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【小説感想】怪談喫茶ニライカナイ 蝶化身が還る場所


前編の感想は別記事で。記事の末尾にリンクを貼っておきます。

前編の感想は割と後ろ向きというか、作品の特徴を挙げていくと
どうしても長所より短所の方が目立っていて、少し歯切れの悪い
記事になっていたような気がします。

正直なところ、難点はあるけど、それでもこういう長所があって
面白い作品だよと他人にすすめるのは難しい気がする。
だって、難点について、そこが気に入らないと思う人にとっては
欠点以外の何物でもなく、結局そこが分かれるのが個人差でしか
ないというか。欠点について耐性をもっているか否かというだけなので。
前編に対する評価はそんな感じです。

土台作りの前編、攻勢に出る後編

タイトル通りですね。前編がイマイチ面白く感じられなかった
理由として、色々なことに対して踏み込みが浅く、煮え切らない
というものでした。

これを前編は土台作りにあてているという前提で考えれば、納得が
できます。ふりかえると、前編を読んでいて、この謎は後編で
回収するから謎のままにして触れない、みたいなことが多かった
気がします。

とはいえ、土台作りの役割だけに終始しているというわけではなく
ちゃんと前編にも物語性はありますし、特に前編ラストは鮮やかな
落とし方だったと思います。

攻勢の後編

前編とは打ってかわって、後半では敵も味方も本気で攻勢に
入ります。出し惜しみなしって感じですね。

どこか安全圏からの冒険とか様子見的だった前編に比べると
味方にしっかり危険が迫るし、真相にガンガン踏み込んでいく。

前編では姿を見せただけで終わった敵側の重要人物の
牛尾ミチルもキーキャラクターとしての存在感を示して
しっかり物語に絡んでいきます。
魅力的なキャラクターだったなぁと思います。

あと後編から初登場の彩子も良いキャラだったし
遅い登場の割には良い活躍をしていました。

物語の終幕に向けて、綿津岬という舞台そのものに
滅亡の危機が迫っているというのも
メリハリという意味でちゃんとスケールが大きくなっていて
良かったと思います。

少しツッコミどころはあるが……

前編でも触れた、主人公たちに対抗手段がないのに
丸腰で怪物的存在に向かっていく問題。
これについては後編でも相変わらず。

ただ、これについては作中でフォローが入っているのか
どうかはわからないけど、解釈次第で納得のいくところはあって

雨宮に関していうと、浅葱を救いたいという思いに取り憑かれている
といっていい程の執念を見せている、という描写があり
それゆえに危機感が麻痺しているとか、自分の身が惜しくなくなっている
状態があって、と考えれば説明はつきます。

それから仲間たちに関しては浅葱に助けられたこと、雨宮への感謝があり
恩義の糸で繋がっている関係と捉えれば、雨宮を助けるために協力するし
そのために無茶をするというのもわかる。
あと割と人の良い人たちで、隠れたヒーロー気質があるのかなとは思った。
特に雨宮。

前編で挙げた難点について

前の項目のところ以外で言うと、前編で挙げた欠点は
概ね解消されていたように思います。

ただ、だからといって前編の評価自体は変わりません。
あと作品全体の中で脂ののっている部分が後編に集まって
偏っている気がして、それはあまり良くないのではと思った。
極論、前編つまらない、後編買うのやめよ。で終わりだからね。

まとめと雑感。

最後まで読んだ上で俯瞰して見れば、何だかんだ良い作品だったなと
思います。八尾比丘尼伝説をベースにした物語は面白くはあったけど
既視感はありました。

あと、この作品は前編でも思ったけれど蝶というモチーフの扱いが上手い。
自分の小説にも蝶を登場させたいなと思った。

ムードメーカーとしての日向の存在が良かった。
あえてだとは思うけど雨宮と比較した時に臆病だったり
頼りなかったり、言動が少し幼かったり
というところで雨宮とは違う役割、存在感を発揮していてよかった。

……以上。おすすめかどうかについては迷うところ。
ただ、前編は買ったよ、という人がいたら
どうせなら後編まで買ってみようよ。と言いたい。

あと下に前編の感想もあるので、興味があれば
(長文かつ否定的感想注意)


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