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「ととのえる」を整えて考えてみた

数年前、そうですね…ダイエットをして体質を変えたあたりから常に意識するようになったことの一つに「ととのえる」があります。
もっとも、この言葉を使うようになったのは割と最近で、その前は「コンディショニング(Conditioning)」と言っていました。

コンディショニング。
美容や理容ではよく使われる言葉かもしれないですね。
あと、エアコンはAir Conditioningの略で「空調」として馴染み深いと思います。
フィットネス分野では体を動かした後のクールダウンや整理体操のことや体調管理をコンディショニングと呼ぶこともあるようです。

日本語にすると「調整」でしょうかね。
そして、この漢字の熟語の両方ともが訓読みでは「ととのえる」となります。

「ととのえる」とは

あなたが「ととのえる」を漢字変換すると、どちらが先に出てくるでしょうか?
整える」でしょうか。「調える」でしょうか。

同じ音でも二つの「ととのえる」には微妙な違いがあります。
普段は意識的に使い分けてはいないかもしれませんけれど、敢えてここでは使い分けようとするとどうなるのか考えてみます。

「整える」方でパッと浮かんでくるのは「整理」。
あるルールに沿って、あるいは望ましい状態、きちんとした状態になるように物事を整然とした片付いた状態にする…というのが私のイメージです。

乱れた状態、乱雑な状態を綺麗な状態にととのえてゆく…
わかりやすいのは、机の上の整理とかでしょうか。
子供の頃に親に「もうちょっと片付けて綺麗にしなさい。整理整頓!」みたいに、誰しもが言われたことがあるのではないかなと思います。

一方、「調える」方では、「調整」がすぐ出てきますね。
「整」の字、入っちゃっていますけれど。
あとは「調査」とか「調子」、「同調」とかかしら。

これらの言葉に共通しているニュアンスとしては、デコボコしていたり、違っているものを均して、ちょうど良い塩梅になるように持ってゆくことでしょうか。
そして、結果というよりはその過程のことを、結果的に「整った」状態になるための準備であり作業のようなものを指しているように私には思えます。

冒頭で触れたコンディニングの意味をどちらかに当てはめようとすると、「調える」の方がしっくりきそうですね。
その上でさらに考えたいなと思うのは、調えるにも少なくとも三つ、いや、考え方によっては四つあるのかな、と。

思考(頭)を調える

思考を調える。
これの「整った」状態というのは、集中して物事に取り組めていて、頭がいい感じで回転し、良いアイディアがまとまってゆくようなことかなと思います。
それができるようにどう、調えると良いでしょうか?

頭の中にあることを全部外に出してリスト化してみるマインド・スウィープと呼ばれる手法がGTD(Getting Things Done)にあります。
あちこちに情報が散らばっていると集中もしにくいので、自分自身が一箇所に集まった情報をコントロールできるようにするのがこの手法の意図です。

集中し続けることができるように、邪念や誘惑を断つというのもありますね。
目の前のことだけを考えられるように、視界に余計なものが入ってこないようにしたり、静かな場所を移動して作業をできるようにしたり。
甘いもの(ブドウ糖)をとって頭に栄養を補給したり、快適な室温にするというのも効果がありますね。

一人ではなくグループで仕事をする時であれば、「調える」はファシリテーションのことを指してくると思います。
アジェンダを決めたり、話し合いやディスカッションのグラウンド・ルールを定めてみたりして、考えがあちこちに行ったりグルグルと出口がなくなったりすることを防ぐことでグループの思考を調えて行く、考えやアイディアを調整してゆくということなのかもしれません。

心を調える

心を調える。
これは穏やかで冷静な状態、気持ちを落ち着けるようなイメージでしょうか。
自分の感情や誰かの感情に振り回されずに、あるいは、気がささくれだってネガティブな気持ちになってるところから前向きな気持ちになれるように。
あるいは、その場、その状況において望ましい心の状態に自分自身を持ってゆくことを言うのかなとも私は思います。
そのことを別の言い方では「感情知能」や「EQ」とも言いますね。

心を調えると言うのは必ずしも感情を押さえつける、抑制すると言うものではないと私は考えています。むしろ、その場に必要となってくる感情を自分の中に起こしてゆく方が調えていることになるのではないでしょうか。

