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ツチフキー奇跡の復活は何を意味するのか?

1.初めに

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。今回のブログのテーマは、日本の淡水魚「ツチフキ」です。2023年、関西地方で絶滅または、長年見つかっていなかった魚、ツチフキが再発見され、大きなニュースになりました。私もこのニュースを見た時は、「すごいことが起こった」の感想を持ちました。しかし、このツチフキの再発見というのは、ただ喜んで終わるものではないことが、今回のブログを読んでもらえるとわかる内容となっています。また、このブログは、「京都府民」や「大阪府民」の方々に1番読んでほしいです。今、地元の自然が知らずに失われるという悲劇が起こるかもしれません。京都や大阪というと「歴史」や「文化」がアイデンティティのような町ですが、豊かな「自然」も「歴史」や「文化」と同じように持っていることを再度自覚してほしいです。最後まで読んでもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。

2.何故、ツチフキについて書こうと思ったのか?

 私が、ツチフキについて書こうと思ったきっかけは、「うおとひと」というイベントに参加したことです。マーシーさんをはじめとした日淡好きの方々にお会いし、偶然、ツチフキについてのお話を聞く機会を得て、ツチフキについて私が、興味を持ったことがきっかけです。ツチフキをどのようにして見つけたのか、どのような生き物なのか、今どうなっているのかを調べたら、色々と読み取れるものが多く見つかりました。

3.ツチフキとは何者か?

 ツチフキは、学名を「Abbottina rivularis」といい、コイ目コイ科カマツカ亜属に分類される淡水魚です。生息地は、世界的に見れば北はアムール川から南は中国までとなっています。日本の国内では、琵琶湖・淀川水系以西の西の太平洋側と九州北部が、自然分布域となっています。
 ツチフキは、どのような系統を作っているのか?ということが研究され、ミトコンドリアDNAのcytb領域による系統地理的解析が行われています。大きく分けると「大陸北」「大陸南」「日本」のクレードに分けられます。日本のツチフキはどれも全く同じツチフキなのかというとそうではありません。日本のツチフキにも当然、違いがあります。日本のツチフキは、「本州タイプ」と「九州タイプ」の二つに分けられます。そして、「本州タイプ」は、「近畿」と「中国」の2つの系統に分けられます。

ツチフキの系統樹
(*筆者作成)

 ツチフキの特徴は、体が紡錘形をしており、口元に1対の短い髭を持っています。よく似た淡水魚に「カマツカ」があげられます。ただ、カマツカとの区別はものすごい難しいというわけではありません。まず、カマツカの方が、体長が大きくそこで見分けられます。体長以外にも特徴はあり、「吻の長さ」「口髭の長さ」「唇の乳頭突起の有無」「頭部の角張具合」などが挙げられます。特に、「頭部の角度」は、私の見分けかたにもなるのですが、カマツカの方が、直線的に低く入り込むのに対し、ツチフキは、丸っこく高くなっているのではと感じています。

我が家で飼育していたカマツカです。
こちらがツチフキです。
ツチフキとカマツカの違いをまとめると図のようになります。
(*魚のイラストは、うぱさんから提供してもらいました。)

 ツチフキの生息環境は、平野部の浅い池沼、農業用用水路、河川敷のワンドで、泥底または砂泥底となっている環境で、4~7月が繁殖期にあたり、この時のオスは、一回り大きくなって胸鰭の前縁と東部腹側に追星が現れるなどの性的2型が見られます。ツチフキで一番注目される生態は、「繁殖法」です。オスが、泥底にすり鉢状の巣を作り、メスを誘って産卵します。その卵を保護するのは、オスになります。コイ科の場合、春~夏の繁殖期の水位が上昇・下降などの変動をした時に浅場に押し寄せて大量の卵を産み付けるという繁殖法が一般的なため、卵でも子守をする繁殖法というのは、印象に残りやすいのではないかと思います。

ツチフキの生息環境は、このようなものではないでしょうか。
(*筆者撮影)

