どの子も工夫して絵をぐんぐん描き進める三つの指導の原則1
図工の指導にも「原理・原則」があるだろう。
それを踏まえれば、自分は「絵が描けない先生」でも、子供たちに「いい絵」を描かせることができるのではないかとずっと考えてきた。
むしろ、「絵が描けない先生」ほど、「原理・原則」を踏まえた指導をすれば、「絵の上手な先生」よりも良い指導ができるのではないかとさえ思っていた。
「ヒント帳57」では、描画指導において画面構成を支援する学習課題と指導の工夫について紹介した。
自分が子供たちとの毎日でたどり着いた指導方法であった。
今回は、その先、いよいよ「本番」の紙に描き進めていく時の支援方法の紹介をしたい。
子供が工夫して絵を描き進めていくことができるようにするための指導には、次の三つの原則があるのではないかと考える。
繰り返し述べてきたことだが、「自由に描きなさい」は、無責任な指導である。
絵画教室に通っていたり、図工が得意だったりするような「描ける子」はいいかもしれない。
しかし、「描けない子」が困ってしまうのだ。
どうも教師は、「自由」などという一見「子供の主体性を尊重している」かのような指導で、子供を放り投げるようだ。
今回は、上記の三つの指導の原理の中の「1 具体的に子供に問う=具体的に子供に工夫させる」について説明する。
この「原則1」では、次の三つの問い=学習課題を基本型としてきた。
「どこを、どの画材を使って、どのように表したらいいだろうか」
これは、主に線描段階での問い方である。
例えば、山の稜線を表す一本の線でも、「厳しさ」や「悲しさ」を表す線と、「温かさ」や「楽しさ」を表す線とでは、描き方が異なる。ごつごつとした鋭利な線で描くのか、丸みのある線で描くのか、子供が工夫を引き出せる。
彩色においても、絵の具ならば筆の動かし方や、水加減なども変わってくるだろう。
彩色における色選びの工夫では、こう問う。
「中心になるものが周りのものより目立つようにするには、どんな色を使ったらいいだろうか」
彩色では、中心と周りの色を対比して考えるとよいという表現方法の一つを習得させることができる問いである。
もちろん、「中心」と「周り」以外でも色選びは大切だ。だが、その典型として「中心」と「周り」の色に目を向けさせることで、子供たちは同じような視点で他の場所の色選びについても考えをめぐらすようになるだろう。
さらに、題材によっては、こうも問う。
「それは、いつの季節ですか。時間は?天気は?」
絵とは、再現を強いるものではない。
私は、極論すれば、どの絵も「構想画=お話の絵」であると考えてきたということを、以前も述べた。
題材によっては、「季節」「時間」「天気」を問うことで、子供たちの構想が一段と膨らむ。
例えば、「電柱」の「観察画」を描かせた時、「雨上がりの天気」を設定したある子は、水たまりに電柱が映り込む絵を描いた。
何とも素敵な絵だった。
具体的に問うことで、子供の構想が具体的になる。