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自分の脳内を伝えるカードゲーム"Welcome to My Brain"がギフテッド/すべての人に有用すぎる話

こんにちは!ギフテッド支援の活動をしている高校生Kayと申します!
2024年の9月に、ニュージーランドのギフテッド支援について学ぶために、オークランドへ赴き、小学校で行われるギフテッド向けプログラムを調査してきました。
その様子はこちらから。

その中で印象的だったのが、こちらのカードゲーム。

"Welcome to My Brain(私の頭の中へようこそ)"

自分の頭の中がどのような状況なのかを、イラストを通して伝えるカードゲーム、"Welcome to My Brain"です。

このカードゲームは、ギフテッド、ADHD、ASD、LDなどの脳の個性について理解を教育界に広める活動、Neurodiversity in Educationの一環として制作されました。

専門のデザイナーの方がAIを用いて制作したそう。綺麗。


カードは

・イメージカード
・シナリオカード
・シチュエーションカード
の3種類。

さらにシナリオカードには
・ゾーンに入っている(集中している)時
・ストレス下にいる時
の2種類があります。

それぞれの状況の時に、自分はどのようなことを感じるか、脳内はどんな風になるかを表すイメージカードを選びます。その後、一人ずつなぜそのカードを選んだのか説明をする、という流れ!

例えば「自分はストレスを感じている時、まるで人の視線が棘のように刺さる感覚だな」「物事に集中できている時、自分の好きな世界に入り込んで美しい夢を見るような気分だ」と思えば、以下の画像のようにカードを選んで、みんなにその感覚を説明します。
ビジュアルを用いて自分の内面を共有することにより、他の人はただ言葉で聞くよりも、その人の感覚を直感的に理解できます。

例:左がストレスを感じる時、右がゾーンにいる時

また、シチュエーションカードを用いれば、自分がどうすればゾーン状態になれるのかを共有することができます。

全10枚のシチュエーションカード

シチュエーションカードに書かれる要素には
・仕事のぺース
・挑戦と変化
・周りの人
・コントロールできるものと責任の大きさ
・働く場所の環境や雰囲気
などがあり、これらの中から自分が作業に集中したり、モチベーションを維持するために必要だと感じる条件を複数枚選び、それについてみんなに共有します。

また、想像力に溢れてしょうがなくて自分に当てはまる絵がない!という方は空白のカードがあるので、そこに絵を描いて追加することもできます。

実際に遊ぶ様子を見てみよう

訪問した学校では、実際に9-12歳のギフテッド特性を持つ生徒さんたちが遊んでいる様子を見させていただきました。

はじめの子は以下の2枚を選びました。

ゾーン          ストレス

まずゾーンの時に関して、こう話します。
「これを選んだ理由ははっきりわからないけど、なんとなく、自分は何が起きているのかを理解するのに複雑に動いている感じ。
自分は本を読んでいるときは、率直に言うと、ストーリーをテレビの映像のように想像するんだ。」


反対にストレスを受ける状況では、
「長い、長い、長い、長い、とても長い時間に感じる。」と話します。
それを受けて別の男の子が、
「でも、例えば好きなゲームをしている時は、時間が1時間でも1時間でなく感じる!」
と、体感する時間の流れの変化について話していました。

次の子は以下の2枚。

ゾーン          ストレス

「ゾーンにいる時のカードをこれにしたのは、ここにたくさんのことが書いてあるからなんだけど、重要なのは"これしか考えていない"ということなんです。思考がすべて整理されている。」 

ストレス下の時はというと、
「私は頂上に立って、自分が望んでいたと思われることは達成しました。でも、満足感がない。だから次は何?次はどうする?という感じ。」
それを聞いた別の子が
「どうやって山から降りればいいんだ?とも思うよね」と言い、
「そう、そうなんだ」
と彼女は返していました。

続いての子も女の子で以下の2枚。

ゾーン          ストレス

「ゾーンでは自分の周りの全てが穏やかでいい感じに見える。
ストレスの時は人が私に言う"やるべきこと"をやらなければいけない状況。」と説明していました。

またある男の子は、どのカードを選んでいたかは定かではないのですが(すみません)、
「ゾーンの時は深く、本当に深ーーーく考えるんだ。」
「ストレスを感じるときはまるで最悪な鬼ごっこの中だ。鬼ごっこをしていて、残ったのは僕だけで他のみんなは鬼になってしまった。だから14人が僕を追いかけ回して、僕は何度も避けたけど10分後には捕まって…人に追われていて逃げ回っている感じ。」
と話し、別の子が「提出物の締め切りがそんな感じだよね」と言って共感していました。

カードを制作したプロジェクトリーダーであるマドレーヌさんは、以下の2枚を選んでいました。

ゾーン          ストレス

マドレーヌさんは選んだカードについてこう話します。
「私は絵よりも言葉が大好きで、今までたくさんの子供達や先生、家族、友人とこのカードゲームをしてきたから、それぞれの絵に名前をつけて読んでいます。でも、このカードに関してはただ、「ファーーーー」って感じで、言葉ではありません。ゾーンにある時はまるで天が開いて天使が歌っているような感じで、純粋にとてもハッピーなんです。」
「また、ストレス下にいるとき、私は少し怒りっぽくなるんです。カードゲームを一緒にした友人にこう言われました、『あなたはストレスを感じているとき、このライオン(またはトラ)が怒って唸っているようだ』と(笑)。」

