
    従業員から顧客を評価し、不適切な行動を改善する仕組みを導入。

  • 段階的な懲戒と解雇
    無礼な顧客に対し、電話を切る権利や罰金を科すなど、具体的なペナルティを設定。

5. 経営者こそ最前線の従業員と積極的に関わるべきだ

従業員を単なるコストではなく資産として扱う視点の重要性が述べられています。特に、CEOがフロントラインの従業員にどれだけ時間を割いているかが問われます。

例として、時間配分を30%(顧客)/30%(従業員)/30%(幹部)/10%(外部関係者)とした経営者の成功事例が挙げられています。また、組織図の概念を逆転し、フロントラインで働く従業員をトップに据え、経営幹部、CEOはそれを支える立場として考える「逆ピラミッド構造」の提案も示されています。

さいごに(妻のコメント)

HBR6月号を読んだ感想を妻に伝えたところ、
「いつも私が言ってることじゃん」
とバッサリ。

確かに彼女の現場経験には敵いません。本から学ぶことも大切ですが、現場で働く人々の声に耳を傾ける姿勢を忘れてはいけないと痛感しました。

また、妻からは
「2章のエモーショナルトレーニングは理屈では分かるけど、現場で実践するのは難しい」
との指摘も。

思いやりのある無関心: 共感しつつネガティブな感情に引き摺られない。
深層演技: 期待される振る舞いに自分の感情を一致させて、作り笑いをしている感覚を解消する。

現場での感覚や現状を理解せずに、経営幹部が流行の理論をベースにトレーニングを科したり、ルールを作ったりすることが一般企業でもあり得ます。
あくまで現場感覚が最優先であるべきだと、改めて気づかされました。

「学ぶだけではなく、現場で実践できる形に落とし込む」。これが、特集を読んで得た最大の気づきでした。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集