そのためには、まず自分の心の状態を知ることが大切ですよね。
前項でマインド・スウィープのことを出しましたけれど、それと同じように自分の中にどんな感情が今あるのか、起きているのかについて自覚的になるところがスタートだと思います。

次に、自分の感情を作り出しているものが何であるのかについて考えてみる…
ここはリフレクションNVCの手法が活用できそうです。つまり、今自分の中にある感情とそれを引き起こしている目の前の出来事、そしてその感情を作り出している自分の価値観(あるいはニーズ)を明らかにして行きます。
これをやることで、突出した情動が少し落ち着き、心が調ってゆきます。

瞑想やマインドフルネスをイメージする人もいるかもしれませんけれど、それらでやっているのが、自分の心の状態や細波を調えてゆくことであり、呼吸を調えたあとに行うのは必ずしも「無心になること」ではありません。
むしろ、自分の心の動きをじっと眺める、感じるようなことをするのが瞑想ではないかなと私は考えています。

体を調える

体を調える。
まさしくこれは体調管理のことです。
睡眠、食事、運動、規則正しい生活…心身ともに健康な状態な状態を作り出すために行うこと全てが体を調えることになると思いますし、そこからさらに発展して自分の理想とする体型や見た目になるように生活習慣を調えてゆくことも含まれるでしょう。

忙しいビジネスパーソンは、これをつい疎かにしてしまって体を壊してしまったり、暴飲暴食や不規則な食事で崩れた体型になってしまったりしています。
体から発せられるサインのようなものを見逃していたり、気づいていても無視していたりするとあとになってから取り返しがつかないことになることもしばしばなのではないでしょうか。

でも、いわゆる健康法や食事法って星の数ほどありますよね。
ダイエットとかフィットネス、エクササイズみたいなものを考えてみると、もうどれが良いんだか分からなくなるくらい色々な手法や考え方があります。

そこで、まず自分の体のことを知るのが最初なのだと思います。
そしてそれを常にモニターをする習慣を作る…それは体温を毎朝測ることかもしれませんし、お風呂の中で自分の体を眺めることかもしれませんし、体重計や体組成計に乗ること、カロリー計算をすることかもしれません。
私の場合はApple Watchを使っているので、睡眠時間やその深さ、運動量や心拍の状態は常にモニターされており、日々確認をしています。

自分の体の状態や癖のようなものがわかったら、次は生活習慣をどのように変えてゆくかになってきますね。
睡眠時間、食事制限、運動…改善するなら何に取り組んでも良いとは思いますけれど、大切なのはそれをルーティンにして継続してゆくことだと思います。
継続してゆくからそれが当たり前の自分を作り、そこに向けて自分を調えることにつながってゆくのかな、と。

全体を調える

思考(頭)、心、体と順番に個別で調えることを書いてきて気づくのは、これらが連携していることです。
つまり、体が調うと心も整い、心が調うと思考も調う…みたいな繋がりです。順番は逆の人もいるでしょうし、状況によっても変わってくるのでしょうけれど。
あるいは、心が調っても思考が調っていないので、心が乱れてしまったりするようなこともよく起きているのではないでしょうか。

だとすると、調い方に偏りが起きないよう、全体を調えることが求められるのでしょうし、ひょっとしたら調えてゆく上でそれが最も重要かもしれません。

思考と心と体のバランスを考える。
どこかだけを過度に使っていないか、ちゃんと休めているか。あるいは、どれか調整をしてないものがないか。

使っていない知覚を使ってみる、もありかなと思います。
現代のビジネスパーソンが最も使っているのは視覚であり、次が聴覚でしょうか。触覚、嗅覚、味覚はどこかに置き去りしていないでしょうか。
例えば、お昼ご飯食べながらパソコンで仕事していたり。その時のご飯の味って残ってるでしょうか?ひょっとしたら何食べてたのかも一日経ったら忘れていたりして…

そう、全体を調えるためには、自分の全体を知ることが大切なのでしょうね。
それは個別での調え方について書いてきた中にもあったことですけれど、まずは自分の状態を知ること、自分の全体は何で、今どこは使っていて、どこは使っていない、ないしは休めていないのか、を。

…って書いてみて、これって簡単なことじゃないよね、って思いました。
自分の全体を知るなんて本当にできるんだろうか、って。
調えるについて「整えた」からそう思えたのかも。

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いたる | 外資系人事の独り言
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