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虚蝉


お腹を空かせた盗っ人が
パイを盗んだとして

ある日 忽然と
君が消えたとして

藍色の燕が
僕の一部を持ち去ったとして

それは
在るべき
うつせみ

眠る迄、おとぎ話をしよう


幼い兄弟が
親切な老婆を窯で焼いたとして

君が残した
造花が枯れたとして

約束を破った僕が
たったひとり取り残されたとして

それは
在るべき
うつせみ

物語は時間をかけてゆっくりと

街から街へ
人から人へ

いつか君の元へも届くだろう

この世界が眠りにつく迄
ただ、おとぎ話を



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