インサイドセールスというサグラダファミリア #Tacto 4th note
インサイドセールスは、いつまで経っても完成しない。
お客様を向いて仕事をすれば、果てしなくやるべきことがあり、その仕組みは完成しないから。"柔軟な変更”だけが、唯一不変だ。
私はオンライン営業システムのベルフェイスというスタートアップへ入社して、もうすぐ3年になる。インサイドセールスの"イ”の字も分からない状態でぽつんと遠隔入社し、会社はこの3年弱で紆余曲折、本当にいろいろあった。業界を問わずSDRへ注力していた時期には最大で30名以上いたインサイドセールスも、BDR中心の5名になった。
優雅に高速ジェット船へ乗り込んだつもりが、気づいたらラフティング状態だった。でもだからこそ、試行錯誤しながら仕組み自体をつくるおもしろさもあった。
▼紆余曲折が気になる方はこちら
途中でリーダーになり、マネージャーになった。スマートな管理職ではなく、組織の進む先を理解し、待ち受ける問題を排除して、チームが止まらないよう整える役割だった。うまくいくことも、いかないことも沢山あった。
まだ道の半ばだが、私個人は入社時からの希望が叶い、10月からカスタマーサクセスへ異動した。引継ぎも無事に完了し、何も思い残すことは無いけれど、ちょっとだけマリッジブルーのような気持ちがある。
そこで、この3年弱の取り組みから、「コレはやってよかった!」と思える【インサイドセールスが、商談の質を高めるためにできること】を書き残しておきたい。
1.カスタマーサクセスを起点に活動する
私たちはカスタマーサクセスを起点にインサイドセールスをしている。どういうことかと言うと、オンライン営業システムbellFaceをご導入いただいている企業の中でも、特にサクセスしている企業に注目し、その活用場面・活用方法を言語化した上で、次なるお客様へアプローチしている。
TheModelは、Mrk→IS→Sales→CSと直線で表現されることが多いが、全社がカスタマーサクセスを目指す以上、本当はCSを起点とした円環であるべきだと思っている。
具体的には、カスタマーサクセスとセールスを中心に活用場面・活用方法の情報を集め、ユースケースとして全社で管理している。インサイドセールスは、その内容を読み込むだけでなく、担当のカスタマーサクセスやセールスから話を聞き、時にはお客様へのインタビューにも同席する。それにより、業界やお客様への解像度がぐっとあがり、サクセスを起点にトークスクリプトやメール文面・手紙文面の作成ができる。
自社のプロダクトを起点としたアプローチではなく、カスタマーサクセスを起点としたアプローチだからこそ、「WhyYou」「WhyYouNow」が自信を持って言える・伝わる状態になっている。
2.自社サービスが役立てる企業群に絞ってリスト化する
サクセスの詳細を知ると、業種や規模などの分類では絞れないとわかる。
たとえば、士業。活用が伸びている法人から話を伺うと、「無料電話相談」で本人確認や電子契約サポートにbellFaceを活用いただいていた。そこで、ただ士業という業種で括るのではなく「無料電話相談で債務整理業務を行っている司法書士法人」ぐらいの粒度までアプローチ先を絞る必要があった。
しかし、それを1社1社Webサイトを見て手動で分けていくのはなかなかに時間がかかる。そこで、Webスクレイピングツールを使って外部サイトからリスト化している。
▼以前は手動で行っていたリスト作成作業も、OctoparseというWebスクレイピングツールを使って自動化した
リスト作成時点で自社が役立てる法人のみに絞りこんでいるため、ターゲットリスト自体は数十社だったが、代表電話からのBDRでもコンタクトアポ率は20%を超え、リスト化からわずか1ヶ月ほどで受注・サクセスが生まれている。本当に役立てる企業のみに絞り、アプローチ先としている。
3.「商談の質」を可視化する
当然、商談の「質」は何らかの形で数値化しないと測れない。商談実施後の商談化率や受注率でも当然表現できるが、有効商談化や受注に至るまでに時間がかかるため、商談を取ったタイミングでは判断できないのが玉に瑕だ。(商談化率と受注数をKPIに設定し、商談数が激減した夏を思い出して背筋が凍る)
