プラの植木鉢を5万円で売る。
NHKのEテレでみた。
↓このプラスチックの植木鉢🪴を、ショップで5万円で売っているらしい。新品ではなく、40年間使い古されたやつ。
司会のひとが質問した。
「その植木鉢、この後なにか加工して売るんですか?」
「いえ。ただ、徹底的に洗います。ものすごく時間をかけて。」
そして、お店に並べる。
現在までに3つ売れたという。
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「D&DEPARTMENT PROJECTという店は、趣味の良いオーナーがセレクトした品物を並べたショップ、ではない。
彼は思想運動をしているのであり、店舗はその活動の一形態。だから店名にPROJECTと付いている。」
たしか、こんなようなことをデザイナーの深澤直人が言っていた。
「5万円」というのは、植木鉢それ自体ではなく、売り手の思想に値段が付けられている。
日本では昔から、「モノに魂が宿る」と言われてきた。それは、そのモノが作られるプロセス、つまり人間の労働に対する敬意も含まれていたのかもしれない。
買った物を長く大切に使うには、それに対する敬意が必要だ。だから売り手は、客が敬意を持って買ってくれるような売り方をしなければならず、買い手は、すぐに使い捨ててしまうようなものを安易に買ってはいけない。商品のデザインという目に見える部分だけではく、売り方や買い方まで考える必要がある。
すぐに飽きてしまうモノとは、安価なものとは限らない。価格は高くとも、「流行り」のデザインのものはすぐに廃れる。「流行に従う」ということはイコール「他人の目を意識してモノを選ぶ」ということ。ただ現在では「わかりやすいみんなの憧れ」というのは少なくなってきており、買い物の仕方にも変化がみられるとのこと。
つまり、買い物をするときの基準が「自分が他人からどう見られたいのか」ではなく「自分がどれだけ納得/共感/支持できるか(モノのデザインや、その思想を)」という方向に変わってきているのではないか。Instagramで生産背景を長文で説明したブランドが人気なのも、そういった理由があるのかもしれない。
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番組で司会の方の「いまオススメの一品を!」とのリクエストに対し、ナガオカケンメイは使い古された植木鉢を紹介し、司会者と視聴者は意味がわからなくて困惑した。値段を聞いて失笑した。
でもその真意はなんだろう。
彼は何を伝えたかったのか。
「プラスチックは捨てなきゃいい」と言った彼は環境のことだけを考えていたわけではないはず。
「プラスチックは長く使い続けることのできる素材であり、本来はロングライフな材料だ。
それなのに生産する企業も、購入し使う人々も、それをチープなモノとして扱い、全く敬意を払っていない。現在の私たちのプラスチックに対する態度は、モノを侮辱している。」
もしかしたら、そういった怒りを伝えたかったのかもしれない。
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モノを通して考える。
思想の受け皿としてのモノ。
だから買い物は面白い。
意志を持って、敬意を払って、買い物をしたい。
彼が言っていた。
「意志なき買い物は、単にモノが手に入っただけ。」
(Instagram @factoryzoomer_staff より)