また、ストレス下の時について、ある子は以下のカードを選んでこう話していました。

ストレス下にいるとき…


「お母さんが僕に『ちょっと話そう。』と言うんだ。」と、母親が自分を注意する状況を語り始めると、他の生徒も思い当たる節があるようで笑い声と共にざわざわし始めある子は
「そうそう、それで僕はすべてを否定するんだ。これは僕じゃない。僕はそんなことしてないって。」
などと言います。
カードを持つ彼は続けて
「あの人たちはどのくらいの距離を歩いてきたのかも知らないし、どこに行こうとしているのかも知らない。(だから何もわからないのに一方的に叱らないでほしい)」と話す彼に、他の子も「その通りだ」と共感を示していました。

教師の方と一緒に実践

ギフテッドプログラムの訪問を終えて子どもたちとお別れした後、別の学校から来た、教師の方3人を交えて「ギフテッド及びNeurodiversityを知る会」が開催されました。その様子はこちらから
その会の中で、私もみなさんと一緒にゲームをプレイさせていただきました!

ある教師の方は以下の2枚を選び、こうお話していました。

ゾーン:カードA      ストレス:カードB

「私がゾーンの時は、物事のプロセスがきれいに頭の中に浮かんで、『あれをこうして、次はこれをして…』と、カードAのようになっています。
ですが自分がAの思考をしている時に、他の人に「あれをこうして」と指示を出しても、相手はBみたいな状態かもしれない。なにか他の大切なことに悩まされてるかもしれないし、感情的になっているかもしれない。だから相手の頭の中が今どういう感じなのかを配慮して指示は出さなければいけないと思ったことがあります。」
きっと教師の方なので、職場の方や生徒に対してそのような経験があったのでしょう。他の人の脳内について知る大切さを考えさせられました。

ちなみにKayは(誰が興味あるんだという感じですが、)この2枚を選びました。

ゾーン          ストレス

私は昔から一人で行動するのが好きです。先ほどの子が話していたように、目標を達成しても満足を感じられないという側面もありますが、ゾーンにいるときと言われればこのカードを選びます。周りのことを気にせず、ただ、自分が行きたい方向に突き進む感じ。自らが掲げた理想に向かって努力し、達成することに喜びを感じます。それに、一人で物思いに耽ったり、自分対自然だけで精神を集中させたりすることが好きです!

逆にストレスを感じるときは、右のカードで車が規則正しく並んでいるように、厳しい規則に従い、常に周りに合わせなければいけないとき。一人で自由にやりたいことをできないと、強いストレスを感じます。

感想

まず子供たちがカードをプレイする様子を見て感じたのは、そこまで深く考えたり、想像力を働かせているんだということが、カードのイメージが加わることにより、より鮮烈に伝わってきました。そしてみんなそれぞれストレスを感じるときやゾーンのときの感覚が違うということは当たり前なはずですが、本当に全員違うということが驚きだったし、その違いを知ることが純粋に楽しかったです。

なにより、絵の色使いが美しい。色だけでなく、すべてのカードが強い印象を持っていて、素晴らしいクオリティ、素晴らしいゲームだなと率直に感じました。

このゲームが広まってほしい理由

このカードゲームがもっと多くの人にプレイされて欲しい理由!それは

  • 他者理解、自己理解が大幅に深まる

  • 視覚的、直感的に伝えられる

  • 子供から大人まで楽しめる

  • ギフテッド/ADHD/ASD/LD/すべての人向き

  • カードのバリエーションが豊富で飽きない

  • 綺麗!

  • 楽しい!

    カードの絵を使って伝えるので、言葉は必ずしも必要ではなく、小さいお子さんでも自分の思考や感情を伝えることができます。
    ギフテッドの子供たちの中には、心情の言語化が苦手な子が多くいます。拳で感情を伝える前に(笑)、このカードゲームを通して「なんとなくこの絵みたいな気持ちなんだ」などと伝えることができるかもしれません。また、自分を表現するのが苦手という子でも、ゲームを通して自分の内側について他人に共有する良い機会になります。

    マドレーヌさんは、「大人でさえ、今の自分の脳内がどうなっているのかを伝える機会はほとんどありません。」とおっしゃっていました。このゲームをすることは、相手の内面がどのような状況にあるのかを知ることに留まらず、自分自身がどのような時に心地よく感じ、どのような時に重圧を感じるのかという自己理解の大きな助けになります。


こちらはオンラインで販売していて、日本からも購入可能です!
価格は$39.99で日本円約3600円となっています(2024.10時点)。
ご興味あればぜひお試しください✨

サイトURL:
https://www.neurodiversity.org.nz/shop


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