数年前、30歳になる直前におそらく痛風になった。おそらく、と推定なのは、病院診断を受けていないからだ。
好きなアーティストのライブがてらに来た、初めての仙台。どうせなら温泉に行ったりしようと、他の予定も立てて乗り込んだ。ライブが開催される日付はちょうど「仙台七夕まつり」の期間中で、市内の中心でどこまでも続く商店街は活気に溢れていた。
市内から離れた、日帰り温泉のために来た旅館の玄関先で、突然右足が痛み始めた。それまでに感じたことのない痛みだったが、目の前に待つ温泉がいやでも治してくれるだろうと、なんとなく湧き上がった悲観的な感情を無視した。今、この文章を打っていると痛みを思い出すようだ。
露天風呂の湯船に浸かり、湯煙の立つ朝の温泉街を眺め、心から体が清められていくような気分になる。それでも、湯船に沈む足をマッサージしていると、何となく先ほどまでの痛みは和らいでいくような気がした。やはり朝から温泉に入ることができてとても気持ちがいい。一緒に来ていた彼女との待ち合わせの時間が近づき、湯船から出ようと立ち上がる。
激痛が走る。
信じられないほどの痛みは、まるで小さな雷が、私が上げた膝から踵までを貫くようだった。私はまだ29だぞ!などと、年齢を引き合いに、心の中で幼稚なツッコミを入れ、そんな反応をした自分に失望した。湯船を上がり、先に上がっていた彼女に会うと、おそらくそうだろうと恥ずかしながら伝え、インターネット検索をして痛風の症状を調べてみる。「足首、くるぶし、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも激痛発作・・・」なるほどその通りだな。なんとなく、痛みの中心が、くるぶしから踵にかけて響いている気がする。
その後もとりあえず旅行は継続したものの、それから1週間程度はまじで右足を引き摺りながら生活していたが、酒を断ち、自然治癒に任せた。それから今日にいたるまで、痛風について病院に行ったことは無い。次もし罹れば、一目散に病院に駆け込む。世の男性陣にも当然におすすめしたい。
加齢や生活習慣に伴うからだの異常などというものは、運動をしない大人のたわ言だと思っていたが、まじだった。20代前半で私を脅していた産業医の言葉に反抗できなくなる。いまも私の人生における私の体重は太り調子だ・・・運動しよう。