4.ツチフキの再発見

 ツチフキは、自然分布域では数を減らしており、非常に危機的な状態にあります。地域単位で見た場合、減少が著しいまたは絶滅したのではないかと思われるほどの状態です。そのような状態の中で、ツチフキが関西地方を中心に再発見され、大きなニュースになりました。以下の図でツチフキの発見された箇所、時期をまとめました。「いつ」採取されたのかを見た場合、そこで「たまたま」採取されたとは言えず、複数の地点で複数の個体が見つかっています。淀川では約30年ぶりの発見、京都府の水系では、約40年ぶりの再発見となり、非常に注目される発見であることが分かります。(*『疏水』という書籍にてツチフキを再発見した時にエピソードがあります。リンク先も記載してあります。)
 また、2022年の淀川での調査で再発見されたものは、ガサガサ系YouTuberのマーシーさんが、発見された個体でもあります。発見された時の論文は、一般でも見ることができ、謝辞においてマーシーさんのお名前もあります。動画と合わせて是非、ご覧ください。

ツチフキの再発見についてのまとめ

5.ツチフキは絶滅の危機にある

 再発見されることは、非常に喜ばしいのですが、ツチフキは、現在、環境省のレッドリストで「絶滅危惧種ⅠB類」に指定されています。この指定は、「ウナギ(*絶滅危惧ⅠA類)の次に絶滅のリスクが高い」ということを意味しています。地域単位で見た場合でも、京都府のレッドリストでは「絶滅寸前種」、大阪府のレッドリストでは「絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)」となり、日本全国どころか、関西圏では本当に消えてしまいそうだということが分かります。

https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/rank.html  を引用

 では、何故ツチフキが絶滅の危機にあるのでしょうか?淀川での調査が中心になりますが、主な理由は2つで、その二つが重なったことも大きな要因と言えます。

①河川改修

 淀川では、1980年代から大規模な河川の改修工事が行われ、ワンドの数が減ったことが挙げられます。1970年代では、170箇所、1980年代からは75箇所、1990年代では46箇所へと激減しました。淀川の河川改修により、壁面のコンクリート化、淀川大堰稼働による大堰から枚方市付近までの約15キロがダム湖化しました。ダム湖化は、水面にいる植物プランクトンが冬になって一気に死に、その死体がそこに溜まることで、水質の悪化も伴いました。これらの変化により、一時的な水位の上昇や変動を伴う水理環境が大きく変化し、ツチフキの生息地と産卵場の喪失になりました。

https://www.knsk-osaka.jp/kankyo/info/doc/2023061900018/ を引用
開発前後の環境の変化
(*筆者作成)

②外来魚の侵入

 2000年代を境に外来魚がワンドや本流で優占種となっていきました。特に、ブルーギルやオオクチバスの増加が著しいことが分かります。両者は、密放流が「継続的に」「広範囲に」行われたことで定着したと考えられます。場所によっては、オオクチバスやブルーギルしかいないという場所も確認されているくらいです。

aがブラックバス、bがブルーギル。
淀川がブラックバスとブルーギルだらけだということがわかります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/22/1/22_199/_article/-char/ja/ を引用
https://cir.nii.ac.jp/crid/1523106604888962560 より引用

 オオクチバスとブルーギルは、産卵する際、ツチフキと同じように池底にすり鉢上の産卵床を作ります。彼らの侵入というのが、捕食という脅威だけでなく、「産卵場というニッチ」を奪ってしまうことが危惧されています。

オオクチバス
ブルーギル

③河川改修と外来魚の重なり

 淀川でなぜ外来種が拡大したのかという理由も同時に答える内容になります。下のグラフでは、淀川の調査地点ごと(*本流とワンド)での魚類の調査の結果をグラフにしたものになります。淀川の大堰が本格的に稼働した1990年代から魚類の割合は大きく変化し、本流、ワンド両者でコウライモロコが優占種になりました。これは、大堰の稼働により本流とワンドが「流れが緩やかな深場」に環境が変化したことが原因です。このような環境が拡大し始めた2000年代にオオクチバスやブルーギルが多くなってきています。オオクチバスが淀川で初確認されたのが1984年、ブルーギルが初確認されたのが1972年と淀川で目立つ生物になるのは、かなり長い期間でブランクがあります。その原因が、淀川の環境の変化、淀川の大堰の開発です。そもそもオオクチバスやブルーギルの生息する環境は、「止水域」で「流れが緩やかな環境」を好みます。池や沼、湖を好む環境であるということにあります。淀川の改修は、大堰から枚方市付近までの15㎞を堪水化、水位変動のない状態、淀川の「ダム湖化」を招きました。つまり、淀川の改修による「水位変動のない止水環境の創出」とその前後の期間での「外来種の密放流」が行われるようになってしまうという2つの原因が重なったことにより、ツチフキが淀川からいなくなってしまったと考えられます。

https://cir.nii.ac.jp/crid/1523106604888962560 より引用

6.何故ツチフキが見つかったのか?

