いちばん近いのに、まったく飽きない人。
「襟付きのシャツを私服で着る人って、男の子にもいるんだぁ」
2013年の秋が始まろうとする頃、わたしは目の前に座る青年を前にそんなことを考えていました。
数年後、彼が自分の夫になるなんて思いもせずに。
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noteでは、よく息子の話を書いているのですが、今回はこちらの企画に参加させてもらおうと、
最も近い存在であるひとりっ子、夫についてお話しすることにしました。
※わたし自身はひとりっ子ではないので、あくまでもわたしの目線からみた【ひとりっ子】について書いています。当事者の方のお気持ちとは少し違うかもしれませんがご了承ください。
夫との出会い
当時芸術学科で演劇を専攻していたわたしは、卒業を記念し、たった1人で上演する【ひとり芝居】の企画・制作を進めていました。
【ひとり芝居】とは、一般的な演劇のように複数の俳優が登場するのではなく、ひとりの俳優がすべての場面や登場人物を演じる劇のことです。
作、演出、出演をすべて手がけるために、関わってほしいスタッフさんに声かけを続け、少しずつメンバーを集めていました。
そんな中、舞台の会場がおしゃれなBarだったので、「ピアノの生演奏を入れたい!」と、ピアノが弾ける友人にピアニストとして参加してもらえないか打診をしていたのです。
しかし彼女の都合が合わなかったため、誰か別の人を探していたところ、音響を担当してくれるスタッフが「同級生にピアノを弾ける男の子がいるよ!」と、彼を紹介してくれたのでした。
初めて会った時、まず抱いたのが冒頭の印象。
短く整えた髪に眼鏡、ほっそりとした彼は襟付きのシャツを着ていたのです。
わたしは男友達が多い方だと思うのですが、大阪の友達はみんな「しゃべり」で「派手好き」で、夫のような男の子とは出会ったことがありませんでした。
のちに彼がひとりっ子だと知ったとき、妙に納得がいったものです。
彼の印象は、大切にきちんと、丁寧に育てられた青年、と言った感じでしたから。
ちなみに、わたしには親戚がとても多く、小さな頃からたくさんのいとこたちと一緒に育ちました。
7人いるいとこたちの中で上から5番目、下から数えて3番目だったために、自分の主張をしないと生き残れない環境だったのです(笑)
まるで仔犬のように育ったため、彼の鷹揚さがものめずらしく感じたものでした。
福岡県の博多育ちという彼のバックボーンも、これまでなにわのオニイチャンしか見たことのないわたしには、とても新鮮な存在でした。
ところが、そのおっとりとした佇まいとは裏腹に、ものすごく積極的にアプローチしてくるではありませんか…!
若かったわたしはそのギャップに揺さぶられ(?)、気付けば2022年現在、彼との間に息子まで授かってしまったのでした(笑)
(人生というものはほんとうに、なにが起こるかわからないものです)
【自然にそこにいる】人
夫の、すごいなぁと思うところは『自然にそこにいる』ことが得意だということ。
わたしの実家、友人たちとの会食、夫の会社の方々との交流…。
夫と共に様々な場面に同席することがありますが、どんなコミュニティのどんな集まりであっても、夫は『自然にそこにいる』のです。
うまく言えないのですが、誰にも気を遣わせることなくその場に溶け込んでいる感じ。
しかもリラックスしているので、相手にも心地よい空間を作り出しているのです。
小さな頃から場の心地よさ・悪さに敏感なわたしにとって、どんな場所でもリラックスするのは至難の業。
自然体でいられる夫には、羨ましさと尊敬の気持ちが入り混じっています。
もちろん元来の彼の性格も関係しているのだろうけど、ひとりっ子でおっとりと育ったという環境が、いまの彼を作り上げているのだと思います。
わたしのことを分かってくれてるけど…
多分夫は、世界中でいちばんわたしのことを分かってくれている人だと思っています。
生きていく中で、自分のことを「分かってくれている人」がいるのは本当にありがたいことです。
その反面、わたしの方は彼のことをよくわかっていないんじゃないか?と思うことがあります。
もちろん、他の人よりは彼のことを理解しているという自負はあるのだけれど…。
彼の本当の部分は誰にもわからない、そんな気がします。
ところが不思議なことに、彼のことをすべて理解していないということが悲しいことだとは思わないのです。
お付き合いを始めて丸8年、結婚してから4年目に突入していますが、これだけ長い間そばにいるのにまったく飽きがこない。
それはきっと、彼が底知れない面白さをその身の内にたくさん抱えているからだと思います。
かつてわたしは、距離が近い人のことほど「すべてを理解しなければならない」と思っていました。
でも夫と長く一緒にいるうちに、「わからないことがあるからこそ、人間関係って楽しいし成長していけるんだなぁ」としみじみ感じるのです。
これは夫がひとりっ子だからこそ。
「自分と人とは違う人間なのだ」ということをきちんと理解できているからだと思います。
おわりに
今回は、夫についてお話ししました。
ひとりっ子と、親戚の多い子ども。
福岡県と大阪府。
飄々とした性格と、情熱的な性格。
かなり正反対のわたしたちですが、なんだかんだといいコンビ。
わたしは、夫と息子との家族のことをひとつのチームだと考えているのですが、そう思えるのはそれぞれのポジションで楽しんでいるからこそ、かもしれません。
おばあさんになっても、
「あの人のこと、まだまだわからないのよ〜」と言っていたいな。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。