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連作掌編その2

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心の友である図書室の彼についてのお話です。
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2020年10月の記事一覧

小さな陽だまり

小さな陽だまり

何でも器用にこなせてしまう彼は、努力を人に見せることを嫌う。本当の自分も誰にも見せられないと言う。ごく少数の親しくしている仲間といる時も、どこか自分を偽って接していると。偽ると言うと少し語弊があるけれど、感情を隠すと言えばわかりやすいかもしれない。

わたしとメールしている時の彼は、いくらかそのガードが緩くはなるみたいだけれど、日常で顔を合わせる相手である限りどこか演技をしてしまうのだと言う。でも

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星を見る日々

図書委員の彼からのメールは毎回長文で、わたしの返信に答えるでもなく、自らの日々の断片を知らせてくる。群れるのが好きではないクールな彼は、休み時間は教室を離れて図書室に向かうと言う。友達がいないわけではない。むしろ家に泊まりに来るくらいの仲の友達が数人いるらしい。本当のところはクールなのではなく偽クールなのだそうだ。学校では仮面をつけて本当の自分を守っていると言う。

そんな彼が別のクラスの目立たな

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