 ここまでの説明で、ツチフキが危機的な状況にあることは分かったと思います。しかし、ここまでツチフキを追い込んだのに「何故ツチフキが見つかたのか?」と疑問を持った方も少なくはないはずです。残念なことにツチフキが再発見されるようになった理由については、現在は、「よくわからない」というのが、正確な答えです。それでも、ツチフキが何故見つかるようになったのか、復活したのかということについては、主に2つの要因が考えられます。
*ここで、ここまでの内容の復習とこれからの内容の予習のため、うぱさんの動画をご覧ください。

①外来魚の駆除

 淀川の魚類の調査10年ごとに行っており、2012年の報告では、在来種が回復傾向にあることが報告されています。2004年調査と2012年調査結果からは、現在は外来種が減少傾向、在来種が増加傾向にあることが読み取れます。また、外来種駆除の活動をどれだけ行ったのかを比較した地点では、駆除を行い続けている地点ほど、外来種は減り、在来種が増加している傾向にあることが分かります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/esj/ESJ52/0/ESJ52_0_85/_article/-char/ja/  をもとに筆者作成
https://www.jstage.jst.go.jp/article/esj/ESJ52/0/ESJ52_0_85/_article/-char/ja/  をもとに筆者作成

 これらの結果から言えることは、「外来種の駆除活動による種の回復は効果がある」ということです。外来種の駆除は、税金と労力の無駄遣いと批判されることも多いですが、この結果というのは果たして無意味だと言っているのでしょうか?また、目指すものは、外来種の「根絶」ですが、根絶までの過程において外来種を減らすことで「脅威を少なくすること」にも「意味がある」もので、「在来種の回復」に繋がることにもなるということを示す結果ではないでしょうか。淀川だけでなく、伊豆沼のゼニタナゴ、琵琶湖のシロヒレタビラのように外来種の駆除が、在来種の復活、再確認に繋がったとされる事例もあります。このように外来種を減らし、外来種の脅威を少しでも取り除いたことが、ツチフキの回復に繋がったのではないかと考えられます。

シロヒレタビラです。
ゼニタナゴです。

②気候変動による環境の変化

 まず、ツチフキは、岸に近い浅場に生息し、産卵します。岸に近い場所というのは、「エコトーン」であり、水位変化の「激しい場所」であるということを意味します。淀川の改修により、水位が安定した環境へと変化したことで、ツチフキを減少させたのですが、それが変わり、「豪雨の増加」によって変化したと考えられています。その豪雨の増加は、近年の気候変動によって豪雨が増加したことに起因していると考えられています。下の図は、淀川下流付近の水位の変動を1991年から2021年までのデータで、2011年以降を見た場合、水位の変動が大きくなっていることが分かります。このような出水の増加は、これまでの水位の安定した状態から、気候変動により豪雨が増加した結果、ツチフキの好む環境が創出されたのではないかと考えられています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ichthy/33/0/33_14/_article/-char/ja/
を基に筆者が改良

 ツチフキの再発見で気づいて欲しいことがあります。ツチフキは「保全活動の成果」によって回復したと言えるのかということです。少なくともツチフキの回復を「意識した結果ではない」といえます。外来種の駆除による成果が、ツチフキにも恩恵を与えたといえ、これが保全活動の成果であることは否定できません。しかし、気候変動を起因とする要因は、人の「意図しない」変化や要素により、偶然、ツチフキの生息に好む環境を創出したということを意味し、結果的にツチフキの回復に繋がったということが言えます。

7.ツチフキの危機と脅威

 ツチフキが、絶滅危惧種にある中で、再発見されたというのは、非常に喜ばしいニュースであるのは、間違いありません。しかし、ツチフキを巡る現状は、決して喜べない所、危機感を持つべき所も多くあります。ツチフキは、自然を破壊する「脅威」であり、絶滅のリスクを抱えている「危機」でもあります。(*詳しくは下記のブログを参照)

