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書評①
1.はじめに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。今回書く記事は、本の紹介になります。毎日1時間もないのですが、できるだけ本は読むようにしています。これまでの読書の日々で、いいもの、おすすめしたいものをここで紹介させていただきます。
*今回の記事、今後の書籍紹介の記事は、「案件」では決してありません。私の「自由」で記述しています。このブログがどれだけ読まれても金銭的な利益は一切得られないので、ご安心ください。
2.紹介書籍
今回、紹介させていただく書籍は2点です。『野生生物は「やさしさ」だけで守れるか?』と『絶滅体験レストラン もしも環境問題が13の飲食店だったら』です。各書籍で、私が印象に残った内容をピックアップ紹介していきます。この記事は、私が書きたくて書いており、きっかけにして読んでほしいのが本心です。詳細は書きつつもこれで分かったと思わないでほしいです、1番は買って読むですが、借りて読んで自分の知識として養ってほしいです。学ぶことが大事です。
3.野生生物は「やさしさ」だけで守れるか?──命と向きあう現場から
こちらは、朝日新聞の記者によって書かれた著作になります。書かれた記者は、矢田文氏、杉浦奈実氏、小坪遊氏の3氏になります。全部で5章で書かれ、記者らが、実際に取材した内容がもととなって書かれています。よって、実際の現場で働く人たちの生の声が多いです。
この本の大まかな趣旨は、「生物とどうに向き合うのか?」ということです。「命」としての向き合い方、「守るべき保全の対象」としての向き合い方、「調査・研究」としての向き合い方…などと何をテーマにするのかで生き物との向き合い方が大きく変わります。この本を読んで私が、印象に残った内容は、以下の3点です。
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1は、ウミガメの産卵地で起こったことになります。気候変動、それに伴う海面上昇による砂浜の減少が発生しました。ウミガメをヘビやトカゲのような天敵から守るために、卵や子ガメを保護目的でビーチに侵入防止策を設置しました。しかし、この対策は、ヘビとトカゲの個体数を大きく減らすという結果にしかなりませんでした。ウミガメを餌として利用していたヘビは数を減らし、捕食対象を卵や子ガメからトカゲに変えることになり、トカゲの個体数が25%も減ることになりました。ウミガメの保護が、「島の生態系を大きく改悪する」という最悪の結果になりました。
保全を考える時、「守る対象だけ」を考えた行いによる結果です。大切なのは、「繋がり」と「生き物の関係性」つまり、「生態系」をベースに考えることが重要です。生物は、「単体」で保護を考えてしまうと、かえって負の影響しかでません。ウミガメは、どういう生きもので、どういう生態をしているのか、そして、「他の生物とどう関係性を作っているのか」と「利用して利用されているのか」を起点にして考えなければなりません。
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2.は、2023年に大阪湾の淀川河口近くでマッコウクジラが発見され、その後、死亡したものが全国で大きなニュースになりました。このマッコウクジラは、「淀ちゃん」の愛称で親しまれましたが、最終的には、松井市長(*当時)の指示の下、紀伊湾に沈められました。
しかし、この市の対応には、批判も多かったです。それは、「博物館の標本化」の意向に答えなかったからです。博物館が標本化の意向を主張したのは、「研究・調査」のためです。クジラのような大きくいつ現れるのかが分からない生きものは、ストランディングで調べるのが一般的です。調査・研究を行うためなら、資料としての標本は一つでも多く手元にある方が望ましいです。まして、同じ生き物でも体に持っている情報(*同位体、汚染度、胃の内容物…)は、違いがあります。たかが1体、されど1体の標本ですが、どういう生き物か、何を調べるのかで生き物の持つ情報の価値は大きく変わります。こういう背景を知っていれば、市長の対応は、将来を見据えたものだったのか?疑問がありますし、批判は避けられないと思います。ただ、海に帰ってほしいという気持ちや感じ方そのものは、間違っていないと思います。
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わずかな時間の中での調査でしたが、ここまでのことがわかるのかと驚きます。
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同位体、年輪などと情報は多いです。
*ストランディング・・・海生哺乳類が海岸線から陸地側へ生きた状態で座礁したり、死んだ状態で漂着し、自力で本来の生息域に戻ることができなくなること
