人類はインド映画『バンバン!』を見て幸せになれる
驚くべき新事実だが、人は幸せになることができる。
起きてる時間の大半を悲観的な空想にうつつを抜かしている類の自称リアリストは「そんなわけないだろう」と切れ味の鋭い(と自分では思っている)皮肉を交えた表現で否定してみせるだろう。だが、そういったひねくれた態度で己を守って見せても、それは薄暗い部屋の中でシャドーボクシングをしているのと変わりはない。蛍光灯の紐を殴ったところでマイク・タイソンにはなれない。それならば、ちょっと勇気を出して一歩踏み出してみるのはどうだろうか。なにも「外に出て、野球しろ」と言いたいわけではない。ただ時には幸せに向かって前進するのも悪くはない。明日のためではなく今日のために。つまり自分が言いたいのは『バンバン!』を見ろ、ということだ。なぜなら『バンバン!』を見れば人は幸せになれるのだから。そう、人は幸福になれる。そのことを、私は『バンバン!』を見て知った。
宗教勧誘みたいな前置きで大変恐縮だが、まず『バンバン!』とは映画のタイトルのことである。そしてもう一つ付け加えると、このnoteはほとんど宗教勧誘と変わりない。幸福への誘いなんて大体宗教のすることだ。とはいえ、宗教勧誘とひとつ違う点があるとすれば、宗教が至るべき楽園が夢想の世界ではなく映画館にあることだろう。
『バンバン!』の話をするにあたり、まずしなければならないのが本作の主演を務めたリティク・ローシャンの話である。いっこうに本題に入らないこのnoteの態度に眉を顰めている人には大変申し訳ないが、この映画を語る上でリティク・ローシャンの話は避けられない。『バンバン!』はリティク・ローシャンの存在によって最大限の幸福をもたらしてくれるからだ。
リティク・ローシャンはやばい。なぜなら顔がいいから。恐らく地球上に存在する言語で彼の顔の良さを正確に表現する語彙は存在しない。仮に存在するとして、一番正鵠に近い語彙は「世界ハンサムランキング6位」という言葉になる。ちなみにこれは公的な記録だ。ブルゾン曰く世界には35億人の男がいるとされている。その35億の中で最も顔のいい男の一人がリティク・ローシャンなのだ。これは純然たる真実として視覚的に我々に訴えかけてくる。その証拠に、映画『WAR ウォー!!』のリティクが登場してその顔面を見せつけるだけのシーンを切り取った公式動画を見て欲しい。これはリティクの顔がいいというだけで3500万再生を突破している。
「はいはい、ハンサムなんでしょ」と呆れ半分で読んでいるあなたに言うが、冗談ごとではない。自分はnoteで太字を使うことは滅多にないのだが、改めて言わせてもらう。冗談ではないのだ。リティク・ローシャンの顔の良さは冗談ごとでは済まされないのだ。
顔を見ただけで心臓が初恋のように高鳴ったことはあるか?声が鼓膜を震わせただけで胸を穿つような衝撃に襲われたことはあるか?御年26の成人男性たる筆者がこのような精神状態になる。どうかこのことの意味を受け止めて欲しい。そして何故、映画の話に入る前にリティク・ローシャンの顔の話をしたのか。それは、『バンバン!』がリティク・ローシャンの顔の良さを10000%活かしたアクション・ロマンス・アドベンチャーだからだ。
そもそも『バンバン!』はトム・クルーズ主演のアクション映画『ナイト&デイ』のリメイクである。『ナイト&デイ』の内容を一言でまとめると「地味で冴えないOLの私(a.k.a.キャメロン・ディアス)が一流スパイのトムと恋しちゃう!?」だ。大変なことである。
『バンバン!』はそんな筋書きを近年のリメイク映画としては(2014年の映画だが)かなり正確になぞっている。ともすれば「リメイク元だけ見ておけばいいじゃん」となりかねないほど忠実なリメイクだ。だが、『ナイト&デイ』を見たことがあるからといって、『バンバン!』を観なくていいということには決してならない。
『バンバン!』が素晴らしく、そして理想的のリメイクだなと感じるのは『ナイト&デイ』という映画の粗をブラッシュアップしてお行儀のよい現代リメイクにするのではなく、とにかく『ナイト&デイ』という映画の最高なところをより超最高にするというスタイルをとっていることだ。
