
アーサナもいいけれど、やっぱりヤマとニヤマも大切だよね、という話
YOGAS CHITTA VRITTI NIRODHAH.
(ヨーガスチッタヴルッティ ニローダハ)
心の作用を止滅することが、ヨーガである
(『インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ』第1章2節
スワミ・サッチダーナンダ著/伊藤久子訳)
ヨガの最終ゴールは「心を止滅させること」。
ヨガの代表的経典『ヨーガ・スートラ』ではそう定義され、「心の波立ちを制御することができたら、その人はヨーガをしていることになる」ともいわれている。
(※注:本来、「ヨガ」は日本語では「ヨーガ」と読む/書くべきなのだが、ここではヨガとしておく。)
そして、このゴールに到達するために、「アシュタンガ・ヨーガ(八支則:はっしそく)」という方法論に則り実修していく。
話が逸れるが、ヨガの流派のひとつである「アシュタンガヨガ」とは意味が異なるので注意されたい。読み方が同じなので混同しやすいのが難点なのだが、ここでは区別するために、八支則を「アシュタンガ・ヨーガ」、パタビジョイス氏創設の流派を「アシュタンガヨガ」と表記する。
今回の話題にしたいのは「アシュタンガ・ヨーガ(八支則)」である。
アシュタンガ・ヨーガ(八支則)は下記の通りである。
➀ヤマ(禁戒)
➁ニヤマ(勧戒)
➂アーサナ(姿勢・座法)
④プラーナーヤーマ(調気・呼吸法)
⑤プラティヤハーラ(制感)
⑥ダラーナ(集中)
⑦ディヤーナ(瞑想)
⑧サマーディ(三味、瞑想状態)
現代のヨガにおいては、どこのヨガ教室・スタジオ・スクールでも8段階中の3段階目である「➂アーサナ(姿勢・座法)」から練習を行うのだが、最近やはり「➀ヤマ」、「➁ニヤマ」があってこその➂のアーサナだと改めて思い直している。
本場インドのアシュラムでは、ヤマ、ニヤマを実践できなければ、アーサナの練習をするスタート地点に立っていないとされるらしいけれど、だからといって皆さんにお伝えするヨガがヤマ、ニヤマを完全にマスターしてからでないとアーサナに移ることができないというものではなく、➀➁➂は同時進行した方がいいのではないかという説が私のなかで浮上している。
「ヤマ」は「日常生活でしないように心掛けるべき5つの心得、社会的な行動規範」。
「ニヤマ」は「日常生活で積極的に行うべき5つの行い、精神・個人的な行動規範」である。
以下にヤマとニヤマを具体的に記す。
YAMA(ヤマ):禁戒、日常生活でしないように心掛けるべき5つの心得
AHIMSA(アヒンサー):非暴力、不殺生
苦痛を引き起こさないこと。暴力的な行動、言葉、思考を慎むこと。SATYA(サティヤ):嘘をつかない
自分の利益やエゴを守るために、嘘をつかない。いつも正直でいる。ASTHEYA(アステヤ):盗まない
他人のもの・考え・時間・利益などを盗んではいけない。BRAHMACHARYA(ブラフマチャリヤ):禁欲
規律ある生活、生き方をすること。生命エネルギーは必要なところにのみ集中させる。APARIGRAHA(アパリグラハ):貪らない、贈与を受けない
必要以上に何かを所有しない、もっともっとと貪らない。贈り物を受け取らない。
NIYAMA(ニヤマ):勧戒、日常生活で積極的に行うべき5つの行い
SOUCHA(サウチャー):清浄
身体と心をいつもきれいな状態に保つこと。身の周りの空間や環境も。SAMTOSHA(サントーシャ):満足、足るを知る
与えられたものや状況、人々を受け止め、満足すること。常にそれらから学ぶ態度をもっていること。SWADYAYA(スヴァディヤーヤ):自己研究、読誦(どくじゅ)
心を高める働きをもつ書物(聖典、マントラ、名著など)を読むこと。TAPAS(タパス):自制
精神鍛練のために、困難な課題を自らに課し実行すること。規律ある生き方をすること。ISWARA PRANIDHANA(イーシュヴァラプラニダーナ):自在神信仰
自らに備わっている神を信じること。自然の摂理(自然界の法則・掟)を受け入れ身を委ねること。
このヤマとニヤマの実践をしながら自律と精神の向上を目指し、アーサナの練習によって身体を鍛練していく方が心身ともにバランスがいいと思う。
アーサナの練習ばかりしていては、外身と中身のアンバランスが生じるし、肉体次元の練習ばかりでは目には見えない精神などの繊細な部分が伴っていかず、中身はスカスカなんてことになってしまうといっても過言ではないだろう。人間はバランスでできている。心を止滅させるのにアーサナは一翼を担っているのは確かだが、完全ではない。
オフザマット(Off-the-MAT)、つまりマットの上以外の場所における何気ない日常生活の過ごし方や生き方が心の大部分を育て、形成しているのではないかとよく思うようになった今日この頃である。
最初はどれか一つだけ、または自分の心に響いたものだけでもヤマとニヤマを意識して日々過ごしてみてほしい。
毎日の何気ない行いの積み重ね(ヤマ・ニヤマ)と、テクニカルな実習(アーサナやプラーナヤーマなど)によって、貴方はきっともっとシンプルに、優しく、生きられる。
いいなと思ったら応援しよう!
