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【読書感想#26】王とサーカス/米澤穂信(2015)【ネタバレなし】

【概要】

作品名:おうとさーかす
著者:よねざわほのぶ
発行所:東京創元社
発行年:2015年(文庫本:2018年)
頁数:472頁
ジャンル:ミステリ、サスペンス、社会派、長編

【あらすじ】

海外旅行特集の仕事を受け、太刀洗万智はネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王殺害事件が勃発する。太刀洗は早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…2001年に実際に起きた王宮事件を取り込んで描いた壮大なフィクション、米澤ミステリの記念碑的傑作。

【評価】

5/5

【感想】

このミステリーがすごい!2016年版(宝島社)
2015年ミステリーベスト10(文藝春秋)
ミステリが読みたい!2016年版(早川書房)
の主要ミステリランキングの三冠を達成した傑作ミステリ。

本作は、大刀洗万智が登場する「ベルーフシリーズ」の第二作でもあり、第一作の『さよなら妖精』から10年後の世界を描いている。

評判通りのまさに著者の代表作たる作品であった。
本格ミステリとしての完成度はさることながら、舞台がネパールという異世界観、ジャーナリズムを主軸としたメッセージ性、実際の事件を基にして生まれるリアリティ。
それらが渾然と重なり合い、本作の力を最大限引き出している。

これほど非の打ち所がないミステリも少ないのではないか。
舞台が20年前のネパールという特異な設定ではあるが、確かな作為的な人の営みがあり、それによって渦巻く人々の感情が分かりやすく表現され、とても納得感のある作品に仕上がっている。
それもこれも著者の米澤穂信の筆力によるものだ。
特異な設定であるからこそ、回想部分は一切なく、一連のドキュメンタリーを見ているような気がした。
恐らくこれも著者の思惑の一つだろう。
論理的な謎解き、微細な感情の変遷、作品の土台となるネパールの風景。
すべてが無駄なく適材適所に配され、他の作品と一線を画す完成度を作り上げている。

天晴としか言い様がない。

本作の素晴らしさを取り上げればキリがない。
キリがないからこそ、語るに尽きない永遠の作品とも言えるだろう。
米澤穂信ならこの一作。私はそう断言できる。

ぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

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