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ビームス執行役員 土井地 博氏に訊く「これからの地方の魅力とPR」ー2冊目のガイブックを作るなら、あなたは何を載せますか?ー《アカデミーハウス特別インタビュー》

セレクトショップの草分けでありながら、今もなお先頭を走り続けるビームス。「カルチャーショップ」を掲げ、ファッションにとどまらず世界のカルチャーを日本に紹介し続けてきましたが、今、彼らは視線を「地方」に向け、多くのプロジェクトを行っています。
2016年からは伝統工芸品からポップカルチャーまで日本をキーワードにしたアイテムをセレクトし発信する「ビームス ジャパン」をスタート。2022年からは地域の企業や事業者とコラボし日本各地の名所景勝地に常設ショップをかまえる共創型プロジェクト「ビームス ジャパン ゲートストア プロジェクト」を立ち上げ、出雲、日光と相次いで出店しています。
そんなビームスの顔であるコミュニケーションディレクターの土井地 博氏にこの度アカデミーハウスのスマートキャリアサロンにお越しいただくことが決定! 開催を前に、20年以上に渡って宣伝PR活動を行う中で、モノとコト、ヒトをそれぞれ繋ぐ様々な企画をしてきた土井地氏に、これからの地方の魅力とそのPRについてお伺いしました。
インタビュー・撮影

土井地 博(Doiji Hiroshi)
ビーアット代表取締役、ビームス執行役員ディレクターズ バンク室長・コミュニケーションディレクター。ビームスで20年以上にわたってPR宣伝を担当してきた。出雲市出身。出雲観光大使も務める。
@hiroshi_doiji
BEAMS @beams_official @beams_directors_bank
BE AT @be_at_tokyo
旧白洲次郎•正子邸 武相荘 CD @buaiso.official
社外取締役 @outsider_directors

ショップスタッフから入社1年目で東京のPR担当へ

ーー土井地さんのこれまでの経歴を教えてください。

1999年にビームス入社。今年で、24年目ですね。もともとは 大阪のショップスタッフからスタートしました。
当時は地方から転勤というのはあまり前例がなかったんですが、入社1年目で東京へ勤務になって、PRの仕事をすることになったんです。
転勤のきっかけの1つは大阪で経営陣のアテンドをしたことでした。
大学時代から色々イベントの企画をやったり、雑誌関係の方など大阪の情報通な素敵な大人と仲良くさせてもらったりしていたんですが、それを風の噂で聞いたのか、たまたま東京本社の経営陣が大阪来た時のシナリオを僕が考えることになったんです。
大阪といえば、道頓堀など皆さんご存じの観光地も多くあるんですが、そういった王道はあえてなくして、アテンドする人となりに合わせてプランを組んでいきました。
例えば、お連れしたお好み焼きさん。大阪のソウルフードを食べてほしいのはもちろん、実はそのお店が『ブラックレイン』という映画の撮影の際に、松田優作さんが毎晩のように通っていたお店だったんです。社長や副社長の情報も事前にWEBで調べるなんてこともできない時代でしたが、その世代の方ならば好きなのではないかと自分なりに考えてセッティングしました。
結果、お店の食事、店内の雰囲気、店主とのコミュニケ―ションまで、全部を楽しんでくれたんです。
数週間後には東京に転勤になって、そこから宣伝やPRを20年にわたって関わっていました。

宣伝、PRというと、各種メディアの方とかのやり取りもあれば、良さを伝えるための書籍や、プロモーションムービー、広告も作ることもあります。ビームスというのを、外の人に伝える仕事ですね。

土井地氏が担当した書籍

現在は、国内外の企業さんと商品作りしたり、一緒に仕掛け作ったりもしています。
一方で、シニアクリエイティブディレクターとして、会社全体のコミュニケーションを担当しています。ビームスにはディレクターズバンクというタレント事務所みたいな部署があるんですが、事業に合わせて、それぞれの才能をマネージメントする役割です。
あとはビームス初めてのビーアットという合弁会社というその代表も務めています。
社会的な話だと、出雲の観光大使やっていたり、非常勤ですが、大学で教鞭を取っていたり。ラジオのパーソナリティやったり。なんか逆に、なんでも屋さんっていう方が1番しっくりくる気がしますね(笑)
最近だと日本で初めてジーンズを履いたことでも有名な日本の実業家であり初代貿易庁長官である白洲次郎さん、妻 正子さんさんご夫婦が長きに渡りお住まいだった『武相荘』のディレクションもさせていただいています。