そこで私たちは、商談数に企業のターゲットランク(※1)を掛け、アポランク(※2)を加点した「商談ポイント数」をKPIに設定している。
これにより、商談の質を”アポ獲得時点”で測り、それを高める力学が働くようにしている。
また、企業のターゲットランク係数に関しては、自社のFocus優先順位によって変化するため、月次で見直すことも可能なように設計している。インサイドセールスのKPI設定は、今が未来永劫続くと思わず、柔軟に変更できるように備えておくことも重要だと思う。
4.商談のフィードバックを得る
一連の情報はSalesforceで管理をしており、商談オブジェクトのフェーズが「失注」に変更されるとSlack上で自動通知されるようになっている。それ自体は割とよくある仕組みだと思う。
ここで大切なのは、「なぜ失注したのか」以上に、「どうすれば商談が進んだのか(何が足りなかったのか)」「次はいつ・誰に・どのようにアプローチするのが望ましいのか」をインサイドセールスが理解し、ネクストアクションを設定すること。たとえ検討長期化による失注だとしても、きちんとSalesからISへバトンを渡す仕組みになっている。
もう一つ、毎週金曜日に商談のフィードバック会も実施している。IS・Salesチームが原則全員参加し、他のメンバーの商談にも耳を傾ける。コール時点の認識と商談結果を照らし、次のアプローチに活かす場になっている。
5.無駄を省き、顧客接点にリソースを割く
最後に、インサイドセールスにとって「顧客接点に時間を割きたいが、付帯する業務に時間を取られる」問題も悩ましい。
商談の質を高めるためには、お客様との対話が何よりも重要だが、コール前の事前準備・コール後のアポ獲得処理も、質を高めたいと思うからこそ時間がかかる。
これに関しては、減らしたい業務をコツコツと棚下ろし、オペレーションの見直しや自動化を検討するしか道はない。幸い、弊社には事業戦略部という神々が集うチームがあり、「これってどうにかならないかな…」という呟きを最高のソリューションで解決してくれる。
上記の通り、私はほぼ呟いているだけなので大変気まずいが、最高なのでいくつかPickして書いておく。
コール前の事前準備に確認できるBeforeCallWorkBoardというTableauのDBがあり、複数にまたがるオブジェクト(Salesforceのページ)を行き来しなくても、その企業に関する履歴を確認できる
ISがSalesforceの取引先責任者にヒアリング項目を入力すると、商談作成時には「商談時に使うメモ」として適切な順番に並び替えられ、自動で転記される
Salesforce内に設置された「カレンダー作成」ボタンを押すと、自動的に社名やURLなどの必要情報が入力された予定がGoogleカレンダー上に作成される
などなど…神…
顧客接点を増やすために、減らしたい時間に向き合うことも大切だと思う。
まあ5分10分だから…と思っても、塵も積もれば山となるし、5分10分あれば電話1本かけられる。関連する部署や有識者を頼るだけで、実は新しい方法が見つかったり、別の視点が見つかったりする。
不要な業務はけっこう減らせるし、減らしたと思っても顧客接点はすんなりとは増えない。別の問題も絡まっていたりする。そんな現実も、私はインサイドセールスを通じて学んだ。
さいごに
2020年1月から、あっという間だった。完成どころか、まだ土台も出来ていない。作って壊して作って壊して、変わり続けることに慣れただけかもしれない。
インサイドセールスは、顧客接点の玄関口であることに誇りを持ち、良いときも悪いときも、まず自分たちから変えていく。それが醍醐味ではないかと思う。だからこそ、仕組みが完成することはない。
インサイドセールスは、完成しないからおもしろい。
#インサイドセールス #IS #振り返りnote #Tacto
※ちなみに、サグラダファミリアは2025年に完成するそうです