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WEB詩誌「どうやら桐尾さんの恋路は茨の道らしい」

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プロローグ:桜の木の下に一人佇む少女。それを見る少年。(一部抜粋)

4月の薄桃色の風が、彼女の黒く長い髪をなびかせる。

透き通るような柔肌は散る桜の如く、今にも消えていってしまうような気がして

僕は思わず声をかけた

「あの…すいません…春は…お好きですか?」

『信仰されている』オオシロソラ

虚ろな目で道行く人々は手元の画面の中で羅列された文字列を信仰している。
仮想の世界の中でデータとして扱われる命は今日もただの数字になった。
断絶された人々がデジタル化され質量を失った対話によって偽の繋がりを享受している。
空想の大衆によって生み出された世論が弾劾を叫んでいる。
存在しない大義名分の仮面をつけた記者は耳当たりのいい甘言だけを書き並べている。

気が付かずに吸い込みすぎた毒物は頭の中を

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『その「職業」とは職業の概論』コロ助

この世には奇想天外な職業が存在する。例えば、特殊清掃業者。これは清掃業の一形態であり、変死、孤独死、独居死遺体の発見が遅れ、遺体の腐敗や腐乱によりダメージを受けた室内の原状回復や原状復旧業務を指す。そんな職業、本当に需要があるのだろうか?などと、思うことがあるだろうが、実際にこの特殊清掃業者の職業がなければ、建物のダメージは回復しないままだし、雇われの大家の収入に関わってくることだし、下手をすると

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『うろ』 板前ウルフ

明日への一歩を踏み出せず
今日1日が終わっていく
宵闇につつまれた僕は被食者となり
獣に食われる恐怖と戦っている

絶望と希望は同じ色をしている
その色を持ってして僕は染め上げられていく
擦れども擦れども、色は濃く深くなっていき
解けた繊維質がまるで花びらのように
はらり はらり
と舞い落ちる

雨が降り始めた
「うろ」の中、身を震わせながら明日を待ち続ける
すがる太陽なんて昇らないはずなのに

『気配』のぞみぞウォッチャー

四月というには春らしくなく
五月というには梅雨らしくない
快晴の光と共に朝起きれば
陰鬱な雨と共に床に入る

寒くなく
涼しくもない
かと言って、夏と呼ぶには物足りない

冷房に目をやりながらも
まだ早いかと扇風機の首を動かす
片付けようかと思いつつ
今晩も青い毛布と共に夢を見る

寒くなく
涼しくもない
かと言って、夏と呼ぶには物足りない

蛍光灯の光に誘われて
網戸に張り付きこちらを見やる

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『朝焼けの空を見ただろうか』山口祐也 

この道も循環していて
始まりもなければ終わりもない
この道もきっといつか
誰かに辿り着く
この大きくて狭い地球の上で
身を寄せ合っているんだ、僕ら

『静かな』 山口祐也

私は夏に死にました
暑い暑い静けさの中でした
あるいは暗い水底でした
あるいは取るに足らない期待でした
あるいは流し台を流れる哀れみでした
あるいは路地で管を巻く怠慢でした
あるいは緩やかな絶望でした
あるいは日陰に寝そべる猫達の夢でした
あるいは果たされなかった約束でした
あるいは風にたなびくお香の煙でした
あるいは日曜日昼下がりの光景でした
あるいはあなたの言葉でした
思い出せないほど繰り返さ

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