つまり最高のアクションは超最高に、最高のロマンスは超最高に。そして最高のイケメンは超最高になるのが『バンバン!』である。これはなにもトム・クルーズはリティクに劣るイケメンである、ということではない。リティクは明らかにトム・クルーズの演技と笑い方をトレースしているので単純計算でトム・クルーズ×リティク・ローシャン=3000億リティクイケメンパワーになるということだ。それによって『バンバン!』はちょっと人類が映画館で享受してよいレベルの幸福をわずかに越えた幸福ももたらすことになる。
多幸感がヤバい。本当に、『バンバン!』を見終えだときそう思った。胸の中が幸福で満たされている。映画のことを思い出すだけでどんどん幸福感が溢れてくる。キャンディーのように甘い幸せが余韻のように残っている。
ここでひとつ身も蓋も無いことを言うが、イケメンがかっこいいことをすると、それだけで最高になる。そして驚くべきことに『バンバン!』はイケメンがかっこいいことをする映画だ。『バンバン!』の多幸感の秘訣はここにある。これだけいうと「なんだ、単純な映画じゃないか」と思われるかもしれないが、『バンバン!』は「イケメンがかっこいいことをする」に対する極め方がすごい。そこには数学的で複雑なロジックが存在し、その果てにリティク・ローシャンが水上フライボードに乗って二丁拳銃を撃つといったいくらなんでも最高すぎる絵面が発生する。
とにかく本作は最高の部分の最高さがやばく、とてつもなく幸福な気分になれる。そしてなにより『ナイト&デイ』と差別化され、そして独自の要素として輝いているものがある。そう、「トゥメリ」である。トゥメリをご存知か?トゥメリはやばい。トゥメリを見ろ。私はトゥメリを紹介するためにこのnoteを書いたと言っても過言ではない。「トゥメリ」は本作における最も美しいダンスシーンである。煌めくような歌と踊りは、まるで白昼夢のよう。それがトゥメリである。
トゥメリを一言で表すとするなら「視覚と聴覚で得られる最大限の多幸感」である。いつか死ぬ時、走馬灯で流れる映像になにか一つ幸福なものをくわえたいのならトゥメリを見るべきだ。断言しよう、トゥメリは間違いなく走馬灯になる。
便宜的にトゥメリの公式動画リンクを貼らせていただいたが、こちらの拙文を読んで既に「バンバン!を見るぞ」という気になっていただけたのなら、是非はじめてのトゥメリは映画館で観賞することをおすすめしたい。大きなスクリーンと映画館の音圧ではじめてのトゥメリを浴びれる体験は何事にも代えがたい。
リティクが肉体を躍動させるために色香が脳髄を揺らし、リズミカルな重低音が胸を貫く。「こんなことがあっていいのか?」見ながらそう思った。こんなに幸せなことがあっていいのかと。自分で言うのもなんだが本当に宗教勧誘みたいだ。でもリティク・ローシャンはギリシャ彫刻のような肉体をしているわけだし、それがキレキレの踊りでこちらを惑わすので実際神話のようなものである。
「イケメン無罪」という言葉があるが、『バンバン!』におけるイケメン活用ぶりは無罪どころではない。最早社会貢献。「イケメン社会貢献」だ。リティクのイケメンぶりは我々の心を豊かにし、それがやがて社会とかの豊かさに繋がり、PEACE……平和が訪れるのだ。
そして『バンバン!』を見て思ったのだが、言語を越えたものがこの世には三つある。歌と踊りとリティク・ローシャンだ。それらは言語を介さずこちらに語り掛けてくる。説明的な言語を省き、視覚的メディアとして訴えかけてくる映画というジャンルにおいて、『バンバン!』はその究極かもしれない。残念ながら人類の未成熟な言語体系と私の貧相な語彙ではリティクのことを完全に伝えることができないが、少しでも『バンバン!』という映画を見るきっかけとなったのなら幸いである。
それから私がリティク・ローシャンを知るきっかけとなった『バンバン!』のシッダールト・アーナンド監督作『WAR ウォー!!』のほうもオススメなので、是非見ていただきたい。「YRF Spy Universe」なるインドのシェアード・ユニバース映画の実質的第一弾であり、(実質的)第二弾の『Pathaan』が今現在とんでもなく大ヒットしているため、今最も注目すべきインド映画のひとつだ。というか、見ろ~~~~~~~!!!!