「人事」を四章限で整理してみた
私は二つの会社で企業内大学を立ち上げました。
半年から9ヶ月ぐらいの間に、ビジネスに必要な知識を学ぶミニMBAと呼ばれるもので、経営戦略、会計、ファイナンス、マーケティング、サプライチェーン、そして人事といったマネジメントとして必要になってくる知識を一通り教え、その間に社外の講師の講義を入れたり社内のリーダーとの対話を交えたりすることで参加者の視座を引き上げるものです。
私は全体の設計と運営をしながら、自分自身は人事のパートを担当し、人事をやったことがない将来のリーダーたちに人事とは何かを教えていました。
私は営業、マーケティング、経営企画と渡り歩いてきた、いわゆる人事畑だけで生きてきた人間ではないので、人事ではない人にどのように説明をするのかについてそれなりに工夫をしました。
具体的には、二つの軸を使ったマトリクスを使って「人事」と呼ばれる分野を分け、必ずしも人事部が人事を行うのが全てではなく、むしろ人事以外のマネジャーやリーダーがどう「人事」をするかが大切であることを説こうとしました。
人事って普通の社員からは見えないところが多いかと思います。
しかし、ここからなんとなくの全体像がつかめるようにまとめてみましたので、人事の興味がある方は読まれると良いかもしれません。
一本目の軸 人の見方 - コストか人か
四象限のマトリクスを作る上では2本の軸が必要です。
人と組織、そしてマネジメントを考えるときに必要になってくる最初の軸は、人をどのように見るか、です。
マネジメントとして人を見るときに必要となってくる見方は、
1. 人とコストとしてみる
2. 人と人としてみる
の二つです。これで一つの軸になります。
ちょっと乱暴なので、もうちょっと解説しましょう。
人とコストとしてみる、というと嫌な気分になる方も多いかもしれません。しかし、会社が人を雇って給料を払っている以上、人は明らかにコストです。しかもほとんどの会社で経費として最も割合が高いものになっているのが人件費ではないでしょうか。
それだけの費用をかけているのだから、それに見合う成果は当然期待されるわけです。言い換えると、コストをかけているのだからリターンを期待する、という視点です。
この考え方は一方で、人を部品的で固定したもの、発展しないものと見ているようなところがあり、人を増やせばそれに応じた成果が上がると考えてみたり、機能しない人は誰かと入れ替えるといった考え方になってきます。
つまり、人の能力や意欲を固定した静的なものとして扱っている視点であり、まさしく「人(材)」という考え方になります。
軸の反対側の極は、人を人としてみる考え方です。
当たり前ですが社員は人間です。それぞれの考えや想いを持って組織に集まってきています。意欲は変化するでしょうし、仕事を続ければ能力も上がってゆくでしょう。また、人と人との交流によって、すなわち掛け算によって思わぬイノベーションが生まれることも出てくると思います。
こちらの考え方は言うなれば、人は変化してゆく動的で有機的なものであるという考え方に立っています。こちらの考え方での人は「人(財)」。財産ゆえに大切に守り、投資をして育ててゆくような性質のものであると考えます。
一見、正反対の考え方のようにも見えるかもしれませんが、実はどちらの考え方もマネジメントには必要です。
二本目の軸 - 仕組み - 作るか使うか
二つ目の軸は、一つ目の軸に比べると至極分かりやすいものです。
つまり、人事に関する仕組みを設計して作るのか、すでにあるものツールやルールを理解して使いこなしてゆくのか、です。
人事に関する仕組みが必要になってくるのは、それが人の人生や生活に大きな影響を与えてしまうからです。
具体的には、地位やお給料が人事によって変わってしまいますので、それが変わる時の妥当な理由が必要となりますし、ルールの適用には一貫性が必要となります。
また、ここには世の中の変化を反映させる必要があります。
PEST分析で出てくる、政策(Politcs)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の変化に合わせ、社会のルールに添いつつ、他社との差別化ができるような仕組みを作らないといけません。
分かりやすい例を出すと、法律の変化では男性育児休職であったり、社会の変化では在宅勤務やリモートワークの適用などがそれに当たるでしょう。
仕組みを作る側にはそれなりの専門性が必要となりますが、一方で使う側は、なぜその仕組みがあるのか、その仕組みの良さを最大に活かして組織を上手に運営するにはどうしたら良いのかを考えてゆく必要があります。
人事部の人に任せるのではなく、自分から理解しにいって使いこなすようになると組織の力をうまく引き出せるようになります。そもそもそのように仕組みというのはできているわけですから。
人事のマトリクス
さて、二本の軸を組み合わせると以下のようなマトリクスができますね。
それぞれの象限に何が入ってくるのかを見てゆきましょう。
読みやすいように、それぞれをコラムに分けてゆきますね。
全体を見渡す
人事の施策としては他にもありますし、抜けているものあるかと思いますけれど主だったものは網羅しているのではないかと思います。
(思い出したものがあったら追加してゆきますね。)
また、無理矢理スパッと分けてしまいましたが、実際にはライン上に乗るようなものもあるのではないかとは思います。
…とはあれ、ここまでをまとめて全体を見てみると以下の図のようになります。
全般的に、左側の仕組みを作るのが人事部の役割になってきますし、右側が人事部が作った仕組みを事業部門やスタッフ部門がどのように活用するかになってきます。
会社にもよりますが、実際には人事が先に仕組みを作るよりも部門側が組織の戦略にあった人の活用と育成を行うために必要な仕組みを人事部に依頼して作ってもらうようにした方が効果的です。
下半分のところで左から右のピンクの矢印で言いたいのは、人事部が作る仕組みというものは人を集合的に扱っているので、個人個人の違いまでを細かく反映してはおらず、個別最適をするのは部門側のマネジャーの役割であるということです。
もちろん、チーム・ビルディングの設計などは人事部の人に相談してやっても良いでしょうけれど、よほど凝ったものでもない限り部門のマネジャーでも簡単にできる(リンク先に例があります)と私は考えています。言い方を変えると人事部の人を上手に使うことが必要ということでもあります。
また、右半分のブルーの矢印で言いたいのは、人財から人材への考え方の移動はマネジメントとしての視点が上がってくると必然的に起きてくるということです。
組織運営をするようになったり、予実管理をするようになってくると自分の組織にどのくらいの人がいて、その人たちの働きかたで業績が変わってくるとはわかっていながら「生産性」や「効率」に目が向きます。そして、必要な組織改革や人材配置、採用を行なってゆくことになります。
結局のところ、人と組織をうまく動かしてゆこうと思うとこれら四象限全てについてよくよく分かっている必要があります。
世の中も変わってきていて、今まで左の象限にあったものが右に移ってきたり、マネジメントが考えていた人材の考え方を現場がしなくてはならなくなってきつつもありますので。
そんな中で、ここは人事部だからと自分の仕事ではないと諦めるのではなく、人事部に対して仕組みを変えるように働きかけることも大切になってきます。
それこそがこれからのマネジメントやリーダーの役割ではないだろうかと私は考えています。
人事部だけが人事をやっているのではありません。
人事はもっと解放されて然るべきであり、人事をやるのは実はあなた自身でもあるのですから。
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