小腸がんと私⑩

入院中のある日
ダチョウ倶楽部のメンバーが
自殺したニュースを聞きました

ついに、思いました
私も死んでしまいたい
自殺の方が楽だ


手術までまだ1週間もあり
途方もない気持ちと向き合うのが
本当に疲れてきた頃

毎晩眠れなくなり

多分少しウトウトくらいは
していたのかもしれませんが
眠りが浅いために
ずっと起きていた感覚になっていました

特に明け方になると
本当に気持ちのやり場がなく

どうしようもない時は
夫や妹にLINEをして
その返信をずっと見つめながら
時間をやり過ごしていました

ある日看護師さんに
「眠れてますか？」と聞かれたので
「眠れてないんです」と答えたら
こう聞かれました

「死んでしまいたい、消えてしまいたい、
と思うこと、ありますか？」

確かに、自殺で死ねるなら
その方が楽だと思ったばかりでしたが
死にたい、と思うわけではないのです

死にたいわけ、ないでしょ
と受け取ったのが正直な気持ちでした

でもこの複雑な胸中を言葉で説明できず　

「今すぐ死んでしまえるなら楽だなぁ、とは
思います」と答えました

するとまもなく主治医がやってきました　　

「伊藤さん、そんな気持ちになってたの
気がつかなくて、ごめんね
今日は朝のうちに
心療内科を受診してね
旦那さんにも電話しておいたから」

「心療内科、どうしてですか？嫌です」

「一度受診したら気持ちが落ち着くと思うよ、
とりあえず行ってみて」

主治医が去るとすぐに
カウンセラーのような人が来ました

その人は私にいくつか質問をしてきました　

どの質問も、
私が弱い人間になってしまったような気がして
とても嫌なものばかりでした

・やる気が出ない、と思うことはありますか？
・何かを見て感動することが少なくなったと思いますか？
・人と会うことが億劫だったりしますか？
・自分という人間がどんな性格か、思い出せないことがありますか？

こんな感じで、とにかく
「今までできていたのに、できなくなった」
と思うこと感じることはありますか？
という趣旨のものばかり

ちなみに現状、全部YESでしたが
適応障害との診断がありました

私は半ギレで
「病気で出来なくなったことは
精神疾患にあたるのですか？」と先生に
質問しましたが

「伊藤さん、眠れないというのは立派な
精神疾患なんです
薬を出すので飲んでください」と返され

納得のできない私は
付き添いの夫にもたれかかってまた泣き

バカにしてる、精神疾患だって
こんな状況、
受け入れられなくて当たり前でしょう
眠れなくなって当たり前でしょう？
私が適応障害なんてそんなはずない
こんなにしっかり向き合って　
どうすればいいか毎日考えてるのに

それに「できるのに、しない」のではなくて
「できないだけ」なの
精神的にできないのではなくて
物理的にできないだけなの！
何かを見て感動なんて
してる場合なわけないでしょう！
やる気って？
何に対してやる気を出せっていうの
食べられもしない、飲めもしないのに！

その夜から看護師さんの管理で
心療内科のお薬を
飲まないといけなかったのですが

頑として飲みませんでした

私は適応障害ではない
あれよあれよでこうなって
悲しくて眠れなくなるのは当たり前
絶対に精神疾患なんかじゃない

頑なにそう思っていました