嵐山・鵜飼納涼会
嵐山、嵐峡。渡月橋の上流。夏の大堰川で毎夜行われる“鵜飼”に行ってきた。
15人乗りの屋形舟を借り、船頭が差す棹に任せて、月明かりの川を遊覧。
船首にかがり火を灯した、二艘の舟の鵜飼を見ながら、懐石弁当を食し、酒を飲む。舟遊びの納涼会である。
深い緑の山肌が、西の空の移ろいとともに濃い墨色に映る頃、船の両側に吊るされた提灯に、ローソクの火が灯される。
舟はゆるゆると一艘、また一艘と岸を離れ、川上の闇に吸い込まれて行く。
十六夜の満ちた月の青白い光が、山の木々の間に見え隠れしている。
目に見えるのは、幾十もの揺れる提灯のぼんやりとした橙色と、遥か先に揺らめく、赤いかがり火。
やがて、全ての舟は縦一列に並び、船首と船尾が綱で繋がれ、まるで巨大な龍のように川面を進んでいく。
「ドーン」「パチパチ」。遠くで響いていた鵜飼舟から発する音が、
舟が近づくとともに、少しずつ大きくなる。
上に向かう納涼船と下へ進む鵜飼舟。「ドドーン」「パチパチ」。
音が大きく近づいたと思うと、スーッと目の前を、火の粉を撒き散らし、
かがり火に赤く浮き出された、鵜飼の風景が現れた。
腰に蓑を巻いた鵜匠が、何本もの綱で操る鵜の“水の舞”。
方向を決める船尾の棹と、舟の横板を叩き、鵜に合図を出す後方の棹。
「そーれー」「ドーン」「パチパチ」
掛け声とともに鵜が潜り、漁が繰り返される。
たっぷりと真夏の夜に、納涼の舟遊びが行われた。
そして、もうひとつの見どころは、金魚花火。
一本、六千円の、この場所でしか見れない貴重な花火だ。
バブルの頃は競って、旦那衆が夫々の舟から何本も打ち上げたと言う‥
普通、花火は上に打ち上げるものと知る。
だが、この金魚花火は、火がつくとともに、五つほどの花火の種が
パッと水面を走って広がりキラキラと輝く。
そしてそこから、また別の花火の種が増殖するように、
分かれてキラキラと広がっていく。
なんとも幻想的で不思議な光景である。
十秒足らずの金魚花火だが、十分に楽しめる価値ある時間である。
約二時間で鵜飼は終わる。暗闇から生還しふっと我に戻る。
後は場所を移し、いつもの“曲酔の宴”を堪能するだけ‥
(2010年6月23日記)
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