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台湾LGBTドラマ「Papa & Daddy」(酷蓋爸爸) シーズン2

主演:メルヴィン・シェ(謝佳見)、チウ・ムーハン(邱木翰)
2022年 全8話(1話約33〜39分)
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★
(写真=GagaOOLala公式サイトより)

確か一度はシーズン2の制作中止が発表された本作。状況が変わったようで、シーズン2が出たが、メインだったジェリー役のキャストが変更されているので、なんとなく観る気にならず放置してあった。しかし、そろそろ年末に向けて、今年のドラマをできるだけ片付けなければならない。なんと、日本語字幕があったので、観てみることにした(Gagaで日本語字幕がついているということは、日本の他のところで配信されてないってことなのかな)。

一応記事を読んでくださっている方が、こちらのシーズン1を視聴済みということで。

ゲイカップルの波乱なファミリードラマ

チウ・ムーハン演じるYoutuberのジェリー(傑立)と、メルヴィン・シェ演じるレストランを経営するダミアンはゲイのカップル。4歳になる息子カイカイ(凱凱)と一緒に暮らしている。
そこへなんと、ダミアンの息子と名乗る青年(高校生)がいきなりやってきた。ジェリーはダミアンがアメリカで結婚していたことは知っていたが、子供がいるとは知らなかった。大いに不信感を募らせたジェリー、カイカイを連れて花蓮かれんの実家へ帰ってしまった。

ダミアンの息子ジミーはアメリカ生まれだが、母が再婚することになり、父を頼って台湾に来てみたものの、父はなんとゲイでパートナーと暮らしていた!言葉もあまりわからず、学校にも馴染めないジミーを見て、ダミアンは早く彼をアメリカに帰そうと思うが、その前に気分転換にジェリーのいる花蓮へ二人で行ってみるのだった。

果たしてジェリーとダミアンは仲直りすることができるのか?

親としてどうするべきか?

同性愛にリベラルに見える台湾でも、実はまだまだ保守的な部分があるところに焦点が当てられていたシーズン1だったが、本作ではより一歩踏み出した、子供のいる同性カップルが、いや異性同士、同性同士関係なく親が直面する問題に焦点を当てている。

ちなみに、シーズン1では私が誤解していた部分があった。ダミアンとジェリーは結婚しているのかと思っていたが、そうではなかった。また、子供のカイカイも、結婚しているから合法的に養子縁組した子なのかと思っていたら(これについてはきちんとした言及はなかったと記憶している)、本作でダミアンの精子を使ってアメリカで代理母出産で授かった子供と判明。

(1)パートナーの子供
バツイチの、しかも子供がいるパートナーの結婚するということになると、当然継父・継母といった関係性の問題が出てくる。これは同性カップルに関係なく出てくる問題で、本作でもジェリーがダミアンの前妻との子供ジミーとの関係に悩む姿が描かれる。

(2)血縁の問題
おそらく欧米ではあまり問題にならない点かもしれないが、これはアジアではさまざまなドラマを見る限り、家族関係を築く上で譲れない点だと理解した。不思議に中国では日本や韓国ほどあまり問題にならない印象があるが、台湾では血縁とはいうのはやはり重要なようである。

ジェリーの両親は、長男である彼の子供を家系の後継として欲しがっている。しかし、カイカイがダミアンの精子を使って生まれた子だと知り、もう一人、ジェリーの精子を使った子を作るように迫る。
しかし、代理母出産というのはカップルにとって不妊治療並み、あるいはそれ以上の金銭的負担が大きいと思われる。両親は金を出すとまでいうのだが、果たしてダミアンとジェリーが出した答えとは?

(3)ジェンダー問題
本作でもダミアンとジェリーの親友カップルとして、ササとエイミーというレズビアンのカップルが登場する。二人にはマットという息子がいるのだが、まだ小さいものの、おそらく性同一性障害の子。自分を女の子だと感じている。本当はエルサのドレスを着たいのだが、スーパーマンやスパイダーマンの衣装を着せようとする母親たちの気持ちもわからなくもない。そんな母たちの願いを叶えるために、”ちゃんとした”弟か妹がいたほうがいいのかと思っている。
自分の子が性同一性障害なら、親としては何をするべきか、彼女たちの葛藤も描かれる。

バラ少年、葉永鋕へのオマージュも

シーズン1ではハイライトとしてプライドパレードが取り上げられていたが、本作ではコンサート。何のコンサートかというと、「バラ少年、葉永鋕イェーヨンチー」の記念コンサートである。私は1年以上前にこちらの一条心さんの記事で読んでいたはずなのだが、あまりよく覚えていなくて、再度読み直したが、台湾のジェンダー平等政策を進めるきっかけとなった事件である。

他にも、ダミアンのレストランの出資者であるワン氏、結婚式会場のオーナーといった年配者(60代以上)のLGBTに対する考え方なども垣間見え、単にゲイカップルのストーリーだけでなく、台湾におけるLGBT関連の歴史やさまざまな角度からの視点を取り上げている点では非常に興味深かった。

シーズン1では割とイチャイチャシーンが多かった印象で、メルヴィン・シェのゲイっぷりに驚いていたが、本作では多くのテーマを取り扱っており、1話の長さも30分以上あってより充実した内容になっていたといえる。
台湾では同性婚が認められているが、同性カップルが結婚できるようになることが決してゴールではない、その先にもまだまだ長い道が待っている。それらは決して同性カップルだからというだけではなく、すでに異性同士のカップルでも困難な道のりでもあったりする。

結末は『ターンタイプ シーズン2』と同じだが、本作の方がいろいろな意味で素敵なエンディングであった。ジェリーの友人として出てくるブライアンとシャオガオがイケメンすぎるのも、本作高評価の重要ポイントかな!

台湾のLGBTQコンテンツ専門の動画サイト「GagaOOLala」のオリジナル作品なので、サブスクしていないと視聴できないが、彼らの力作として高く評価したい。

こちらがジョジー・ルー(路嘉欣)が歌う主題歌の『路〜On The Road』♫
「私たちは間違っていない」、そんなメッセージが響く歌である。また、シーズン1の主題歌もオープニングや挿入歌として使われている。