「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇⑤を更新しました。
小説サイト「NOVEL DAYS」にて、「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇⑤を更新しました。
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コンビニで仕事する手を休めて、そんなことを考えていたら、気分が悪いのですか、という声が聞こえてきて、はっとした。声をかけたのは、バイトの店員だった。歯並びの悪い歯を見せて、笑っている。頭部の半分以上が禿げあがり、残っている髪の毛も薄かった。にこやかに初めて挨拶されたとき、昆虫のような顔をしているなと思った。大きな複眼を持ち、額に触角があるような感じがする(もちろん、実際にはそんなものはないが)。不気味な印象で、暗く、しかも相当に肥満していた。本人みずから「臨月」と自虐的なギャグをとばしていたが、若いバイトからは失笑を買っただけだった。
「ザ・フライ」だと私は思った。クロネンバーグのホラー映画だ。
この男は四十二歳で、フリーターだったが、仕事は、きちんとしている。勤務態度は良好、と前店長からの引継ぎ書にも書いてあった。名前はたしか峰岸勇人だった。
「ちょっとめまいがしてね」
私は適当なことをいってごまかした。
「店長は仕事のしすぎですから」
勇人は生まじめな目つきで私を見つめていった。その真摯な表情に、私はどぎまぎする。
「からだには充分に気をつけてくださいね。この仕事は、体力勝負ですから」
バイトからアドバイスされてしまった。
見た目は気色悪いが、ナイスガイだ、と私は思う。
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