〇脅威

 まず、ツチフキは、「外来種」として定着しており、それは、国内だけでなく、「国外」も含んでいます。国内では、主に、関東地方が定着先になっており、かつては自然分布と考えられていた濃尾平野も遺伝子の多様性が薄いことから外来種であると考えられています。これらは、ペット個体として流通していたものが、逃がされて定着したのではないかと考えられています。一方の国外の方では、ラオスなどの東南アジアから見つかっています。こちらは、原因についてはよくわかっていないのですが、「ニシキゴイ」を日本から輸出する時に混じってしまったのではないかということが考えられています。
 過去に書いた「オヤニラミ」や「ニホンイタチ」ほどの脅威にはなっていないと思いますが、これはそのままでいいということになるわけではありません。ツチフキが侵入することで、本来在来種が使えたまたは占有できた産卵場やエサなどのソースがツチフキに奪われるという結果を生んでしまいます。つまり、在来種の生息環境がツチフキに奪われるということを意味しています。外来種が入り込んでしまうことの一番あってはならないことは、ここになります。どんな些細なことでも在来種に対して悪影響を与えてしまうことになります。

〇危機

・未だに続く開発

 ツチフキが再発見されたことがよくてもそのままツチフキが、危機的な状況を脱しているとはいいがたい所も多くあります。再発見に伴ってツチフキに対する保全措置が取られているのかというとそうとは言えない面があります。京都で再発見された箇所においては、「護岸工事」がされ、それがツチフキの生息環境の破壊につながることが懸念されることが記述されていました。それらに加え、ツチフキの産卵については以下のようなことが指摘されています。

・・・(中略)・・・本調査地点では調査時に護岸工事が行われており、河川環境への変化よるツチフキ個体群への影響が懸念される。

「京都府より38 年ぶりに得られたツチフキAbbottina rivularisの記録」より引用

・・・(中略)・・・現在の堅田内湖は,堰により琵琶湖と分断された閉鎖水域であり,琵琶湖からの新規の個体群移入がない。

「琵琶湖の堅田内湖に生息するツチフキの繁殖期」より引用

・・・(中略)・・・もうひとつの環境条件の抽水植物の有無についてはツチフキの減少に関連している可能性を含んでいると考えている。抽水植物がある場合とない場合を比べたとき,抽水植物が生えていない場所の方がその選好度が高いことが明瞭である。かつての有明海沿岸域の農業用水路では藻刈りゴミ上げや掘干しが行われていたが、都市化と近代化にともないその行為は廃れ,水路の荒廃を招いたことが指摘されている(加藤,1998)。この地域の農業用水路の管理の現状や水路内の植生の繁茂状況など、その詳細は定かでないが、こういった水路の管理低下にともなう抽水植物の繁茂もツチフキの減少要因になりうることを現在あるいは将来起こりうる本種の存続に対する危機要因のひとつとして認識しておくべきだろう。

「牛津川近隣の農業用水路におけるツチフキの産卵環境」より引用

 ここで引用させてもらった論文は、開発や水路の管理が届かないことによるツチフキの悪影響、生息地の破壊や分断、産卵・生息場所の喪失を懸念する記述ばかりになっています。ここでの引用例だけでなく、京都では、うぱさんがよくガサガサにいっていた川で護岸工事が行われ、その前後で魚の種数や個体数に大きな悪影響を与えたものとなっています。つまり、ツチフキの脅威となる開発が未だに行われており、人知れず、数少なく生き残っているであろうツチフキを絶滅させる危険性のあることが行われているということを意味しています。

・気候変動

 こちらは、ツチフキの危機というより私達の脅威なのかも知れませんが、ツチフキが増えた要因は、気候変動によって豪雨が多く引き起こされることで、水位の上昇が引き起こされたからということを説明しました。豪雨の増加は、「保全活動の成果」ではなく「偶然」です。偶然の要素によって人の手をかけなくても生き物が増減することを示す事例になります。また、水位の変動は、「気候変動による影響が表れていることを示す現象」として危機のが可視化されたものではないかとも感じるかもしれません。生き物に対して恩恵を与えていると喜ぶのではなく、気候変動による危機が人にも表れ、その対策が求められているともいえるのではないでしょうか。

