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けがれた者達の歌 春雷

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春の季節に書いた 春の詩と物語の在り処
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#影

ドクダミ

ドクダミ

影の中に

隠れていても

ジメジメした所に

いたとしても

此の

クセの有る

強い香りを辿り

見つけてみなよ

大鉈の鬼

大鉈の鬼

我が大鉈に
姿が映らぬ者が居る

其の者は
灰黒の花を咲かせ
影を無くした者か?

影が無き者、人に非ず

ならば…

影が無き者達は
此の大鉈の餌食

大鉈の
斬れ味を試すのは

其の腕か?胴か?首か?

影が無き者達よ
答えよ

灰黒の花(かいこくのはな)

灰黒の花(かいこくのはな)

私の言葉が
歌が聞こえるか?

お前達の足元の
影の中に
私が蒔いた
黒い花が見えないか?

其の花は何れ
影を埋め尽くす程に
咲いて魅せる

風に舞う様に
灰黒の花弁が散る時

お前達の影も散り…

消え逝くのだ

彼方此方

彼方此方

蠢く者が

影から覗いて

語り掛けて来る

彼方此方を見た?

彼方此方を向いた?

何が視えた?

何が聞こえた?



闇に潜む者達の声が聞こえる人を

探しているんだ…

影

橋から見えるのは海の流れ
春は淡い色を僅かに残して北へ

影の子が欄干で
風の子に揶揄われている

私は
影の子と風の子の頭を撫で
風の子に

「揶揄い過ぎると
小奴に牙が生えて喰われるぞ
仲良くしたくてなら
構わないが…

なんなら
私がお前を喰おうか?」

と美味そうな頬を突付く

影

私の長い髪が
春風に揺れる

常に私に付いてまわる
小さき影の子が
私の髪を引き

『何を考えてるか分かるよ』

と、私に言う

私は影の子の頭を撫で
片側のピアスを
影の子に着けて

「似合うよ。あげる」と

また、
影の子の頭を撫でた。

そして、
私は髪を揺らす春風を眺める

歪みの景色

歪みの景色

目の前の景色が
揺らいで
歪んで見える

其の歪んだ景色は
映りの悪くなった
電子画像の様で…

自分が見ているものは
一体何だ?

此の瞳に見えるものは
偽りか?

目だけか?
手も、脚も、体も
全て作り物か?

焦る私を
嘲笑う様に
映り込んだ
猫の影が笑うだけ

菜の花

菜の花

「そよかぜさわさわ黄色い菜の花
菜の花畑に居る
私の心を
明るくしておくれ」

と菜の花の中に踏み込んだ

花々の中に埋もれた足元

隠れた自分の影は
離れていないか?

明るい花の色に
騙され
我が影を奪われてないか?

黄色い花に
影を奪われた者は
気付けば
油虫の餌食