仕事ではなく活動をすること

ーー多様な「モノ」「ヒト」「コト」のお仕事の中で大切にしていることはありますか

多分ね、仕事を仕事って思ったことがないんですよね。もちろん大変だし。あくまでも自分の話ですけど、仕事プライベート関係なく、ある程度アンテナを高くして、常に情報を送受信できるようにしとかないと、今の仕事はできないと思っています。
いつか見たものっていうのが 仕事になる可能性が高いので、なんとなく、常にオフでありながら、オンのスイッチを入れている感じはします。仕事というよりは、日々活動だと思っています。

ーーそのきっかけをプロジェクト等、形にするためにはどうしたらいいのでしょうか。

偶然でできるものって多々あるんですけど、何事にも根拠ってあると思うんです。大枠でも的があって、 何を投げた方がいいとか、この力具合とか、この方法やるのが良いのかというある程度の枠はあった方がいいと思います。思いつきでもなんでも、何か動く時には、最終的に捉えたい的は定めるようにはしますね。
実は「とりあえずやってみよう」っていうのはあまりなくて、 意外と慎重なところは慎重です。ただ、僕の場合の共通項としては、その人の人生が幸せになれるような”きっかけ”を作ることは常に思っています
ハンカチ1つでも、アクセサリー1個でも、例えば好きな人にあげるとか、それが繋がって、結婚するとか。そんな幸せになれるような”きっかけ”を作るっていうのがこの仕事の醍醐味ですね。

今の時代に合わせて、地方を見つめなおす

ーー土井地さんの考える地方の課題は何ですか
今は、時代が変わってきているので、何事もその時代時代に合わせた 提案をしていかないとと思っています。洋服だって日本に入ってきてから、たかだか 100年程です。でも逆に和服ってものすごくサステナブルなものとして外国の方が注目していたりする。
だから、振り返るっていうよりは、先人がこう作ってきたものか、作り上げてきたもの、もう1回、今の時代として見つめ直すことが重要だと思います。
「地方」という考え方もそうで、今はウェブなり、SNSなり、情報もコミュニケーションも取り方がガラッと変わってきて、東京にだけ情報が集中しているなんて状況も少なくなってきました。
その中で地方って、自然も多いし、食材も美味しいし。僕はもう可能性しかないと思っています。(地方っていう言い方を変えればいいと思うんですけど)地域の活性化したいと思った時に、変えなきゃ、変えなきゃって思ってらっしゃる方も多いと思います。でもそこは、その本質を変えずに、今あるものをどう時代に合わせて見つめ直していくかを大切にして欲しいです。

ビームス本社の打ち合わせスペース

地方の「わざわざ」は強力なPRになる

ーー魅力を伝える上で必要なことは何でしょうか。

今って「わざわざ」っていい意味に使われていると思うんです。
旅ひとつにしても体験とか、そのストーリーまでも大切にされる方が多い。
しかもそんな「わざわざ」した体験の方こそ人に伝えたくなるものなんです。

美味しい空気とか、人の優しさとか、 体に染みるものとか、あーいい人と出会ったなとか、美味しいもの食べたなって、そこにしかない「わざわざ」した経験ができることは地方の大きな魅力かなと思います。

PRとして伝えることもそうですけど、情報を伝えるだけではなくて、ストーリーとそれに沿った体験をしていただくというのが魅力を伝えるには1番僕は必要だと思っています。

ずっと見ていると当たり前だし普通のものと思ってしまうけれど、違う視点から見ればアメイジングなものになるわけです。
胸張って地元の人たちがそういったもの残して、かつ他の人体験してもらうきっかけを増やしていくのが1番必要かもしれないですね。

