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子どもの健やかな発育に大切な「栄養」の話
こんにちは。
岩間こどもクリニック 院長の岩間義彦です。
今回は【子ども(乳幼児)の栄養と健康】にフォーカスしてみます。
子どもの成長と健康の維持に「栄養」はとても大切です。
メディアやYouTubeに情報が溢れる昨今、正しい情報の取捨選択が非常に難しくなっています。
「栄養と健康」の話しは、一度で全て伝えることができないため、今後も時々お伝えしたいと思っています。
今回は赤ちゃんや3才くらいまでのお子さんを育てているママ・パパから、診察室でよく質問される内容を、いくつか挙げてみます。
子育て中の方はもちろん、これからパパ・ママになられる方にも参考になるような記事にしたいと思います。
<質問①:私(ママ)が貧血だと母乳を飲んでいる赤ちゃん(乳幼児)も貧血になりますか?>
「貧血」について気にされているママはとても多いです。
妊婦や出産後のママの健康状態は定期検診でチェックされていますので、貧血を見逃すことはほとんどありません。
生後6ヵ月以内の赤ちゃんは、妊娠中のママから受け継いだ鉄を体に蓄えており(貯蔵鉄)、貧血のママからの母乳でも赤ちゃんが貧血になることはほとんどありません。
ただし、生後半年を過ぎると貯蔵鉄を使い切ってしまうため、母乳では鉄をまかないきれません。子どもの発達には離乳食で鉄を補う必要があります。
赤ちゃんが貧血になると、それまで順調に伸びていた体重が急に伸びなくなります。
「母乳やミルクは十分に飲んでいるのにおかしいな」
そんなときに、小児科医は赤ちゃんの貧血を疑います。
特に離乳食をはじめると、それまでの母乳(ミルク)の回数が減り、離乳食の回数が増えていきます。離乳食をはじめたばかりで、鉄の多い離乳食をそれほどたくさん食べることができないと、赤ちゃんの体内では鉄が不足しやすい状態になります。
赤ちゃん(乳幼児)の貧血は、離乳中期から後期に多くみられるので、ご注意ください。
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<質問②:母乳育児にこだわった方が良いでしょうか?>
こちらもよくある質問です。
結論からいうと「そこまで母乳にこだわり過ぎる必要はない」と考えています。
母乳が出やすい方、そうでない方など、個人差があります。
栄養のバランスなどを考えれば赤ちゃんには母乳がよいのですが、あまりこだわると、赤ちゃんが「カロリー不足」を起こす可能性があるので注意してください。
母乳育児に一生懸命になり過ぎて(周囲からの圧力等)、ママの精神状態が悪化しては元も子もありません。
母乳が足りない場合は、ミルクで補えば良いと思います。
ママが安心して、穏やかに赤ちゃん(乳幼児)と向き合えることが一番です。
<質問③:成長の目安(乳児身体発育曲線)に比べて体重が思うように増えないのですが、大丈夫でしょうか?>
こちらもよく相談されます。
この場合は「カロリー不足」が原因となっている可能性があります。
しかし深刻になる必要はありません。
カロリーを補う対策をすれば、赤ちゃんの体重はふたたび増えていきます。
また、乳児身体発育曲線はあくまで「目安」です。
赤ちゃんの成長は個人差が大きく、正常範囲で順調に体重が増えていれば、それほど心配しなくても大丈夫です。
ただし、赤ちゃんの発育・発達に大切なのは「栄養」ですので、ぜひ意識していただきたいと思います。
当院の場合、管理栄養士がおり、ママ・パパからの栄養相談を個別で受けております。
もし、お悩みや不安なことがあれば、ぜひお近くの小児科医を頼って相談してみてください。
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<質問④:離乳食が大変です。どうにかならないでしょうか?>
生後5~6カ月ほどで赤ちゃんは離乳食が食べられるようになります。
YouTubeなどを見ると、何百種類もの離乳食レシピが載っています。
その中から赤ちゃんが喜んで食べてくれそうなレシピを選ぶのはママ・パパにとって、最初は楽しいことかもしれません。
しかし、毎日の掃除・洗濯・炊事・・・その他膨大な家事を対応しながら、離乳食をつくり続けるのは大変なことですよね。
そんな中で無理を続けていると、しだいに離乳食づくりが「楽しみ」から「苦しみ」へと変わっていきます。
私が相談を受けた際には「離乳食はもっと手を抜いていいんですよ」とお話するようにしています。
そうすると、ママさんたちの顔がパッと明るくなります。
離乳食は特別なものである必要はありません。
出汁(だし)や水で薄め、塩味を抑える。よく煮てつぶす。
こんなふうに大人のメニューを乳児用にアレンジすることで簡単に離乳食ができます。
また、最近ではフリージング離乳食のレシピ本がベストセラーになるなど、離乳食の負担を減らす情報が増えていますので、ぜひチェックしてみてください。
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<質問⑤:お菓子など、甘いものを与えすぎていないか心配です>
さきほど「栄養不足」について取り上げましたが、現代の日本においては不足よりも「過剰摂取」の方が心配です。
特に白砂糖を使った「甘いもの」は、人間の根源的な欲求に作用して、摂取するともっと欲しくなってしまいます。これは赤ちゃんも同様です。
子どもが喜んだり、大人しくしてくれることから、お菓子を与えたくなってしまう気持ちはよくわかりますが、糖分の過剰摂取は「過体重児」(かたいじゅうじ)になる可能性がありますので、注意が必要です。
では、甘いものは一切ダメなのかというと、そんなことはありません。
例えば干し芋など、自然由来の甘味を感じる食べ物をおすすめします。
過剰摂取は「糖分」に限りません。
以前健診をした際に、お子さんの「手が異常に黄色くなっている」ということがありました。
ママもお子さんの肌が黄色くなっていることに気付いておりませんでした。(四六時中一緒にいるので仕方のないことです)
お話しを聞いてみると、お子さんはニンジンが大好きで、一日にスティックで3本は食べているとのこと。また、人参やみかんの入った野菜ジュースも頻繁に飲んでいるようでした。
この場合、「カロテン」の過剰摂取により、お子さんの肌が黄色くなっていました。
今回は「ニンジンの過剰摂取」と分かりやすい例でしたが、例えば「野菜ジュース+みかんゼリー+柿」など、それぞれの食品で「カロテン」の総和が増えて過剰摂取となる場合もあるので、注意が必要です。
岩間こどもクリニック
院長 岩間 義彦
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