感謝ばかりしても幸せにはなれないよ、と教えてくれる小説
上京して初めて住んだアパートは都電荒川線の庚申塚から歩いて5分とかからない場所だった。小さな路地を歩いてしか通れない場所に建てられたアパートは1階に二部屋、2階に二部屋しかない古びた風呂なしアパートだった。
初めて不動産屋と訪れたとき、大家さんは一階に住むおばあちゃんのために残してるようなものだから若い子が来るなんてね、と珍しそうに言った。どうせ誰も借りないのだから2階の二部屋は自由につかいなと、契約をしたときに大家さんは言った。しかし入居する頃には結局、韓国からの留学生