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私は、今、ドジョウについて調べているのですが、この博物館の役割に合わせて紹介させていただきます。日常的に見ることのあるドジョウは、現在、ほとんどが中国から輸入された外来のものに入れ替わっています。大阪と神奈川では、在来のドジョウは、ほぼほぼいなくなっています。それが分かったのは、博物館が調査したからであり、その調査の元となったのは、「収集し続けてきた」博物館が資料があったからこそです。調査や研究というのは、すぐに行われ、すぐに何かが分かるものではありません。しかし、資料を集め続けたからこそ、今、日本のドジョウで何が起こているのかが分かりました。マッコウクジラも同じです。標本化し、資料として持っておくことで、いざ、調査が必要な時に持っている。こういう状態があることが、大切であり、博物館の役割でもあります。
*ドジョウについては、ブログで書く方針です。何を書くのか、まだ言えませんが、お楽しみにしてください。
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*過去に博物館がどのような役割を担っているのかについても書いています。お時間があれば、こちらもご覧ください。
3のハイビスカスと世界遺産は、奄美大島の宇検村の事例が、外来種との付き合い方にヒントを与えます。この村を含む奄美大島が、2017年に国立公園に指定されました。そして、その次の「世界自然遺産」への登録も目指していました。しかし、世界自然遺産に指定する時に、「ハイビスカス」が生えていることが問題視されました。奄美大島で一番高い山である湯湾丘(*694m)の山頂に繋がる道路に生えていたハイビスカスが問題視されました。ここが、世界中でもどこにもいない「固有種」の存在があり、開発規制が一番厳しい「特別保護地区」に指定されています。また、ハイビスカスは、一般的には中国南部やインド原産とされるブッソウゲなどから作られた園芸用の花のイメージです。つまり、ハイビスカスは、日本では「外来種」です。
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自然保護、世界自然遺産登録のためなら、ハイビスカスは、駆除すればいいです。しかし、ハイビスカスは、民家の庭で栽培され、トンネルのレリーフ、マンホールのふたの柄にも使われ、「村の花」にもなっています。つまり、ハイビスカスは、村のシンボルになっている大事な存在であり、世界自然遺産のためにハイビスカスを駆除し捨てていいのか?という問題になります。村の決断は「伐採」であり、切り株に除草剤も入れるほどの徹底ぶりです。しかし、間違えてはいけないのは、村にあるすべてのハイビスカスを駆除「していない」点です。「部分的な」伐採で済んだということです。このような決断になった背景には、植えられたハイビスカスには、「種ができない」からで、知らずのうちにハイビスカスが増えてしまう心配がないためです。奄美大島の自然の中でも一番大事な部分のハイビスカスのみ駆除したという処置です。この件をきっかけにしてだと思われますが、この村では、植樹祭で植える植物もハイビスカス以外のものにしようと変わっているそうです。この事例から、外来種とどう付き合うのか、環境保全と外来種の利用をどう両立すべきなのかが分かります。
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外来種というと、オオクチバスやブルーギル、アライグマ、ヒアリ…などと日本の自然を脅かす危険な生きものとの認識が強いです。すべての外来種が、そのような危ない存在ではありません。まして、外来種の中には、野菜、イネ、養殖の魚や家畜…と私たちが日常の生活を送るにおいて、必要な生き物がいるのも事実です。では、これらを駆除しよう、利用を止めようと言われないのは、私たちにとって都合が悪いからでしょうか?(*ベターを選んでいるということかもしれませんが)そうではありません。どういう外来種が問題視されるのでしょうか?それは、「○○されていない」そして「○○○が高いのか」が問題視され、問題視され、駆除されています。ここに入る言葉はなんでしょうか?これを知りたい方は、読んでください。このブログで教えることはないでしょう。
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*過去に書いたブログでも外来種問題について記述しています。外来種というと強い生物と思われるかもしれませんが、決してそんな簡単な問題ではに事が分かります。興味があれば、是非、ご覧ください。
以上が、この「野生生物は『やさしさ』だけで守れるか?」の紹介です。これ以外にも面白いエピソードや取材内容は、たくさんあります。私が実際に読んで感じたことは、「わかりやすい文章」と「突くべき要点を十分についている」という点です。この本を書かれた著者たちが、「新聞記者」であり、大学で生物学などの「環境や生物を専攻していた」人たちだからです。つまり、「わかりやすさ」と「専門性」のバランスが取れるということです。マスコミで、自然環境や生物に関係する記事が出た時、大きく間違えているということが多いです。しかし、そういう良くない状況下で、専門性をもった記者がいるというのは、心強いです。朝日新聞は、いい記者がいるので、大切にしてほしいです。
*著者の一人の小坪遊氏は、過去に『池の水」抜くのは誰のため?―暴走する生き物愛―』という本も執筆されています。内容的にも今回の著作と共通する所も多いです。興味があれば、是非、こちらもご覧ください。
4.絶滅体験レストラン もしも環境問題が13の飲食店だったら
こちらは、環境エンターテイナーであるWoWキツネザルさんの初めての著作になります。環境問題、生物多様性をテーマに動画の発信、イベントや講演を開催されている方です。
