「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇⑫を更新しました。
小説サイト「NOVEL DAYS」にて、「ストーカーレポート」第2話アキバメイドの悲劇⑫を更新しました。
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コンビニの缶ビールが置いてあるコーナーの前で、私はぼんやりと品揃えを眺めていた。私の知らない新商品の銘柄がいくつか入っていた。ほうと声を出す。新商品は立ち止まることを知らない。毎日のように発売され、売れない商品と交換されるのだ。
店員が小走りでやってきて、
「店長」
と声をかけた。
「元店長だ」
私は訂正した。
バイトの峰岸勇人だった。電話で呼び出されたのだ。
「人件費削減なのか、スタッフが少なくて、シフトがタイトで、なかなか店長が住んでいる町までいく時間がとれないのです」
勇人は弁解をした。「でも、どうしても聞いてもらいたかったのです。店長にも関係している話ですから。手短に説明します。ある日、由比信之助の元妻と名乗る女のひとから電話がかかってきて、私の銀行口座にお金を振り込みたい、というのです。例の、先日、店長といっしょに公園にいて、突然死した由比です。救急車を呼んだりして、大騒ぎになった。幾分警戒しながら、どういうことですかと尋ねると、もともと由比のお金ですから、由比の息子であるあなたに全額返したい、というのです。しかもその金額を聞いて、びっくりしました。信じられないくらいの大金だったのです。どう思いますか」
どう思いますかといわれても、もともと私が由比の元妻に提案して実現したことだ。
「話がうますぎて、こわいのです。新手の詐欺グループか何かじゃないかと思って」
「大丈夫だ。たしかに、由比信之助の元妻だ」
「どうしてわかるのですか?」
「わかるからわかるのだ」
「ふうん」
勇人は納得したような表情になった。
「店長がそういうと、本当にそんな気がします。不思議ですよね。なぜなんでしょう?」
「嘘を言わないからだ」
「なるほど。嘘をつかない人は大嘘つきだという話がありますが、店長はそれに当てはまらない気がします」
勇人はどうやら納得したようだった。
「わかりました。一週間以内に相手に電話して、返事をします」
「それでは、駄目だ。明日にでも連絡しろ」
「どうしてですか?」
理由はいえない。きみは、かっきり五日後に死ぬとはいえなかったからだ。