2冊目のガイドブックに何を載せたいか考える

土井地氏が担当した書籍

僕、世話焼きなんです(笑)。 いろんな人からすごいおすすめを教えて!と連絡をもらうんですけど、 いつ、どこに、大体何人で、どんな関係性で行くのかを逆に色々聞くようにしています。

そこで考えるのが、その地域の2冊目のガイドブックを作ること。
ザ王道のコースではない、その人にあった地域の魅力をどう伝えるといいのかを考えるんです。

ご家族と、とか。恋人と、とか。いや、1人で行く、とか。それぞれによって内容は変わります。この人だったらどんな体験を喜んでくれるだろうと、どの人にも引っかかるようなマスなものと、好き嫌い分かれそうなコアもののバランスを考えていきます。

あとは、情報に幅を持たせることも大切にしています。
例えば食べ物だと。
1000円、3000円、5000円、10,000円、30,000円。それぞれのお店は出せるようにしてます。どこのお寿司屋さんが美味しいですか? と言われたら、「高級なOO寿司が美味しいから行った方がいいよ!」という人もいるだろうけど、 「あそこのまち寿司、実はランチ1000円なんだよね」という情報の方が魅力的で面白く見える人もいると思うんです。
大切なのは価格ではなく、ちょっと、誰かに言いたくなるような情報を振り幅を持たせて伝えること。
バランスや幅をとって最後にうまくその人のにあった情報を調整してくようにしています。
そうするだけでさまざまな目線で地域を見つめ直せると思います。

決め手の1パーセントを大切にする

でも、情報の究極の部分って、SNSとかウェブ情報、自分で調べるものが99パーセントでいいと思ってるんです。
早いし、情報多いし。でも残りの決め手の1パーセントって、自分が信頼できる人に「絶対これ買った方がいいよ」とか「あそこ行ったらこれ食べてみて」っていう後押しだと思うんです。この1パーセントの情報がとても重要なんだって。そんな感覚を持ってもらえると面白いんじゃないかと思います。
自分と空気感が近い人、この人に言われたらちょっと行きたくなるという言葉にできない信頼感を持てる人を見つけてほしいし、自分自身そんな人になれたら面白いと思います。

広告のモデルを選ぶ時、世界観作るためには外国人モデル使うことはあるんだけど、やっぱり身の丈というか、自分に近い存在のショップスタッフの子が紹介するものの方が反響が大きいこともあるんです。
今はファッションはじめ、多くのものが多様化しています。10代でも情報を知っていて大人な一方で、何十歳になっても若い人も多い。
その中で自分がどの人、もしくはどのタイプと近しいのか。信頼するその人の背景にあるものが何かっていうのは、自身の情報の導き方次第だと思います。

個性が活きれば、チームはもっと面白くなる

ーー次世代リーダーを目指して共同生活をしているアカデミーハウス生に伝えたいことを教えてください。

自分にとって一番大切なものを大切にする。それが今スタンダードになってきている気がします。
しかし、個性を重視していく中でも、絶対的に必要なのは共存だと思います。強制的に型にはまるっていうよりは、自分がこう突き抜けた上で、「あ、でも周りはこう思うのか」って、だんだん合っていくというか、自分中心に整えていくと1番生きやすいように思います。
逆に突き抜けた人の出会った時も、あーそうきたか。みたいに受け入れていくと面白いんじゃないかな。意外性あると、人生は1+1は2ではなくて、破にもQにもなると思うんです。ハッとするとか「!」(ビックリマーク)が 多い人生の方が面白いですよね。

リーダーってその名の通り牽引していく人だと思うんですよ。先頭で旗振って進んでいく。それにみんながついていくっていう。でも、僕は逆に、リーダーはチーム側の方を向いた方がいいと思うんです。
リーダーって、トップに立って何か引っ張っていくっていうイメージがありがちだけど、 僕はもうそういう時代ではなくなってきているんじゃないかなと思っています。本当の今求められているリーダー像っていうのは、ちゃんとチームビルディングもできる人。 一人一人の個性を理解して、チームを作っていく。そうすると、その集団にも個性が出てくると思います。

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