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私の不安に名前が付いた日
「これからは寝るだけだ」
父は、一日が終わり、そう思いながら布団に入る瞬間が、一番幸せだと言った。
夜は、私にとって長く、怖い、不安との面会時間だった。
寝つきの悪い私は、今日あったこと、過去にあったこと、そしてこれからあるだろうことを考えて考えて、何時間も経ってしまう夜を過ごしている。
子供のころから不安が強いタイプで、苦手なバレーボールが体育である前日、翌日に席替えのある日、無理やり行かされている習い事のこと、明日は母親が急にまた怒り出さないだろうか、授業中先生に叱責されるかもしれない、具体的な不安と何か最悪なことが起きるかもしれないという漠然とした不安、ありとあらゆる不安が尽きなかった。
大人になっても、不安が私を離れることはなくて、近くの精神科に通い始めた。以前、うつ病になったことあがあったので、不安もうつ病の一つの症状だと思っていた。抑うつ症状が段々とよくなっていくのに比べ、不安だけは重く私に圧し掛かっていた。定期受診のある日、主治医は、「不安神経症ですね」と淡々と言った。
不安神経症???
過度の不安や心配により、日常生活に支障が出る病気。
これだったのか。
眠れないほどの不安に襲われて、急に呼吸が苦しくなるのも、外に出るのが怖くて仕方がない時があるのも・・・
私は不安神経症だったんだ。
私が抱えるこの巨大な不安は、病気によるもだと分かったこと、そして、不安障害を患っている人は少なくなくて、同じような不安を抱えている人が日本中、世界中にいることを知ったので、とても痛快な気分だった。
精神科への通院は続けていて、抗不安薬をもらって頓服というかたちで、不安が強い時にだけ飲む薬と、不安を和らげる漢方薬を内服しています。不安はなくなっていないし、治すというよりも、この不安と付き合って生きていくような感じです。