この本は、過去に環境問題をテーマとした体験型フードエンターテイメントショー『絶滅体験レストラン』を書籍として再構築したものとなります。環境問題や生物多様性の喪失という問題は、他人事やどこか遠い世界で起こっているように見えるかもしれません。しかし、これらの問題というのは、私たちの生活に大きく影響があります。それを13のテーマにし、架空の飲食店としてあってはならない店の姿として想像し、追体験するものとなります。あなたは、将来、その店を利用するかもしれません。そんな未来にしないようにしようというものになるます。
*ここに張られている著作の内容は、アマゾンで閲覧できる部分から引用しています。
全体的な構成は、最初に、レストランの紹介があり、挿絵と共にどういうコンセプトのレストランなのか、目玉商品は、何かが紹介されます。レストランのこだわりは何かを店長や従業員の解説から聞き出し、どのような環境問題が潜んでいるのか?が、WoWキツネザルさんから解説されるというのが、全体的な流れです。文章と挿絵に風刺が、差し込まれおり、読みどころが満載です。
最初のレストランについて紹介させていただきます。ラーメン店の場合、レストランの中は煙だらけで、真っ黒で真っ赤になっています。客も従業員もまともに呼吸することはできません。椅子と机は、炭化した木でできており、ラーメンのチャーシューは、山火事で燃えた野生の動物の肉でできてます。その肉は、コアラ、ジャガー、渡り鳥、希少動物…と種類は豊富です。店の中には、コアラ、オラーウータン、ジャガー、ゴリラ…などと生き物が描かれています。レストランの中には、熱を溜めやすいように真っ黒な泥炭を使用し、体全体で火災を味わうことができるようになっています。
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最初のラーメン店は、「山火事」をテーマにしています。オーストラリアやアメリカで発生する山火事は、日本でも大きなニュースになります。この山火事は、「地球温暖化」によって引き起こされ、加速させられます。その結果、その土地で生活が難しくなり、野生の動物が多く死に、火事によって、さらに乾燥し、それが山火事を引き起こしやすくなり、結果的に二酸化炭素を排出し、地球全体での温暖化と各地域での山火事の増加を引き起こすという、負のスパイラルが引き起こされるといことが解説されています。レストランのテーマを読み、どのような問題が文や絵に隠されているのか、メッセージとなっているのか、今の地球で何が起こっているのかが読み取れます。
私が読んだ感想でもありますが、初学者だけでなく、より詳しい人にも面白くできているのではないかと思います。特に、挿絵にはどのようなメッセージがあるのか、それを読み解く面白さがあります。この山火事で描かれてる動物たちは、実際に被害を受けてる動物たちが描かれています。「10」のヨソモノ横丁というレストランでは、ブラックバスのに口の中に大量の小魚の天ぷらが、アライグマのお腹に野菜が盛り付けられています。カクテルの交雑キッスには、その下にオオサンショウウオがデザインされています。これらの商品から、何を想像しますか?答えは、本の中にあります。知りたい方は、是非、読んでみてください。
WoWキツネザルさんは、YouTubeでも多くの動画を出しています。ショートのような短いものが多いですが、そのほとんどが、つくべき所を突いて分かりやすい内容です。今、こういう動画を作れるひとは、あまりいないのではないのか?と感じており、WoWキツネザルさんは、本当に才能のある方だなと動画を見ていつもびっくりしています。
*こちらの動画も非常にいいものです。是非、ご覧ください。
5.まとめ
以上が、今回紹介させていただいた書籍になります。今回紹介させていただいた書籍の共通する特徴は、「初学者向け」であるということです。生き物について、環境問題についてより詳しく学び、深めたい人より、環境問題等についてこれから詳しく知りたい人たちが、基本的なことを理解するため、どこから手をつけるべきか?というきっかけとしてとてもいいです。つまり、「入門書」です。ただ、初学者向けだから、普段勉強している人には向いていないという意味ではありません。『野生生物は「やさしさ」だけで守れるか?』では、私も知らなかった事例があり、何が問題なのか、何故、それが起こっているのかを分かりやすく、そして、詳しく適切な文量で書かれているので、読みやすいです。新聞記者としての「書く」力の凄さが、現れたと思います。一方、『絶滅体験レストラン もしも環境問題が13の飲食店だったら』では、レストランのタイトルや内容を読めば、何を扱おうとしてるのかは、大体想像がつきます。ただどういう絵が描かれているのか、どういう背景があってその料理ができているのか、それを読みていていく、発見していくことが、面白さだと思います。こういうことができるWOWさんの創造性の高さが、読んでて表れてたと思います。
以上が、今回紹介させていただいた書籍になります。今回、初めてのテーマになりますが、紹介してみたい書籍は、まだたくさんあります。今後もこのブログを紹介していきます。ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。次回もお楽しみに。
6.著者等リンク先
こちらが、本を書かれた著者のSNS等のリンク先になります。もし、興味が出てきたら、日々のツイートなどもご覧になってはいかがでしょうか。