水葬
マーケットで買ったハムとかチキン
引き連れて、罪悪感もない
猫なで声
フェンス越しに見てろよ
少年は卵泥棒
逃げた魔女は仔羊
仮宿にサヨナラを焚べるのは明け星なんだ
僕らは生き残る為に、厭わない
何かを厭わない
ラクダに揺られて街から街へ
嗚呼、クーラーの効いた夏休みが懐かしいよ
乾ききらない絵の具と
スピーカーに繋いだままのイヤホン
静寂に喪して
小さな蕾のついた花を添えて
起こさないように
好きと呟く
ネットで買った洋服とか自己啓発本
引き連れて、罪悪感もない
丁寧な暮らし
ファインダー越しに見てろよ
娼女は街角に立ち
寝過ごした賢者は遅めのブランチ
仮宿に魂を込めるのはあの日の悔しさなんだ
猿の遺言なんて、科戸の風に
吹かれて凪いだ
バスに揺られて街から街へ
嗚呼、名前も知らない果実の甘さが懐かしいよ
テーブルに伏せたままの読みかけの小説と
虚しく回り続ける換気扇
静寂に喪して
小さな蕾のついた花を添えて
起こさないように
好きと呟く
あの子に貰ったミモザがぷかりと浮かぶ
砂漠の月の様だね
-----------------------------------------------科戸(しなと)の風 風の美称。罪や穢れを吹き払う風。