・遺伝子攪乱

 ツチフキの復活は、ある前提があるから、いいことと捉えられていました。それは、「在来」の系統のツチフキの個体数が回復したからです。では、「在来」ではない、つまり、「外来」のものが逃げ出し、その個体数が増えたのなら、それは復活と言えるのでしょうか。実際、九州では、日本の系統ではなく、大陸由来の系統のツチフキが見つかっていると報告されています。
 京都の複数の河川で見つかったツチフキの遺伝子を調べた際、下の図のようにこれまでの調査で得られたハプロタイプと一致するものが多く、宇治川で発見されたものに関しては、本州の近畿よりのものでもまた違うタイプのものだとわかっています。つまり、在来のツチフキが回復していると考えられます。しかし、現在のツチフキのクレードにおいて問題があります。それは、「サンプル数が圧倒的に少ない」上に系統関係がよくわかっていないということです。(*系統関係がよくわかってないが故、琵琶湖のツチフキは、在来個体か外来個体、現状はまだはっきりしていないです。)少ない個体数をもとに作成しており、そのクレードをもとにすれば、現在では在来と考えられているということです。サンプル数が増加し、クレードが再構成された場合、これらのツチフキも在来のものなのかという話にもなってしまい、実は外来の個体だたったということもありえなくはないということです。つまり、ツチフキの系統の研究は、まだかじり程度のことしかわかっていません。その系統関係を明らかにし、水系ごとでの保全をしなければならないことが、求められています。
*私は在来個体の可能性が高いと考えています。しかし、河川や水系でツチフキの遺伝子での多様性がわかってないことが多いため、そこを明らかにしなければ、地域や遺伝子を守るための保全活動ができないのと考えています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ichthy/35/0/35_10/_article/-char/ja/ を引用

8.まとめ

 ツチフキの再発見というニュースから、長年見つかっていなかった生き物が見つかるニュースは、確かに聞いて嬉しいもので、そういう生き物が見つかることは、環境の回復と考えることができます。しかし、ツチフキの再発見というのは、「保全活動の成果」とはいいがたい面もかなり強かったと言えます。特に、「気候変動」を起因とするツチフキの好む環境の創出というのは、興味を持つ要素でした。生き物の保全がうまくいく、数が増えるというと、何らかの形で人間が手をかけた成果だと思われがちですが、そうではないです。これは、生き物というのは「何らかの要素や条件さえあれば簡単に変化してしまう」ということを示す事例であり、「要素や条件によって簡単に増えも減りもする」ことを意味するのではないでしょうか。よって、ツチフキも何らかの変化で今後ともまた見られなくなるということが否定できないのではと思います。
 ツチフキの再発見から今後の保全活動においても読み取れるものは、多いのではないでしょうか。ツチフキが生息に好む環境というのは、ツチフキのみが好む環境かというとそうではないはずで、他の淡水魚も同じような環境を好むはずです。ツチフキの保全は、ツチフキだけが得をして終わる活動ではないということです。つまり、ツチフキの保全は、他の生き物にも波及するものになると考えられます。それに故、ツチフキの保全というのは、日本や地域レベルの川はどうあるべきかを見て考える一つの指標となる生物として保全が求められる生き物になっていくのではないかと考えます。
 ただ、ツチフキが見つかったから、ツチフキのための活動をしているのかというとそれは聞いていません。まして、派手で可愛いと一般的に思える見た目もしているとは言い難く、保全のシンブルにするには地味すぎると見られても仕方がないかもしれません。しかし、これまでの説明から、ツチフキは日本という土地柄に適応し、人のいる近くで生息する生物であることがわかりました。それ故、開発などの環境の変化を最も強く受け、絶滅までさせたと思ったが、生き残っている可能性が高いことが分かったもののツチフキに対する脅威はまだ消えていません。まして地域が違えば脅威になります。京都ではツチフキを見つけた場所を含めた場所で河川回収が行われていることを紹介しました。このままだと、京都では鴨川のオヤニラミを野生絶滅させたようにツチフキを同じ末路に合わせてしまう可能性を残してしまった末路を辿るのではないかと感じました。また、大阪では、ツチフキの再発見から、淀川でツチフキが見つかったことをきっかけに淀川のありかたを考えなければならないと思います。
 ツチフキの再発見というのは、見つからなかったものが見つかったことを喜んで終わるのではなく、自分たちが住んでいる地域の自然は、どのようなもので、どういう魅力があり、ツチフキを含めた生き物たちとどのような関係を作っていくのか、つまり、「生き物との共存の在り方」を探るきっかけになるべき再発見ではないかと思います。絶滅危惧種というのは、ただの激レア生物をゲットした、見つけたという満足を味わって終わるものではないということでではないでしょうか。考えることは多いと思います。
 以上になります。ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

9.参考・引用文献

*ツチフキ、カマツカのイラストは、うぱさん(https://x.com/upasan_1123)から提供させていただきました。また、他の動画も引用させていただきました。


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