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心ならずも代表作とみなされる「ノルウェイの森」

 ペケのTLを流れていった投稿なので見逃してしまいましたが、「なるほどなー」と思ったご意見がありました。

 村上春樹さんの作品について、
「自分の周囲にはファンの人が多いので言い出しにくかったけれど、自分は彼の作品はちょっと苦手。最近、そういうご意見も増えてきたのでようやく、そんなことも言えるように感じる」
 との投稿がありました。

 これはわかるなあ、と思ってわたしは見ていたんですけども、これがまた(なぜか)変なふうにバズったらしく、ハルキストと呼ばれるファンの方はもちろん、読んだことがない完全な部外者からも「好き嫌いまで他人に左右される方が悪い」みたいな、よくわかんないご意見も流れてきたりして。

 自分の好き嫌いは強固にありますともさ。
 ただそれを「言いにくい」雰囲気を感じるというのはよくわかる。

 いわゆる「空気を読む」人がここに陥りやすいんでしょう。
 ようは他人の気分を慮ることができる、心やさしい人ってことです。
 その感性は大事にしてもらいたいです。

 多数派からしたらそんなつもりはなくても、少数派にしてみれば「言い出しにくい」と感じる「圧」ってありますね。
 これはしょーがない。
 意見としてでも物理としてでも「多数の人間」はそれだけで、やはりなんらかの「威力」になりますから。

 で、村上春樹さんについての好き嫌いを語るご意見の多くが引き合いに出していたのは「ノルウェイの森」。

 わたしもこれ、一応読んだんですけど、「うーん」という感じで。
 社の後輩ちゃんが興味を示したので「よかったらあげるよ」と、上下巻をそのまま譲りました。

 本を読むことのみならず、本という「物体」そのものを愛でて執着し、なかなか本を処分できないわたしとしては異例中の異例の行為でした。
 読み終わったらすぐ人に譲るなんてのは。

 どちらかといえば村上春樹作品にネガティブな態度を示す人々が多く論拠にしたのが「ノルウェイの森」です。
 しかしながら、ハルキストに言わせると、これが「代表作」のように言われるのは超絶心外のようです。

 エックスのポストを「そうなんだ〜」つってそのまま流しちゃったのが惜しまれますが、
そのかたのご意見によると、

「ノルウェイの森は主に商業的な理由で、作者が仕方なく、じゃあそういうの1回だけ書く、といって書いたもの」
(たしか恋愛テーマの本を書けと迫られたとかなんとか……)
「ゆえにノルウェイの森は、数ある作品の中でも唯一の〝例外〟作」
「村上春樹本来の魅力や特徴とはむしろ真逆と言えるくらい」

「好き嫌いを語るのなら他の作品を読んでからにしてもらいたい」
 という、そんな趣旨だと思われます。

 ファンのお気持ちとしては、なるほどこれはごもっとも。
 わたしの記憶では村上春樹さんはノルウェイ以前でも充分、人気作家だったと思うのですが——それでも、「世間」に受けるのは恋愛要素の小説なので、そういうのをとにかく書けと言われ、不承不承書いたのがあの作品である、というなら。
 そんな例外作、しかも作者にとってもおそらくはあまり思い入れもないであろうものが「代表作」として扱われ、それしか読んだことがない人に、わかったような顔をされるのはたまったもんじゃない。そんなお気持ちでしょうね。

 なんで恋愛要素の小説を書けと言われたかについては、たしか当時、「純愛ブーム」とかわけのわからんもんが流行っていたと思うんですよね。
 他の小説、ドラマ、映画などでも、純愛(自称含む)テーマのものが多くて、またそれが世間にウケていたような記憶があります。
(わたしの記憶なのであまり当てにできませんが)

 言われてみれば「ノルウェイ」以前の(初期の)村上春樹作品はむしろ硬派なイメージがありましたね。


 比較するのは本当はおかしいのでしょうが、村上龍さんと合わせて「両村上」なんていう言い方を聞いたこともありますが、そんなときは村上春樹=お堅い、というイメージだった気がします。

 イメージ、印象、ってやつも、あんまり当てにはなりません(笑)

 でも、ノルウェイがいちばん読まれてしまったというのは、作家本人、そして熱心なファンからすると、あまりいいことではなかった。そのご指摘はうなずけるものがあります。

 もちろん他の作品とも読み合わせて、村上春樹作品は苦手だなと思う人もあるのでしょうが、「ノルウェイ」しか、、読んでいなくて、それだけで「懲りて」しまって読んでいないなら、この際なので他の作品を読んでみるのもいいのかもしれませんね。

 ノーベル文学賞については。
 賞というのは「時の運」というか、ほんっとに水物だなと常々思っているので、仮に受賞がなくても、いーんじゃないですか別に。と思います。
 その作品、あるいは作家性の、魅力はそれで損なわれるものではありません。

 強いて言えば運とタイミングでしょうか。

 ノーベル文学賞は、地域性や民族性を背負ったものが選ばれやすいとも聞いているので、そういう意味では、無国籍っぽい作品が多い点はちょっと不利かもしれない。
 でも、それくらいかなー。

 過去の受賞作を見ても、ノーベル文学賞に選ばれたから良作かというと、そうでもない、と感じることも正直いってあるので(正直すぎる笑)、べつに慰めとしていうんじゃなく、受賞したから良い、受賞しないからダメということは一切ないと思いますね。

 ただ、どの作家にも代表作はあると思うけど、作家自身の特徴から大きく乖離している作品が、代表作のように思われているというのはちょっと特殊なケースであり、作家本人やファンにとっては嬉しいことじゃないだろうなと思ったので、ちょっと書いてみました。

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みずはら
筆で身を立てることを遠い目標にして蝸牛🐌よりもゆっくりですが、当社比で頑張っております☺️